1. 2022年12月31日に、第73回NHK紅白歌合戦が無事行われた。世帯視聴率は、歴代ワースト第2位の35.3%だった*1ので、ダメ出しの記事が目立つ。しかし、今どき世帯視聴率が35%の番組なんてそうないと思うけど。それに加えて、本エントリーで取り上げる2つの記事は、ともにお年寄り(高齢者)を置き去りにしていないだろうか、という問題意識を持っている。それらを引用しつつ検討する。
2.まずは、Yahoo!個人「全歌手の集客力に見る『紅白』の次…セカオワ・氷川きよし・桑田佳祐ら◎、グループ・K-POP・演歌が×」(鈴木裕司。2023年1月8日4時46分)を検討する。
まず、「流出率」が、「曲の魅了する力 ランキング」と言えるかはわからないだろう。鈴木によると、「T層(男女13~19歳)はわかり易い。/家の手伝いをする若者は少ないようで、ほぼ一貫して右肩上りだった。テレビを見続けた人が大半だったのである」はその通りだとしても、生理現象や手伝いと言った事情はあるだろう*2。
鈴木によると、「ワースト10の3組は演歌だった」という。そして「逆に演歌では、高齢者の支持を一定程度得られても、主婦や若者がそれ以上に離反した」のだという。そして「今回の演出陣は、視聴者層拡大を狙い、若者受けやネット上での人気を優先し過ぎた」という。どっちやねん!とツッコミを入れたくなった。
蛇足だが、K-POPファンの筆者が気になったのは、「韓国の女性グループが3組いたが、うち2組は良くなかった。/彼女らの多くがミニスカートかショートパンツで、大半がブーツだった。しかも色使いまで似ており、“かぶり過ぎ”で誰が誰だかわからないと感じた視聴者が少なくなかったのである」とのことだが、日本の視聴者って目や耳が悪いのだろうか?
3.次は、日刊ゲンダイデジタル「桧山珠美 あれもこれも言わせて 年配視聴者の「紅白歌合戦」離れは今後確実に進む…大先輩を雑に扱ったNHKにダメ出し!」(2023年1月8日6時公開。同11時37分更新)を検討する。
加山雄三に関する部分は筆者も賛成。年を取るとどうしてもキーが低くなるが、低音が出せるかというとそうではない。低音を聴かせるのは、筆者の経験でも大変で*3、聴いていて正直残念であった。
桧山の危機感は、「毎度のことながら、演歌をレクリエーションにするのも不愉快だ」(3ページ)のところか。演歌=お年寄りが聴く、は筆者の偏見だが、「今回で懲りて、お年寄りの『紅白』離れは確実に進むに違いない」ということの一因になるかもしれない。
「K-POPやらジャニーズやらは、何の歌詞かもよくわからないし、歌よりもダンス重視でいっそ、紅白“ダンス”合戦にした方がいいのでは」(同)というのも、高齢者の紅白離れを助長するかもしれないが、歌詞は一応字幕に出ているので、それをチェックしてもらえれば。それにしても、鈴木といい桧山といい、K-POPに関して厳しいですな。日本の曲離れしているノリの良さについていけていないのかしら。
4.筆者が勝手に取り上げた2つの文章に共通するのは、お年寄りを無視してはいけないという問題意識と、ダンスミュージックに対する酷評である。しかしK-POPに関してはbillboardJAPAN Hot100年間チャート(
https://www.billboard-japan.com/charts/detail?a=hot100_year&year=2022
)、ジャニーズや演歌に関してはオリコン年間シングルランキング2022年版(
https://www.oricon.co.jp/rank/js/y/2022/
)をご覧あれ。後者について、演歌・歌謡曲系と筆者が認識しているアーティストがランクインしているのは、第69位・純烈「君を奪い去りたい」、第80位・山内惠介「誰に愛されても」、第83位・氷川きよし「群青の弦」、第91位・氷川きよし「甲州路」だけである。オリコンは、いわゆるアイドルが強く、演歌・歌謡曲系はなかなかランクインしなかった。お年寄りが聴いていたとしても演歌・歌謡曲系の枠が広がることはなさそうである。
5.最後にオマケ。文春オンラインは、2020年から2022年に、紅白歌合戦についてアンケートを実施していた*4が、2023年は実施していない。筆者は文春オンラインのアンケートに答えていたので、今年もあるとにらんで予定稿をつくった。そのベスト3を記して終わりにする。
第3位 緑黄色社会"Mela!"
宮城県民であれば、東北放送(TBC)テレビ「直球勝負!イーグルスLIVE」のオープニング曲としておなじみなので、取り上げた。ただ、短すぎる。
第2位 LE SSERAFIM "FEARLESS(Japanese ver.)"
筆者はK-POPをよく聴くので、先述の鈴木や桧山の文章は我慢ならない。筆者としてはIVE"ELEVEN(Japanese ver.)"と甲乙つけがたかった*5。"FEARLESS(Japanese ver.)"にしたのは、明るく、音量の大きい、筆者が勝手にイメージしている既存のK-POPとちょっと毛色が違ったからである。
第1位 SEKAI NO OWARI"Habit"
オープニングのギターはどこかで聴いた気がするが、ノリがよく、メッセージ性がありそうな歌詞である。第64回日本レコード大賞受賞曲だが、筆者はTBSテレビの番組を観ていなかった。それもあって新鮮に感じたこともあり、この曲を1位とした。
*1:日刊ゲンダイデジタル「桧山珠美 あれもこれも言わせて 年配視聴者の「紅白歌合戦」離れは今後確実に進む…大先輩を雑に扱ったNHKにダメ出し!」
*2:過去の経験で恐縮だが、第69回NHK紅白歌合戦視聴中に、いきものがかりのときに猛烈な腹痛に見舞われ席を外したことがある。ウィキペディア「第69回NHK紅白歌合戦」参照。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC69%E5%9B%9ENHK%E7%B4%85%E7%99%BD%E6%AD%8C%E5%90%88%E6%88%A6
*3:おこがましい書き方だが、歌ったときに自分の歌を録音すれば簡単にわかる。
*4:文春オンラインの検索窓に「紅白 アンケート」を打ち込んだ結果のアドレスを示すので、各自で読んでください。
*5:TWICEは心なしか音が小さく感じたから選外。