清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

遺族はね 大事だけれど 受け手だよ

いわゆる、神戸連続殺傷事件の犯人、元少年A(以下も敬称略)が、太田出版から『絶歌』という本を出版した(太田出版のHPより。http://www.ohtabooks.com/publish/2015/06/11095648.html

)ことにつき、被害者遺族が回収を求めたり、非難する人がいるようだ。以下においては、朝日新聞デジタル「神戸連続児童殺傷事件、元少年の手記に広がる波紋」(2015年6月20日05時02分。http://www.asahi.com/articles/ASH6M5GNWH6MUTIL02P.html
)を引用しつつ、検討する。
 
記事によると、「殺害された土師(はせ)淳君(当時11)の父・守さん(59)は突然の手記出版に反発。今月12日には、太田出版に手記の回収を求める申入書を送った(略)「精神的苦痛は甚だしく、改めて重篤二次被害を被る結果となっている」と訴えた」という。この気持、もちろん、筆者もわかる。ただ、筆者含め、大多数は情報の受け手でもある。だから、回収を求めることに賛成するのは難しい。この件でネットサーフィンするうちに、紀藤正樹弁護士のブログ「弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版 2015.06.11
もう匿名は許されないのではないか?=元少年A「神戸連続児童殺傷事件」手記出版の波紋 18時一部更新」(http://kito.cocolog-nifty.com/topnews/2015/06/post-40ba.html
)を見つけ、読んだが、「仮に本の内容が虚偽で死者の名誉を傷つける部分があれば、刑法230条2項「死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。 」と言う規定上、共犯に問われる可能性すらあります。/もちろん本の内容に、ご遺族の名誉をき損する行為が、あれば「通常の名誉棄損」のルールに基づいて、民事上も刑事上も、処断されることになると思います」ということがなければ、回収するのは難しいと思う(なお、紀藤弁護士の見解には賛成しない)。

記事を読み進めると、「米国の多くの州では、犯罪に関連した著作の出版などの収益を被害者や遺族が得やすい形にし、犯罪者の手に渡らないようにする法律がある。ニューヨーク州で1970年代に起きた連続殺人事件を契機に制定され、事件にちなんで「サムの息子法」と呼ばれる。/法律は他の州にも広がる一方、表現の自由との衝突も起きている」とのこと。この部分は難しい。一般論として、ニーズに合った本を書いた報酬は、著者のものだから。記事のように賠償が済んでいない事件であればいいが、済んでいた場合に、被害者や遺族が収益を得る根拠は何か?単に当該犯罪に関する著作というだけで根拠になるのか?よくわからない。だから、日本版「サムの息子法」は、制定することに反対はしないが、結構慎重な検討が必要かもしれない。

更に読み進めると、書店や図書館の対応が書いてある。遺族感情が大事でないわけがないが、大多数の利用者は、情報の受け手。書籍を売らないだとか、閲覧を制限するだとかは、遺族が回収を求めるよりも(これは自由にやってよい)ずっと慎重でなければいけないだろう。

記事によると、「加害者による手記などの出版は「被害者側に配慮すべきであり、被害者の承諾を得るべきである」」(「土師(はせ)淳君(当時11)の父・守さん」のコメント。記事による)だとか、「「遺族の同意なく出版されること自体許されない行為で、加担してほしくない」」(「兵庫県明石市泉房穂市長」(記事より)のコメント)とあるが、それを正当化出来る根拠はなんだろう?そもそも出版しないという契約でもあったのだろうか?でなければ、表現するのは自由なはずで(憲法21条参照)、根拠があるとは思えない。
 
読者の大多数は、おそらく、遺族感情に配慮すべき、と思っているだろう。筆者もそう。しかし、遺族になる可能性は誰にでもあるとはいえ、情報の受け手でもある。それを無視して、遺族感情で思考停止するのは問題で、どうバランスをとるかを考えるべきだろう。