山口県光市の母子殺害事件の差し戻し審が広島高等裁判所で開かれているが、安田好弘弁護士ら21人の弁護団に対する批判が喧しいように思う(今日のよみうりテレビ・日テレ「ウェークアップ・ぷらす」でも批判されていた)。
当たっているところもあるが、ほとんどすべてが筋違いと言っていいと思う。
1、まず、当たっているところ。
(1)弁護団が21人であるところ(これからはわからないが、全員が在廷していた)。2個の殺人が主な争点なのにこんなに弁護士が必要なのだろうか。また、裁判官の心証を悪くしないだろうか(いい感情を持つ人はいないだろう)。
(2)遺族の本村洋さんがおっしゃっていたことだが(上記のTV番組でしゃべっているのが映った)、本件弁護を手段として、究極の目的が死刑廃止であるところ。
(3)傷害致死(刑法第205条。この事実が認定されると、最高で懲役20年(平成16年改正前の刑法第14条第1項。事件が起こったのは平成11年)になる)で争っているところ。といっても、この事件に興味を持ったのはつい最近で、1審、2審でどのように争ったかはわからない。どこかの大学の法学部の図書館で判例集を見ろよ、という批判は甘受します。
2、次は、筋違いであるところ。
(1)弁護団が21人であるということは、別に違法ではない(刑事訴訟規則第26条第1項によれば、「裁判所は、特別の事情があるときは、弁護人の数を各被告人について3人までに制限することができる」とあるだけで、弁護人が何人いようと原則自由である)。
(2)究極の目的が死刑廃止でも、本当は悪くない。“鏐霓佑量燭魑澆Δ海箸枠鏐霓佑陵?廚帽臙廚垢襪掘↓△修發修盥餾歸には死刑廃止国も多い上に(先進国に限れば、全国的に死刑を存置しているのは私の知る限り日本だけ)、死刑廃止条約も発効している現在では(もちろん、日本は批准していないので日本では発効していない。蛇足だが、国際標準に合わせようと主張している方が、なぜ死刑に関しては口をつぐむのだろう)、死刑廃止の主張自体は正当だからである。
(3)傷害致死の主張をすることも、上記1(3)のように被告人の利益に合致しており、批判に値しない。
(4)それに加えて、安田弁護士を批判する方にないのは、被告人の利益をどのように守るのかという視点である。第1審、第2審の無期懲役(無期懲役にした裁判官だって前例を参考にしただろうに。すなわち、この事件で本当に死刑にしていいのか(18歳を過ぎたからといって、いきなり死刑にしていいのか)は問題があろう)が破棄されたということは、よほどのことがない限り死刑なわけで、被告人の弁護人の立場としては、あらゆる知識を総動員して死刑を回避しようとするのは当然で、それを批判してはならないだろう。
3、このように書くと、「お前は被害者の立場、苦しみ、人権などがわからないのか!」とお叱りを受けそうだが、“鏗下圓領場などの考慮は別途すべきだ(死刑ではなく、給付金の増額、被告人に罪を償わせること、対話することなど、方法論は色々ある)、∈枷修鮓る場合には、被害者の立場からだけで見てはいけない(もっとも、刑事法をかじった人が陥るミスを私もかつてはした。すなわち、被害者の立場を全く無視するというミスを犯した)、以上2点により、このお叱りは的を射ていないと思う。
4、と書いたが、私の記述にも筋違い(間違い)がありました。1(3)で「傷害致死(刑法第205条。この事実が認定されると、最高で懲役20年(平成16年改正前の刑法第14条第1項。事件が起こったのは平成11年)になる)」と書きましたが、この事件では、強姦致死罪(現刑法第181条第2項)と、窃盗罪(刑法第235条)が認定されていますので、仮に傷害致死としても、3個の罪の併合罪の関係になり、最高刑は無期懲役になります。(刑法第46条第2項)。お詫びして訂正します。
(平成19年6月28日記)「4、と書いたが」以下について、報道によると、どうも強姦の故意がないと主張しているようです。お詫びして訂正します。