朝、読売新聞統合版13版4面を見たら、笑える(嘲笑系)記事が。題して、「検証 安倍政権 2 『対抗措置』」(以下*1 と表記)。以下、引用しつつ検討する。
「これで日本の材料に依存する韓国の電子機器産業は立ち行かなくなるぞ」/政府が韓国向け輸出管理の厳格化に踏み切った7月はじめ、首相周辺はこう語った。政府は表向き、安全保障上の措置だとするが、韓国人元徴用工問題での「対抗措置」だとの受け止めが多い
ここはよく覚えておこう。
前後するが「『脱優等生』」(*1)なのは構わない。ただ、対韓国関係でも、国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退でも、これが日本にとって得になったかは疑わしい(後者はまだ判断保留だが、対韓国関係では日本の主張が無理筋な場合が多いのは、カテゴリ「韓国」をクリックしていただければわかる)。
ところで、昨今の輸出管理強化について、*1に興味深い記述が。以下、引用する。
今回の輸出管理厳格化について、外務省で日韓関係を担当するアジア大洋州局は相談を受けなかった。経済産業省幹部は「外務省が韓国人に対する査証要件厳格化といった『対抗措置』をやらないから、経産省が引き取った」と明かす
って、なんでビザの要件を厳格化するの? 最高大法院(「韓国大法院」に訂正。2019年8月30日)に罪はないし(行政と別の解釈をすることはあり得る。韓国は司法権が独立している。大韓民国憲法第103条参照。WIKISOURCE「大韓民国憲法(憲法第10号)より。*2)韓国人にも問題はないだろう。
読み進めると、
ただ、相手がある外交は、日本の思惑通りにいかないことが多い。韓国は、日本の輸出管理厳格化に対し、日韓「軍事情報包括保護規定」(GSOMIA)の破棄という次元の違う強硬措置で対抗した
とあるが、
kiyotaka-since1974.hatenablog.com
で記した、
経済産業省HP「輸出貿易管理令の一部を改正する政令が閣議決定されました」にあるpdfファイル「政令案・理由」(略) によると、「国際的な平和及び安全の維持のため、大韓民国を仕向地とする貨物の輸出について仮に陸揚げした貨物に係る輸出の許可の特例を廃止する等の必要があるからである」
からは、どちらも安全保障上の問題であるから、「次元が違う」わけでもなく、実際の韓国は論理的に対応しているのである。
読み進めると、
米政府は日本の立場を理解しているが、日韓関係の歴史に詳しくない欧米メディアからは、今回の日本政府の対応を、強い圧力をかけて有利な取引に持ち込もうとするトランプ米大統領と同様の「トランプ流としか言いようがない」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)などといった批判も出ている
とあるが、これが冒頭で書いた「笑える(嘲笑系)」の理由。最初に引用した文章をもう一度示そうか。
「これで日本の材料に依存する韓国の電子機器産業は立ち行かなくなるぞ」/政府が韓国向け輸出管理の厳格化に踏み切った7月はじめ、首相周辺はこう語った。政府は表向き、安全保障上の措置だとするが、韓国人元徴用工問題での「対抗措置」だとの受け止めが多い
まさに、ウォール・ストリート・ジャーナルの書いた通りである。「歴史に詳しくない」かもしれないが、読売新聞より日本を知っていそうだし、読売新聞の記事は論理的ではない。
締めは
日米韓の連携にほころびが出れば、日本の安全保障への影響は少なくない。国益の確保には、毅然として冷静さのバランスが求められる
だが、GSOMIAが破棄された現状では「ほころびが出」ているわけだから、まずは安倍晋三政権の否定的評価だが、それがないので日本のメディア(と言っても読売新聞だけだが)は馬鹿にされるのである。おまけに論理的でもない。
*1 本文に既述。
*2 2019年8月29日アクセス。なお、他の資料では未確認。https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%9F%93%E6%B0%91%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95(%E6%86%B2%E6%B3%95%E7%AC%AC10%E5%8F%B7)