清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

議論はね ホントのことから 始めよう

今日の読売新聞1面は、「親族扶養で家裁活用ゼロ…生活保護巡り自治体」(ウェブでは、http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120601-OYT1T01488.htm )。記事によると、「生活保護受給者に扶養可能な親族がいるのに、生活費の負担額が折り合わない場合に、自治体が活用できる家庭裁判所への申し立てについて、読売新聞が全国の主要74区市に取材したところ、昨年度はゼロだったことがわかった」という。

とりあえず困った人を救うのが大事なのだから、仕方のない話だろう。「「扶養可能な義務者には、必要に応じて保護費の返還を求める」」という小宮山洋子厚生労働大臣のコメントに尽きるのかもしれないが、「「扶養可能な義務者」」が生活が楽だと決まっているわけでもない。生活保護法第4条第2項(民法の扶養義務者の扶養などが生活保護に優先する)を所与のものとしないで改正を含め検討するのもありかもしれない。

その読売新聞、「急増生活保護」という連載を始めた(13版37面)。

要約すれば、ドイツでは、働ける人は既存の社会扶助から分離し、職探しや職業訓練を前提に支援する仕組みにしたのだとか。

これは難しい。もちろん、働く気のない人には、日本でさえ社会保障を受けられなくてもいい、という学説があるので(伊東正巳『憲法』(弘文堂法律学講座双書)の、勤労の義務の説明を参照)、職探し等を要件とするのは悪くない。

しかし、「紹介された仕事を理由なく断ると手当は減額」(「急増生活保護」より)というのは、実質的には強制労働(市民的及び政治的権利に関する国際規約第8条第3項(a))ではないのか、「低賃金で募る求人が増えたことも、失業率低下に結びついた」(「急増生活保護」より)としても、「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法第25条)にならなければ、すなわち、「低賃金の求人」(「急増生活保護」より)で生活できなければ、結局生活保護になるわけで(生活保護法第4条第1項参照)、「『低賃金労働者への支援などに課題が残る』」(「急増生活保護」より)ので、決め手にはならない。

そもそも、生活保護の問題を考えるならば、まず、日本の生活保護のリアルから示すべきで、いきなりドイツの、それも労働力人口の問題から入るのでは、リアルな認識を得ることができず、有害だと思う。

生活保護に関するデータは、「国立社会保障・人口問題研究所」のサイトの、「「生活保護」に関する公的統計データ一覧」(http://www.ipss.go.jp/s-info/j/seiho/seiho.asp )から見ることができる(だろう)。

平成21年の世帯構成比(資料3)は、高齢者44.3%、母子7.3%、傷病者22.8%、障害者11.6%、その他13.5%である。

扶助別保護費(資料22)は、平成20年が最新で、保護費は全体で2,700,553,250(以下、単位は千円。この場合は、2兆7千5億5千3百2十5万円)、最多は医療扶助1,339,288,625千円、生活扶助896,496,101千円、住宅扶助381,440,562千円などで、約半分が医療扶助である。高齢者+傷病者で67.1%なのだから、当然の数値だろう。

というわけで、高齢者が多く、医療扶助が多い、というところから議論をはじめるべきである。この点、読売新聞の連載は、ミスリードを招きかねず、ダメなのである。