上記asahi.comによると、「東京女子医大病院(東京都新宿区)に勤務していた医師が、共同通信社配信の誤った記事をそのまま掲載されて名誉を傷つけられたとして地方紙3社に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は28日、医師側の上告を棄却する判決を言い渡した。地方紙側の逆転勝訴が確定した」という。
この事件の結論は、直感的には妥当だと思っているが、結構難しい事例のようだ。以下、上記asahi.comを引用しつつ、検討する。
「一審・東京地裁は07年9月、共同通信社については、大学側の調査報告書などに基づいて報じたことなどを理由に賠償責任はないとした。一方で、地方紙3社に対しては「通信社の配信という理由だけで、記事が真実だと信じる理由があったとはいえない」として、計385万円の賠償責任を認めた」というのは、「通信社からの配信記事をめぐっては、いわゆる「ロス疑惑」の名誉毀損訴訟で、最高裁第三小法廷が02年1月、「私人犯罪やスキャンダル報道」の分野に限り、「信頼ある通信社の記事という理由だけでは、掲載社の賠償責任は免れない」との判断を示している」ことと統一して理解したものだろう。今回の場合、医者だから「「私人犯罪」」と同一視できないとしたものだろうか。
ところで、もし一審が妥当だとしたら、地方紙はたまったものではない。独自に人材を投入できるとは思えないからだ。だから、通信社に参加して、全国の情報はそれで済ませ、当該地方の情報を充実させるものではないだろうか。
ただ、「紙面に掲載した上毛新聞社(前橋市)、静岡新聞社(静岡市)、秋田魁新報社(秋田市)に賠償を求めていた」から、これら3社以外には載らなかったのだろう。となると、各地方紙が選択したという結果と言え、一審の「「通信社の配信という理由だけで、記事が真実だと信じる理由があったとはいえない」」というのにも、それなりの理由があるものだ、と思った。
裁判所の判断は難しいものだ、と改めて感じた次第。