清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

一般社会と 比較をしたら こうなった

毎日.jp「体罰賠償訴訟:児童側敗訴の逆転判決 最高裁」(http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090428k0000e040036000c.html
によると、「熊本県本渡(ほんど)市(現天草市)で02年、同市立小2年の男児(当時8歳)が、男性臨時教員から体罰を受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、市に約350万円の賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(近藤崇晴裁判長)は28日、教員の行為を体罰と認め賠償を命じた1、2審判決を破棄し、原告側の請求を棄却する逆転判決を言い渡した。小法廷は「許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、体罰に当たらない」と述べた。」という。

ところで、今回の事例、一般社会ではどうなるか。

上記毎日.jpによると、事件は、「教員は02年11月26日、休み時間に自分のおしり付近を2度けって逃げようとした男児の洋服の胸元を右手でつかんで体を壁に押し当て、大声で「もう、すんなよ」と怒った」とのこと。

まず、男児は、教員の対する暴行罪(刑法第208条)が成立する可能性がある。もっとも、実際に見たわけではないのでわからないが。

次は、教員の行為について。

まず、急迫性がないので(蹴った時点で既遂だから)、正当防衛はおそらく成立しないだろう(追記で言及したブログによれば、2(4)と(5)は時間的には離れていると認定できるので)。ゆえに、教員の行為もまた暴行罪の可能性がある。ただ、小2男児の行為は現行犯なので、逮捕は可能である(刑事訴訟法第213条、第212条。ただ、14歳に満たない者の行為は罰しない(刑法第41条)が)。もっとも、こうする場合は、「直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない」が。(刑事訴訟法第214条)。となると、逮捕して引き渡すつもりがなければ、逮捕も問題だろう。となると、教育現場でこのようなことがなぜできるのかという疑問がある。

ということで、最高裁は、「目的、態様、継続時間等から判断する」、「悪ふざけしないよう指導するためで、罰として肉体的苦痛を与えるためではない」(上記毎日.jp)と判断して、教員の行為を正当化した。もちろん、教員なのだから、指導の必要はあろう。しかし、最高裁の基準だと、とくに「継続時間等」を重視するとなると、一般社会では許されない行為も指導として許される可能性があり、問題ではないか?また、原告の主張にあるように、「肩に手を置き向き合って説諭するなどほかに適切な行為を取ること」(上記毎日.jp)は本当にできなかったのだろうか(なお、原告について付言すると、読売新聞2009年4月29日朝刊29面には、「男児の母親は教師を刑事告訴しており」、「訴訟の背景に保護者の過剰なクレームがあったことを示唆」といった、原告断罪とも取れるような解説があるが、教師の行為が暴行罪になりうること、必要なクレームの抑制になりかねないことからすると、ダメな解説である。足立大記者は即刻辞職すべきだ)。

体罰(学校教育法第11条。定義などは調べていません)が絡む事件でいつも思うのは、外国ならこのような事件はどう扱われるだろうか、ということである。児童の権利に日本も外国もない。もし外国で許されないのならば(アメリカという例外を除いて、どこの国でも体罰は禁止されていると聞く)、日本でもこの事件は許されないはずだし、前述したように、体罰や暴行の歯止めとならないとすれば、極めて問題のある判決だろう。

(追記)うろうろドクター「胸元つかみ「体罰ではない」、容認されて良かったですね。(追記あります)」(http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/29028329.html
に判決文が載っております。判決文は参考になりますが、記事に関しては、レベルが読売新聞の足立大記者同様低いので(強調の必要がないところを強調しているので)ダメですが。

(更なる追記。2009年4月30日記)
判決文を読んだところ(うろうろドクター参照)、被上告人(小2男児)の「一連の悪ふざけ」についての指導なんだって。しかし、事実認定としてどうなのだろう(2(4)、(5)から、注意して、職員室に向かおうとしたところを蹴ったのだから、悪ふざけと別個の行為なのではないか?)。あと、「肉体的苦痛を与えるために行われたものではない」とされたら、「教育的指導」とされやすいことからしても、疑問のある判断である。やはり、最高裁は、一般の人なら暴行罪、ならびに不法行為になりかねないことを安易に正当化しているようで、疑問である。被告を勝たせるならば、原告が蹴ったことにつき過失相殺(民法第722条第1項)するしかないのではないか(もっとも、請求棄却はできないという判例はあるようだが)。