転載元の記事のタイトルは「「闇サイト殺人事件」の神田司死刑囚の死刑執行 第3次安倍内閣で初」http://www.sankei.com/affairs/news/150625/afr1506250013-n1.html
記事によると、「女性の頭部をハンマーでメッタ打ちにして殺害」ではあるが、被害者1人の強盗殺人等の事件のようだ。
判決文が、筆者調査の限りでは見つかっていないので、印象論だけ書くと、森炎『量刑相場』(幻冬舎新書、2011)p97によると、「最近、被害者が一人の強盗殺人事件で死刑判決が出た事件に、名古屋・闇サイト強盗殺人事件があります(名古屋地裁平成二一年三月一八日判決)。けれども、我が国の事件史上、二一世紀になってから、前科とは関係なく、被害者が一人の強盗殺人で死刑判決がでたのは、一、二を数えるだけです。昭和五〇年頃まで遡っても、状況は同様です。/これが、今までの裁判の概要であり、従って、強盗殺人の量刑相場は無期懲役と言えます」という。
もっとも、同書では「何より、裁判員制度のもとで、これからは市民感覚を生かした新しい量刑判断が求められているわけですから、これまでの数字をそのまま基準にすることは意味がありません」(p189)ともある。しかし、現在ゆえ死刑が求められる事情がなければ、法の下の平等に反する(憲法14条)とされても仕方ないのではないか?
というわけで、神田死刑囚の事件で死刑は、執行したことは不当でなくても、判決が妥当かは疑問である。
一方、同じ産経ニュース「「覚醒剤の精神障害、影響弱い」検察側、完全責任能力あったと反論」(2015.5.25 11:47。http://www.sankei.com/west/news/150525/wst1505250029-n1.html
)によると、2015年6月26日に、大阪地方裁判所で死刑判決が出た、心斎橋通り魔事件の被告人が以前「「覚せい剤取締法違反事件で服役し」」た経験があるという。「一回的」(『量刑相場』p104)な事件のイメージなので、無期懲役が相場のようだが、前科があり、更生が難しいと判断されたか。薬物乱用がやめられないから殺人したら死刑、というのもよくわからない。前科ゆえ更生が難しいという判断だとすればありうるが、これも少々疑問に感じる。もっとも、人に危害を加えた前科(傷害など)だと納得するが、それだと基準が恣意なんだろうね。
死刑があるとその判断は難しいが、それなら無期懲役を最高刑にして、社会に出しても大丈夫と思う人から出所する、というあり方のほうがフェアだと思うが、いかがか。