私事で恐縮だが、今週は、DVDを含め、映画を3本観た。本エントリーでは、今週観た映画の感想を書いてみたい。興味のある方はお付き合いのほどを。
1.映画『日本国憲法』(これのみDVD)
ジャン・ユンカーマン監督が、知識人12人にインタビューし(人選に問題があることについては不問とする)、日本国憲法の、とりわけ9条について語ったことをまとめたもの。
私個人としては、改憲(9条の)もありだと思っていたし、今も思っている。しかし、9条が日本の謝罪の意思だったり、かろうじて保っている(映画のトーン)日本の信頼の証だったりするとなると、改憲を主張するのは勇気が要るものだと思った。
2.『ビルマVJ 消された革命』(以下『ビルマVJ』)@フォーラム仙台
ビルマ(現在の軍事政権は「ミャンマー」と言っているが、本エントリーでは「ビルマ」と表記)では、1988年に、民主化勢力が選挙に勝ったにもかかわらず、軍事政権がデモを鎮圧し、3000人が死亡し、アウン・サン・スー・チーが軟禁され、現在に至っているが、そのビルマを取材している「ビルマ民主の声」のビデオジャーナリスト(VJ)の活動を追っかけたドキュメンタリー映画である。
2007年8月、政府は物価を2倍に上げたそうだが、それに不満を示した人のアピールは、当局に簡単に鎮圧された。
そして9月、僧侶が立ち上がり、大規模デモに発展する。一時は、アウン・サン・スー・チーの姿が見られるまでになったが、デモは鎮圧され、カメラを持っている人は容赦なく撃たれ(日本人ジャーナリスト死亡のシーンも映っている)、「ビルマ民主の声」のビデオジャーナリストも散り散りとなった、という話である。
こんな暴力的な政府だから(?)、撮影は当局の許可がなければ認められない。しかし、それでは事実を伝えることができない。そこで、隠し撮りを決行し、その貴重な映像を、CNNやBBCなどに配信したことに感銘を受けた。「『ザ・コーブ』は隠し撮りと非難された」(『フォーラムラヴィ』8月号より引用)そうだが、取材対象者と取材者の法的関係はさておき、事実を知ることも大事なのだから、隠し撮り批判はとんちんかんとせざるを得ないと、『ビルマVJ』を見て強く思った。
ところで、この『ビルマVJ』、『ザ・コーヴ』とアカデミー賞(ドキュメンタリー)を争ったとか(『フォーラムラヴィ』8月号より)。『クロッシング』と『おくりびと』もその関係だが(外国語)、私の中では、どちらも前者(『ビルマVJ』と『クロッシング』)のほうがいい映画と思った。しかし、後者がアカデミー賞のそれぞれの部門賞を受賞した。後者のほうが知らないことを発掘したと言えるので、それなりにアカデミー賞の選考は公平だと思った。
3.『きな子~見習い警察犬の物語』@MOVIX仙台
警察犬は人の6,000倍の嗅覚を持つそうだが、このような能力を生かして捜査する警察犬の養成所に、杏子(夏帆。役の名前は「杏子」で通称「あんこ」)が見習いとして入所した。杏子は、元気のなかったゴールデンレトリバーのきな子を、警察犬にしようとするが、試験のときに体調を見なかったミスなどもあって試験に合格せず、杏子も所長(寺脇康文)に絞られて逃げてしまう(以下略。MOVIX仙台では来週も上映のため)。
この映画を観て最重要だと思ったことは、人間と人間の情である。所長さんは口は悪いが、実家のうどん屋を着いた渉先輩(ここだけ俳優名略。情報求む)に独立の祝い金を渡したり、杏子が逃げ出しても見捨てなかった(杏子の父が元上司だった)りと、情をかけることが大切だと思った。杏子の母親(浅田美代子)も厳しさの中に温かさを感じる役割であった。
犬好きの人が観るのはいいが、結構大人向きの映画だと思った。ある程度の年齢の方は情をもって接することの大切さを、社会人3年以内の人は、安易に仕事を投げ出さないことの大切さ(この映画のような偶然はまれだと思ったほうがよい)を感じるだろう。
なお、実際の「きな子」は、まだ警察犬になっていない。
*文中敬称略