2023年6月16日の第211通常国会において、立憲民主党が提出した、岸田文雄内閣に対する不信任決議案が、衆議院本会議で否決された。この件につき、筆者は、NHK NEWS WEB「岸田内閣に対する不信任決議案 反対多数で否決 衆院本会議」(2023年6月16日20時44分)を参照した。
野党のやる気のなさが気にかかる話である。以下、NHK NEWS WEBの記事などを引用しつつ。
立憲民主党と共産党などは不信任案に賛成しましたが、自民・公明両党に加え、日本維新の会、国民民主党などの反対多数で否決されました。れいわ新選組などは棄権しました。*1
野党の思惑もあるのだろうが、立憲民主党は根回しをしたのだろうか? と疑ってしまった。もっとも、根回しをしなくても賛成できるので、罪は小さいが。
内閣不信任決議案に反対した日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「夏になれば盆踊りをするように、前例や慣例として不信任決議案を出すことは、逆に国会から緊張感を奪っていく。どうせ否決されることに時間を費やしても何の生産性もなく、できればやめてほしいというのが本音だ」と述べました。*2
これには賛成しない。有権者目線でいえば、現在の政権に問題があることがわかるからである。不信任決議案を出さないと、現在の政権に問題があると解釈できないから、それこそ国会に緊張感がないと判断してしまうものである。
内閣不信任決議案に反対した国民民主党の玉木代表は記者団に「内閣を信任したという批判は甘んじて受けるが、近年、漫然と行われている会期末の不信任決議案の提出には反対だ。出すのであれば、野党第一党は、ほかの野党にも丁寧に説明して働きかけ、野党全体をまとめる努力をするべきだ」と述べました。*3
一見正論のようだが、ダメである。「根回しをしなくても賛成できる」とすでに書いた。
以下は、れいわ新選組HPにおいて2023年6月16日に発表された、「内閣不信任案『棄権』の理由(2023年6月16日 れいわ新選組)」からの引用である。
今回れいわ新選組が棄権した理由は、
不信任案を提出した野党第一党の闘っているフリに乗っかるわけにはいかないからだ。(略)
今回の内閣不信任案を前に審議されていたのは、
野党各党がこぞって反対していた防衛財源確保法。
これは実質、増税法案である。それに対して、委員長解任決議や財務大臣問責なども出さず、
淡々と採決に応じ成立させた上での内閣不信任案、提出である。「増税法案などとんでもない」、と言いながら、
行える物理抵抗は一切行わず、成立した後に内閣不信任案提出とは、
政権にとって非常にありがたい、物分かりの良い野党第一党といえよう。仮に昨日、委員会で、防衛財源確保法が成立する前に
野党第一党が内閣不信任案を提出したならば、
委員会での採決もされていないし、
本日の参議院本会議での増税法案の採決も先延ばしにできたはずだ。(略)
私たちは、問題のある政府提出法案を成立させないために、委員長解任決議、
大臣不信任決議や問責決議を駆使して法案の問題点を議場において
強く国民に訴えるなどのやり方には強く賛同している。内閣不信任案の提出時期についても、この考え方に基づき、
法案採決前に提出されるのであれば当然、賛成すべきと考えていた。しかしながら、今回の不信任案を野党第一党が提出したのは、
本日の参議院本会議で防衛財源確保法が成立した後だった。現政権の最大の問題点である米国の意向に応じた防衛費大幅増額を行う
内閣への不信任案を突き付けるタイミングを外したのが天然なのか、
何なのかはわからない。また、今国会終盤ではマイナンバーを巡るトラブルが多発し、
河野太郎デジタル担当大臣の無責任な発言が国民の怒りを買った。
にもかかわらず、野党第一党は、河野大臣の不信任や問責決議を提出していない。
この点もきわめて違和感が残る対応であると考える。私たちは岸田内閣に対する不信任の思いは共有するものの、
野党第一党が、今国会における売国棄民法案に関する対峙の仕方について、
委員会での追及以外は、与党に対する思いやりの塊であったことを鑑みて、
生ぬるい野党第一党による不信任案には「棄権」するものである。
わかるのだが、内閣不信任決議案に賛成しないうちは、それこそ「闘っているフリ」*4にしか見えない。法的効果*5のある決議案に棄権し、政治的効果にすぎない決議案を出さないことを問題にしても、説得力がない。
このように、野党間の主導権争いという一面があるのは理解するが、一部野党のやる気のなさが気になる。与党になれていないのだから、是が非でも与党になる!という気構えが欲しいものであり、そうしないと緊張感がなくなる。法的効果を与える内閣不信任決議案を提出・賛成した政党に任せた方がいいのではないだろうか。