清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

『絶歌』から 第一歩だと 思いたい

つい最近、元少年A(以下も敬称略。「著者」とも表記)の『絶歌』という本を読了した。本来は、1年位前に読了すべきなのだが(初版2015年6月28日)、勢古 浩爾『自分をつくるための読書術』(ちくま新書、1997)や、出口治明ライフネット生命会長の一連の著作にならって、(?)、図書館で借りたからである。

 
刊行された時にものすごく非難されたが、内容は興味深かった。特に第ニ部は更生の難しさ、著者の執筆動機などは、読者にとって有益だと思った。第一部の一部がおぞましい内容なので諸手を挙げておすすめはできないが。
 
先ほど「刊行された時にものすごく非難された」と書いたが、その当時に放送された(2015年7月19日深夜)、読売テレビ制作「NNNドキュメント'15 "元少年A"へ~神戸連続殺傷事件 手記はなぜ」(以下、「番組」とも表記)も見た。
 
内容は、主に事件関係者の戸惑いだった。土師守(被害者の父)は書くことと出版することは違うとして著者を非難する。杉本研士(医師。。元関東医療少年院院長)は「バカなことをした」と言い、野口善國(弁護士。少年の元付添人)は「遺族の気持ちを十分に理解しなかったのではないか」という。
 
ところで、筆者は、岡本茂樹『反省させると犯罪者になります』(新潮新書、2013)も読んだが、著者は反省させるよりも、被害者の心情を考えさせるよりも、まずは「自分自身が事件を起こした原点を見つめる」(p130)のが大説だという。このような知識を持って『絶歌』を見ると、祖母(『絶歌』p35)や飼い犬(同p51)がきっかけに事件を起こしている事が書かれているので、更生に向けて歩みだしているように思えた。番組でも、野口が「成長を感じ取れた」と言い、杉本が「頑張ったと評価したい」と言ったのも、内容において筆者が書いたようなことを読み取ったのかな、と勝手に解釈する。
 
というわけで、『絶歌』については、元少年が自分の言葉で犯罪について書いていること、それを抑圧せずに他者に伝えようとしていること、更生の難しさ、それに携わる人の暖かさならびに覚悟が書かれており、有益な内容だった。番組で見たような関係者の非難も理解するが、おそらく『絶歌』を書いたことから本当の更生の第一歩を踏み出しているのだと思いたい。
 
なお、番組では、明石市が犯罪被害者支援の条例に基づいて市内の書店に配慮を求めたそうだが、このことが加害者の抑圧になり再犯を生じさせかねない危険性を感じた。