読売新聞と韓国日報は毎年世論調査をやっているようだが(2019年については
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)。2020年については
(2020年6月8日22時24分)あたりを読んでもらうとして、2020年の世論調査を基にした社説が6月11日に公開されたので、それを検討する。
その社説は、読売新聞2020年6月11日社説(5時)「日韓世論調査 文政権が相互不信を広げた」(以下、「社説」と表記)
である。
相手国を「信頼できない」とした人も、双方で多数を占めた。日本側では、韓国が執拗しつように歴史問題を蒸し返すことへの苛立いらだちが積み重なっている。
とのことだが、筆者の知る限り、公式謝罪+それに伴う賠償を、日本政府はただの1度もしたことがない(だから、「蒸し返す」が該当しない)。もちろん、日韓請求権協定等は承知しているが、それがあるからもう終わり、というわけではないことを以下に示す。
韓国の文在寅政権の責任は大きい。韓国最高裁が日本企業に対し、「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」への賠償を命じる判決を出した後、実現可能な解決策をいまだに示していない。
とあるが、当たり前である。独立した司法(大韓民国憲法第103条参照)が出した判決を行政のトップである大統領が覆せるわけがないので(韓国憲法第4章政府 第1節大統領を読んでも根拠づけられない)。
とあるが、あくまで「立場」にすぎず、それを実現する手段はない。外務省がホームページで「大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について
(外務大臣談話)」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_005119.html を公開しても、そもそも「強制動員慰謝料請求権は請求権協定の適用対象に含まれない」(法律事務所の資料棚アーカイブ「新日鉄住金徴用工事件再上告審判決(大法院2018年10月30日判決)」16ページ目(2020年6月11日アクセス。http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf )参照)と韓国大法院が判決を出したのだから大統領としてはどうしようもない。この程度のことも理解しないで吠えても馬鹿だと思われるだけである。なお、新日鉄住金徴用工事件再上告審判決の被告は、「新日鉄住金株式会社、訴訟代理人弁護士 朱(チュ)ハニル 外 2 名 」(「新日鉄住金徴用工事件再上告審判決(大法院2018年10月30日判決)」1ページ)であり、日本政府ではない。
最高裁判決に基づき、日本企業の資産は差し押さえられている。現金化されれば、企業側に直接の不利益が生じる。日本にとっては断じて容認できない事態だ。
も何も、韓国の裁判権が及ぶのだから「企業側に直接の不利益が生じる」のは何も問題ないじゃん。まさか、日本企業との訴訟はすべて日本の法律が適用されるという法律が韓国にあるというのだろうか?
文政権は日韓関係に与える打撃の大きさを認識し、打開策を講じねばならない。元徴用工への補償が必要だというなら、韓国政府が主体となって進めるのが筋だ。
の根拠は何もなく、判決を執行すればそれまでの話である。執行をしてほしくないならば、執行されるリスク0にならないが、被告企業が和解を模索するしかない(なお、「新日鉄住金徴用工事件再上告審判決(大法院2018年10月30日判決)」は、2012年5月24日に破棄差戻しされた訴訟の続きである。強制動員真相究明ネットワーク「朝鮮人強制動員 Q&A」(2020年6月11日アクセス。https://www.ksyc.jp/sinsou-net/201210renko-QandA.pdf)参照)。
韓国世論の硬化は、日本の対韓輸出管理の厳格化に対する反発とみられている
は間違っていない。そしてそれは、
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で書いたとおり、日本の安倍晋三政権が仕掛けたものである(書くまでもないが、文在寅政権が「新日鉄住金徴用工事件再上告審判決」を仕掛けることはできない)。
対日強硬路線の大幅な見直しは期待できない
とあるけど、文政権がなにか「対日強硬路線」でも取ったの?独立した司法が判決を出したのは全然違うからな。あとは安倍政権の仕掛けに対応したまでのことである。
というわけで、読売新聞2020年6月11日社説「文政権が相互不信を広げた」は、文在寅・韓国大統領の名誉を毀損しており、読売新聞は「安倍政権が相互不信を広げた」に修正し、謝罪しないといけないだろうな(もちろん、文大統領、ならびに読者に)。
*韓国憲法につき、『新版 世界憲法集』(高橋和之・編、岩波文庫、2007)を参照。なお、最新の憲法は1987年に公布された第六共和国憲法なので、『新版 世界憲法集』の情報が最新である。