以前筆者は竹中治堅(はるかた)さんの本を読んだことがあり(中公叢書『参議院とは何か 1947~2010』のレビュー「提言を 支持しないので 星4つ」をご一読。
https://www.amazon.co.jp/review/R6FXKX0AFGKP7/ref=cm_cr_srp_d_rdp_perm?ie=UTF8&ASIN=4120041263
)、その時はそれなりの人だと思ったが、実は政治についてど素人だったという話。
読売新聞2021年3月30日統合版13版4面「菅流政治 検証半年〈9〉」(ウェブは一部公開。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210329-OYT1T50254/
)から引用する(ウェブの非公開部分だが、紙面を持っているので「公表された著作物」(著作権法第32条第1項)の要件を満たしている)。
野党がもう少し強ければ、首相の政権運営は苦しかっただろう。今の野党からは、政権を取ろうという意欲が感じられない。結局、民主党政権時代の総括ができておらず、なぜ自分たちへの期待感があがらないのか理解できていない。
野党第1党の立憲民主党は、政権批判に終始するのではなく、提案型の現実路線にならないといけない。
-「菅流政治 検証半年〈9〉」
「意欲」という主観的なことを出されても。
「民主党政権時代の総括ができておらず」というのは、政治学者なら、絶対に、と言っていいほど書いてはいけないことであった。筆者は薬師寺克行『証言 民主党政権」(講談社、2012年)を想定していたが、Amazonによると、2012年10月24日初版のようである(
)。しかしその後にも『民主党政権とは何だったのか――キーパーソンたちの証言』(山口二郎/中北浩爾・編)という本が岩波書店から2014年に出ている。「総括ができておらず」と書くならば、上記の本がなぜ総括ではないのかを書かないといけない。どうも竹中先生は見たくないものは見ないという、学者としては失格の人間のようである。
「なぜ自分たちへの期待感があがらないのか」という竹中先生の答えは「政権批判に終始するのではなく、提案型の現実路線にな」っていないからのようである。しかし、それなら、与党はスキャンダルがあった方がいいとなってしまう。時事ドットコム「立憲、提案路線に揺らぎ 『疑惑』続々、軸足定まらず」(2021年2月13日21時12分。
)を挙げておく。つまり、「提案型の現実路線にな」っていないのは、現在の与党の責任である。
、参議院は
、から)は、衆議院であれば定数465のうち、自由民主党・無所属の会が278人、連立パートナーの公明党が4人。一方、立憲民主党・無所属は113人。参議院であれば定数245のうち、自由民主党・国民の声が113人、公明党が28人。一方、立憲民主・社民は43人。提案路線をしても自由民主党(会派含む)+公明党が数で潰せる。もちろん提案が悪いわけではないが、提案が通らないこともあるわけで、提案型を提案するのは現実的ではない(もちろん、何でも反対でいい、とも言っていない)。
また、内閣または与党が法案を作るということが絶対に正しいという前提でないと「提案型の現実路線」にはならないが、内閣または与党が法案を作ること自体が問題ということもあり得るので、「提案型の現実路線」の強調もいけない。
つまり、竹中先生は、本も読まず、データも見ないということで、政治学者を廃業した方がいいというのが結論である。