読売新聞2019年10月19日朝刊13版9面にある、小田尚(「調査研究本部客員研究員」とのこと)「約束と「正義」の日韓対立」(以下、*1と表記)がひどかったので、後の読者のために検討しよう。
GSOMIAの破棄について「日韓結束の象徴に加え、機微にわたる情報の交換で醸成されてきた信頼関係が失われる、という政治的意味は小さくない」(*1)とするならば、「韓国は、日本の対韓輸出管理の厳格化について、韓国人「元徴用工」問題に対する「経済報復」と決めつけ」(*1)られないようにすべきであった、と論理的にはなるはずだけど、自由民主党べったりの読売新聞は、その当然の見方を根拠なく採用しない。
一方、韓国における元徴用工の請求を認めた判決→報復としての輸出管理強化→GSOMIA終了、が正しいことにつき、以下をご一読。
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にある産経新聞「半導体材料の対韓輸出を規制 政府 徴用工問題に対抗 来月4日から」(2019年6月30日10時44分。https://www.sankei.com/politics/news/190630/plt1906300004-n1.html )、
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その後は検討すべきところがなかったので、かなり飛ぶが、「こうした日韓対立の根幹にあるのが「元徴用工」問題である」(*1)のところから検討する。
「日本側が1965年の日韓請求権協定に基づいて「完全かつ最終的に解決済みだ」と対処を求めても、文氏は司法判断を尊重するとし、善後策を練ろうとしない」(*1)ことを否定的に評価しているが、司法権が独立しており(大韓民国憲法第103条)三権分立の国家である韓国(大韓民国憲法第40条、第4章第1節、第101条第1項。WIKISOURCE「大韓民国憲法(憲法第10号)参照。https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%9F%93%E6%B0%91%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95(%E6%86%B2%E6%B3%95%E7%AC%AC10%E5%8F%B7) )からすれば当然のことである。
「安倍首相が今月4日の所信表明演説で、韓国については「国際法に基づき、国と国との約束を遵守することを求めたい」と改めて言及せざるを得ないのが現状だ。条約や協定を国内法を理由に否定するのは、国際法では通らない」(*1)とあるが、別に否定していないのは、「日韓請求権協定の範囲外」という判決(山本晴太さん(福岡県弁護士会所属 弁護士)が制作・管理している『法律事務所の資料棚アーカイブ』にある「2018.10.30 新日鉄住金事件大法院判決(仮訳) 」(http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf )をご一読)。丸を一つ書いて、それを「日韓請求権協定」として、その外に今回の判決を位置付ければいいだけなんだけど、小田さんはその程度の工夫もできなかったんだろうなぁ(馬鹿笑い)。なお、その程度の工夫もせずに安倍首相の見解や*1を是としてしまうと、日韓基本条約を締結し直すか(『知りたくなる韓国』(有斐閣、2019)をご一読)、断交くらいしかなくなるが、どちらにしてもアメリカの怒りは韓国のGSOMIA終了の比ではないだろう(それ以外にもデ・メリットはあるし、そもそも国交がないことがデ・メリットである。詳述はしない)。
本エントリーで本当に問題にしたかったのは、以下のくだり(*1より引用)。
韓国勤務の経験がある日本外務省筋は「日本は『約束』を重んじるが、韓国では『正義』が上位にくる。ただ、その考えはころころ変わる」と解説する。「正義」に根拠は客観性はあるのか
小田尚さんよ、日本をなめとんの?
まともな共同体であればどこでも約束より正義である。日本だってどんな約束でも通るわけではない。例えば民法第90条が根拠ね。また、日本でも正義はころころ変わるに決まっているだろ。例えば、証拠でしかなかった犯罪被害者に権利が付与されたりとか(一例:刑事訴訟法第292条の2・第1項)。なお、請求権協定がいかなるプロセスで締結されようとも、今回の、例えば新日鉄住金(現日本製鉄)敗訴の判決が、たとえば原告敗訴で終了した民事裁判の蒸し返し(再審請求を除く。なお、新日鉄住金敗訴の事件は再審によるものではない)ではない。すなわち、正義がころころ変わったわけではない。
「今後、韓国内で現行側が差し押さえた日本企業の資産を現金化する動きが出るなら、日本側も対抗措置を取らざるを得ない」(*1)って、韓国に民事裁判の管轄があるんだから放っておけよ。
「対韓外交を担う政府高官は、譲れない一線をこう語る。/「65年協定の解釈を変えてまで韓国と手を握りたくはない」」(*1)って何?別に誰も変えてないですよ、今でも。そこまで言うなら、中国にも同様の文句を言ってみろよ!ということ(中国の元徴用工問題は和解で解決している)。
最後に、小田尚さんの唾棄すべき記事の口直しとして、こちらを(2019年9月4日の記事)。
「共産党だから」だとか「アカだから」だとかと言う話はナシね。そう言う人が勉強不足だというだけの話だから。