清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

ニッポンの 「良識」実は 弾圧か

神戸連続児童殺傷事件の加害者である元少年Aが、太田出版から『絶歌」という手記を出したことにつき、遺族の方の一人が、「兵庫県明石市泉房穂市長が、遺族感情を踏まえ市内2か所の市立図書館にAの手記を置かない方針を表明されました。また、各地の書店でも販売自粛や不買の動きが広がっているようです。こうした日本社会の良識に心から感謝する」(YOMIURI ONLINE元少年から手紙、遺族受け取らず…「収束願う」」(2015年06月23日 14時47分。http://www.yomiuri.co.jp/national/20150623-OYT1T50088.html

)。同趣旨、毎日新聞「神戸連続殺傷:手記出版に女児の母が文書でコメント」(2015年06月23日 12時25分(最終更新 06月23日 12時57分)。http://mainichi.jp/select/news/20150623k0000e040197000c.html
)とコメントしたという。
 
遺族の感情としてはわかるが、このコメントを肯定的に評価していいかは、疑問である。以下、場合を分けて検討する。
 
まず書店での販売自粛。書店がどの本を売ろうが自由である。しかし、全部の書店に、売るな、と言えるわけがないし、一部書店で売れば、その書店が儲かる可能性がある。書店としては合理的かは疑問である。
 
次は図書館の閲覧制限、ならびに置かないことについて。
 
もちろん、図書館にも、資料収集の事由はある。
 
)では、「第2 図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない。
 提供の自由は、次の場合にかぎって制限されることがある。これらの制限は、極力限定して適用し、時期を経て再検討されるべきものである。
(1) 人権またはプライバシーを侵害するもの」とも「第1 図書館は資料収集の自由を有する
 図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国民のあらゆる資料要求にこたえなければならない。
 図書館は、自らの責任において作成した収集方針にもとづき資料の選択および収集を行う。その際
(略)(4) 個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり、紛糾をおそれて自己規制したりはしない」ともある。
 
筆者は『絶歌』未読だが、今回の図書館の動きは、おそらく図書館の自由に関する宣言第2、あたりで正当化しようというのだろう。ただ、「遺族の代理人弁護士から市に、図書館での購入見送り(略)を呼び掛けるよう要請があった」(産経ニュース「神戸市立図書館は購入せず 加害男性の手記」(2015.6.23 20:04。http://www.sankei.com/west/news/150623/wst1506230079-n1.html
)のであれば、図書館の自由に関する宣言第1の「個人・組織・団体からの圧力」とも取れてしまう。
 
重ねて書くが、筆者は『絶歌』未読である。だから、『絶歌』が人権等を侵害しているかわからない。また、報道の限りでは、遺族が『絶歌』のどの部分が人権を侵害していると言っているのかがよくわからない(筆者の調査不足もあるので、情報求む)。仮に加害者が書いたゆえに許せないというのであれば、それが加害者の表現の自由、読者の知る権利とどうバランスを取ればいいのかは、実は難しい。『絶歌』関連の記事が出ている現状であれば、回収する意味があるのだろうか?(なお、私見だが、遺族感情の侵害を人格権の侵害として損害賠償をするという構成は考えられると思う)
 
というわけで、未読の現状では、読めなくなるのが読者としては一番困るので、売らないこと、閲覧させないことは、慎重にしてもらいたいと思っている。また、世間を震撼させた加害者の書物であれば貴重だとするのは普通だと思うので、閲覧等の「制限は、極力限定して適用し、時期を経て再検討されるべき」(図書館の自由に関する宣言第2)だとも思う。