清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

「中国寄り」 植民地主義の 残滓かな

某日、『文春オンライン』池上彰「池上さんが解説する、WHO事務局長が「中国に頭が上がらない理由」池上さんに聞いてみた。」(2020年5月6日)を読んだ。

bunshun.jp

 

池上さんによると、

  WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長の言動が、常に中国に配慮しているからです。テドロス事務局長はエチオピア出身。マラリアの研究者で、エチオピア政府では保健大臣と外務大臣を歴任した後、事務局長に選出されました。エチオピアは中国から多くの支援を受け、中国に頭が上がりません。

 こういう人物がWHOの事務局長になることは中国にとって好都合というわけで、事務局長の選挙では中国の支援で当選しました。

(写真略)

 中国から感染が拡大しても、中国の封じ込めの努力を称賛したり、事務局長がわざわざ習近平国家主席に会いに北京に駆け付けたり、その中国寄りの姿勢は露骨です。

 中国はWHOへの拠出金も増やしていますから、事務局長は常に中国の方を見て仕事をしているのです。

 この回答は普通に言われていることである。

 

この記事について筆者も「清高」名義でコメントしているが、注目すべきコメントは、筆者のではなく、以下のコメント。

 池上さん…記事する前にちゃんと調べてみたらどうだ?WHO事務局長はアメリカの元大統領クリントンの指名で事務局長になったの…

 (名無し 2020年5月6日ごろのコメント)

 じゃ、実際どうなんだろう? 

テドロス・アダノム - Wikipedia が正しいとは言わないが、筆者が以前Yahoo!の人名検索を用いたところ、最終的にはFresheyeペディアの記事が紹介され、それはウィキペディアの記事の紹介になっているので、ウィキペディアを用いる。

 

テドロス・アダノム - Wikipedia を見ると、

 立候補と選挙
2016年5月24日、第69回世界保健総会 (World Health Assembly)会合で、テドロスは、アフリカ連合からの支持を得て、アフリカ唯一の候補者として世界保健機関事務局長に立候補することを公式に発表した。ジュネーブでの正式な出馬には、アフリカ連合委員会Nkosazana Dlamini-Zuma委員長、ルワンダおよびケニア外務大臣アルジェリア保健大臣が出席した。テドロスの指名は、功績と彼の豊富な国家的および世界的信任に基づいていることが強調された。彼の選挙運動におけるキャッチフレーズは「より健康な世界のために(Together for a Healthier World)」だった。選挙運動のトップはエチオピアアメリカ人弁護士と、ミシガン大学産婦人科教授であるSenait Fissehaだった。選挙期間中、彼女はスーザントンプソンバフェット財団の国際プログラムディレクターでもあった。彼女は2015年から女性の健康と生殖の権利を世界的に推進するために務めている。彼女は後にテドロスの移行チームを率いた。エチオピアの国連およびジュネーブの国際機関の大使であるNegash Kebret Botoraも、この選挙運動で重要な役割を果たした。この選挙運動一部は、東アフリカ諸国による基金によって支援された。テドロスはまた、米国に本拠を置くロビー活動会社であるMercury Public Affairsも登用した。

2017年1月に開催された第140回会議で、WHOの執行委員会が2回非公開の投票を行い、6人の候補者の中から最優秀候補者としてテドロスを選出した。彼は双方で最も多く票を集めた。2017年5月23日、テドロスは185人中の133票という圧倒的得票数で、世界保健機関の次期事務局長に選出された。この選挙は歴史的であり、WHOを率いる最初のアフリカ人になり、すべての加盟国に開かれた投票で選ばれた最初の事務局長になった。

 (ウィキペディア「テドロス・アダノム」より。なお、注釈[39]~[50]は当ブログでリンクできないので省略した)

諸説あるんだなぁ、というのが感想。ただし、池上彰さんや名無しさんの見解の根拠はなさそうである(『文春オンライン』では根拠を明らかにしていない)。

 

ところで、池上さんでなくても、実は筆者も、なんとなく(テドロスWHO事務局長は、中国寄りだな) というイメージを持ってしまった。

 

実際に中国の援助を受けたのか、本当に中国寄りなのかは判断がつかないが、仮にそういうイメージを持ったとしたら、第2次世界大戦後の中華人民共和国とアフリカ諸国の関係ゆえかもしれない。そしてそれは最近の一帯一路構想もその続きのような気がするのである。そういう考えを持ったのは、『現代の日本史A 』(山川出版社、2013)の以下の記述である。

新興の第三世界諸国(

第三世界(だいさんせかい)とは - コトバンク

参照)の台頭も目覚ましく、1955年には、中国の周恩来とインドのネルーが主導して(生年略)アジア=アフリカ会議がインドネシアのバンドンで開かれ、反植民地主義と平和共存をうたいあげた(①)

 

①1960年代に入ると、アフリカ諸国の独立が進み、第三世界諸国が国連議席過半数を占めるまでになった(以下略)。

(『現代の日本史A』p155)

 

1971年の国連総会で、中華人民共和国が中国の正式代表と認められ、逆に中華民国議席を失った(③)

 

③国連で多数の議席を占める第三世界諸国が中華人民共和国支持にまわったこと(略) 

(『現代の日本史A』p161)

 要は、アフリカ諸国と中華人民共和国とのかかわりが深いのは以前からそうであり、下手にアフリカ諸国を中国寄りとすると、それが事実でも、反植民地主義(参考までに、

植民地主義(しょくみんちしゅぎ)とは - コトバンク をご一読)に反対するということになってしまう。人民の自決の権利(国際人権規約A規約、B規約第1条)が歌われている現在ではふさわしくない考えだろう。だから、安易にアフリカ諸国関連で「中国寄り」と述べるべきではなく、そう述べたいならしかるべき根拠が必要だろう。

 

なお、WHOの拠出金の内訳は、『swissinfo.ch』「新型コロナウイルス
世界保健機関(WHO) 米国の資金拠出の実態は?」(2020年4月17日9時17分)を参照。

www.swissinfo.ch

上記記事によると、米国の拠出が多い。ならばどうして「中国寄り」になるのだろう?謎である。