清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

米中じゃなく 宗主国と植民地

2020年10月1日0時からNHK-BS1で放送された「BS世界のドキュメンタリー さまよえるWHO-米中対立激化の裏側」(Hikari・Arte G.E.I.E,2020年。

www.nhk.jp

。以下「番組」とも表記)が興味深かったので紹介する。なお、2020年10月9日17時から再放送されるので、ある種ネタバレ。もっとも、2020年10月7日23時45分から再放送された「所さん!大変ですよ 最新家電で年収1000万円!?の謎」(

https://www.nhk.jp/p/taihentokoro/ts/5RG1V58XZQ/episode/te/R6P2YRMY13/

)によると、ネタバレO.Kという人がいるようだから、堂々とネタをばらす(蛇足を書くと、予めあらすじを知ったほうが映画を理解しやすいだとか、ネタバレO.K.の人が気遣いができるというデータがあるらしい)。

 

(以下、番組のあらすじ)

2019年末に中華人民共和国(以下、「中国」と表記)の武漢で発生した新型コロナウイルス(以下、「コロナウイルス」と表記)。中国は情報を隠蔽し、テドロス・アダノム事務局長がトップのWHOは楽観的なメッセージに終始する。番組では、ドナルド・トランプアメリカ大統領の対応を早いとしていた。すなわち、2020年1月31日の時点で独自に中国からの入国を禁止した。

 

台湾は中国で発生したコロナウイルスの情報をいち早く把握し、死者を10人未満に抑えこんだ。WHOの言うことを聞いたがゆえに判断が遅れた国もあったが、台湾は皮肉にも中国のせいでWHOから排除されたがゆえに迅速な対応を取れた。

 

番組は、タイトルの通り、「米中対立」とするが、コロナウイルスで露呈したWHOの機能不全がどのように起こったかを、識者のインタビューを交えながら明らかにしたドキュメンタリーである。

(あらすじ中断)

 

番組では、幅広くWHOの問題点を指摘しており、面白かった。テドロス事務局長の問題もあるが、それだけではないのは、観ればわかる。いか、筆者なりのあらすじの部分をもう少し開陳する。

 

(あらすじ、続き)

そもそもは、政治の介入を避けるために、わざわざ永世中立国であるスイスのジュネーブに本部を置いたが(番組)より、アルマータ宣言後に主導権争いが激しくなったのだとか。タイトルは「米中対立」だが、筆者の感想では、旧宗主国(いわゆる西側先進国)と旧植民地の対立という度合いが強く、それはWHOだけではない(が、番組の中心はWHOの上に、他機関の中国人のトップのことしか強調していない)。

 

それもあってか、旧宗主国側のアメリカは、ロナルド・レーガン大統領の時、発言力を強めるためにWHOへの拠出金(筆者メモより。「分担金」かもしれない)を減らした。そもそもWHOの予算は、加盟国の分担金が2割で、民間を含めた任意の拠出金が8割だという。アメリカが拠出金を減らしたくらいどうということはないではないか?と思われるかもしれないが、「拠出金」は曲者で、出す側が使途を決められるのだという。その弊害が出たのが、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の拠出金で、ポリオワクチンにしか使えなかったという。

 

2002年末、広東省で、動物のコロナウイルスが人に感染したが(SARS)、このとき中国は、当時の事務局長グロ・ハーレム・ブルントラント(ウィキペディア「Category:世界保健機関の事務局長」参照。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Category:%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BF%9D%E5%81%A5%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%AE%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80%E9%95%B7  )が中国に毅然とした対応を取った。そこで中国は、次の事務局長に、マーガレット・チャン(ウィキペディアでは「陳馮富珍」と表記)を、他国の支持を取り付けて送り込んだ。マーガレット・チャンの時はエボラ出血熱(2014年)の対応が拙かったらしい。

 

そしてあのテドロス・アダノムが事務局長に選出される。ただテドロス・アダノムに対する番組の評価はフェアで、ウィキペディアに載っているスキャンダルも扱っていたし、有能であるという評価も併せて取り上げている。

(あらすじ、終了)

 

番組制作者としては、昨今の米中対立もあり、それを強調する出来になっているが、それであれば、アメリカvs中国+アフリカ+いわゆる発展途上国+西側先進国、という構図もあり得るが、それを示していなかったので、筆者としては、番組の視点はズレていると感じた。WHOに関しては、テドロス・アダノム事務局長に問題なしとはしないが、構造的問題の方が問題が大きそうだし(そもそも予算が足りないらしいので。筆者は反証を持たない)、米中というより、旧宗主国vs旧植民地という色彩が強いと思った。なぜ旧植民地は旧宗主国の側につかないのかを旧宗主国の側が考えたほうがいいと思った。

 

というわけで、番組を取り上げたのは、昨今の国際情勢において、第2次世界大戦前の宗主国vs同じく植民地の対立が、旧宗主国側の主張が妥当としてその結果が出ない遠因の場合が多そうであることを警告したいがためである。