清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

日本政府の 主張にも一理 あるけれど

 まずは、当ブログで「徴用工」で検索した結果を挙げる。

https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/search?q=%E5%BE%B4%E7%94%A8%E5%B7%A5

 

 筆者の理解では、韓国*1

の裁判所が出した判決を覆すことができず、従って韓国政府は何もできない、また日本政府は何もできない(趣旨)、というものだったが、どうもその理解は甘かった。なお、本エントリーと矛盾する内容の過去記事も、思考の変遷を残す意味で訂正はしない。

 

 国際違法行為をすると国家責任が生じ、『国際法[第5版]』(松井芳郎ほか著、有斐閣Sシリーズ、2007)p243によると、「国内法上の国家機関やその地位にある者がその資格で行った行為は、すべて国家の行為とみなされる。立法機関、行政機関又は司法機関のいずれの行為であるかを問わない」。

 

 そうなると、国際違法行為の停止と再発防止だったり、賠償だったりを加害国はしないといけないらしい*2。しかし確定した判決の効力を否定することができるのだろうか?Sシリーズの国際法には書かれていない。

 

 被害国は、国際請求ができたり、対抗措置が取れたりするそうだ*3

 

 しかし、仮に日本政府が、徴用工(朝鮮人強制連行)問題につき、「日韓請求権協定に基づき解決済みだ!」としても、争えば争うほど日本政府の方が立場が悪くなるように思うのは気のせいか。

 

 現在の世界で、植民地支配、差別、暴力、それらを肯定する国があるのだろうか?騒ぎになればなるほど日本が不利になる風にしか見えない。被告企業が勇気をもって和解すれば日本と韓国が植民地支配を清算し、東アジアの懸念が1つ消えてよかった、となるはずだけれど。

 

 そもそも条文で「請求権に関する問題が(略)完全かつ最終的に解決された」*4からといって個人の請求権が消滅したわけではないというのは、条文の文言は少々違うが、日本政府の立場でしょうに。すなわち、第141回国会の答弁第九号*5によると、「日ソ共同宣言の第六項の規定による請求権の放棄については、国家自身の請求権を除けば、いわゆる外交保護権の放棄であって、日本国民が個人として有する請求権を放棄したものではない」となっている。「放棄」しても個人の請求権が放棄されているわけではないのだから、「解決」しても個人の請求権の問題は解決していないと読むのが一貫している*6。韓国の裁判所の判断は日本政府の立場と矛盾しておらず、日本政府が横槍を入れるから日韓関係が「悪化」しているというのが真相である。

 

 重ねて書く。日本政府は横槍を入れるのをやめ、被告企業は和解を模索すべきである。

 

*補足

 この件に関しては「第197回国会 質問第49号」

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a197049.htm

で言及されている。正直、質問の内容と答弁がかみ合っているとは言えない。質問は「一九九一年八月二十七日参院予算委員会での清水澄子議員、同年十二月十三日参院予算委員会での上田耕一郎議員の質問に対し、柳井俊二条約局長(当時)が、『日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます』『昭和四十年の日韓請求権・経済協力協定の二条一項におきましては、日韓両国及び両国国民間の財産・請求権の問題が完全かつ最終的に解決したことを確認しておりまして、またその第三項におきましては、いわゆる請求権放棄についても規定しているわけでございます。これらの規定は、両国国民間の財産・請求権問題につきましては、日韓両国が国家として有している外交保護権を相互に放棄したことを確認するものでございまして、いわゆる個人の財産・請求権そのものを国内法的な意味で消滅させるものではないということは今までも御答弁申し上げたとおりでございます。』と答弁しています」とあるのに、答弁は「柳井俊二外務省条約局長(当時)の答弁は、日韓請求権協定による我が国及び韓国並びにその国民の間の財産、権利及び利益並びに請求権の問題の解決について、国際法上の概念である外交的保護権の観点から説明したものであり、また、韓国との間の個人の請求権の問題については、先に述べた日韓請求権協定の規定がそれぞれの締約国内で適用されることにより、一方の締約国の国民の請求権に基づく請求に応ずべき他方の締約国及びその国民の法律上の義務が消滅し、その結果救済が拒否されることから、法的に解決済みとなっている。このような政府の見解は、一貫したものである」とある。質問中の過去の答弁は「個人の財産・請求権そのものを国内法的な意味で消滅させるものではない」となっているのに答弁が「法律上の義務が消滅し、その結果救済が拒否される」というのはよくわからない。いつ立場が変わったのだろうか?また、日本政府のみがそういう立場だからといって韓国政府がその立場を取るべき根拠も見出しがたい。

*1:本エントリーでは、以下も「大韓民国」を「韓国」と略記。

*2:国際法[第5版]』(有斐閣Sシリーズ)p252。

*3:国際法[第5版]』(有斐閣Sシリーズ)pp.254-258

*4:いわゆる日韓請求権協定。(略称)韓国との請求権・経済協力協定第2条第1項。外務省HPにある。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/A-S40-293_1.pdf

*5:

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumona.nsf/html/shitsumon/b141009.htm

*6:もちろん、「放棄」と「解決」では違う、という解釈も可能だが、韓国に限って個人の請求権すら認めないという解決を志向したかは不明。