YOMIURI ONLINE「「取り調べは原則黙秘」…死刑弁護の手引が波紋」(2015年10月19日 08時51分。以下①。http://www.yomiuri.co.jp/national/20151019-OYT1T50026.html
)によると、「死刑求刑が予想される事件の弁護活動について、日本弁護士連合会がまとめた手引が波紋を呼んでいる」という。
①の「『死刑事件の弁護のために』の主な内容」をクリックすると、「黙秘権の行使が原則」だとか、「否認事件や正当防衛を主張する事件などでは、被害者の裁判参加に反対する」だとか、「取材に応じない」だとかある。
②朝日新聞デジタル「死刑事件に弁護の手引 裁判員向け、日弁連まとめる」(阿部峻介。2015年10月10日16時03分。会員登録で全文閲覧可能。http://digital.asahi.com/articles/ASHB27379HB2PTIL02P.html)
③日本経済新聞電子版「死刑弁護に独自の手引 日弁連「特別な弁護必要」」(2015年10月19日12時45分。http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG19H36_Z11C15A0CC0000/
)
④産経ニュース「日弁連、死刑回避へ手引作成 一部弁護士が反発」(2015年10月20日9時5分。http://www.sankei.com/affairs/news/151020/afr1510200008-n1.html
)
でも取り上げられている。
例によって、朝日は手引に肯定的、日本経済は中立、読売と産経は否定的、に見えるのは気のせいか(もちろん、日時に注目)?なお、毎日新聞は、筆者調査の限りでは発見できなかったので、取り上げない。
以下で、筆者なりの検討を加える。
(1)③によると、「米国法曹協会のガイドラインを参考に、死刑事件の弁護経験が豊富な弁護士らを中心に約3年かけて作成した」という。手引もガイドラインも未読で恐縮だが、「死刑事件の弁護経験が豊富な弁護士」が作ったのだから、とりあえずは評価すべきである。①や④には「死刑回避」の文字が踊るが、依頼者が死ぬことは利益を守っていることには全くなっていないのだから、動機も正当で、非難は不要だし、してもいけない。なお②によると、「市民が裁く裁判員時代、命を奪う「究極の刑」で判断を誤らせてはならないとの思い」ともある。手引未読で恐縮だが、②に書いてあるのが本来の狙いの可能性はありそうだ。
(2)ところで、これに関して、以下の様な非難がある。
③によると、「被害者や遺族が裁判で被告に直接質問することができる「被害者参加」に反対することも盛り込み、被害者支援に取り組む弁護士から批判も出ている」、「常磐大大学院の諸沢英道教授(被害者学)は「被害者参加に反対するのは被害者や遺族の人権を侵害することだ」と話している」とある。
④によると、「「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」は19日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見。共同代表の山田広弁護士は「確たる統計はないが、弁護士でも50%程度は死刑絶対反対の立場ではないとされている。犯罪被害者の権利が軽視されてきた反省から創設された被害者参加制度や、国民の良識を裁判に反映させる裁判員制度をないがしろにしている」と日弁連を批判した」という。
しかし、刑事訴訟法第316条の3・第1項では「被告人または弁護人の意見を聴き」、その上で「相当と認め」られれば被害者等の「被告事件の手続きへの参加を許す」のだから、「否認事件」(①)等で「被害者の裁判参加に反対する」(①)ことが許されないとは言えない。非難としてとんちんかんである。
(3)なお、③によると、「日弁連は死刑執行に反対の立場だが「制度がある以上、特別な弁護が必要」」とある。今回のような手引が仮に望ましくないとすれば、それは死刑があるからだ、とも言え、死刑の廃止を主張したほうが建設的だと思う。