2013年5月29日1時57分から、東日本放送で放送された（だから、地域によって放送時間は異なる。首都圏では、火曜日の（月曜日深夜）3時10分（頃）から。テレビ朝日HP「テレメンタリー」（http://www.tv-asahi.co.jp/telementary/
）参照）、「テレメンタリー2013 自衛隊ヘリ放水の謎～日米同盟最大の危機」（「“3.11”を忘れない」というシリーズの34回目らしい。テレビ朝日制作。以下「テレメンタリー」と表記）を観た。はっきり言ってトンチンカンな問題意識で、観て損をした。以下、内容と感想を示す。
まず内容。東京電力福島第一原子力発電所の事故は、いわゆる日米同盟最大の危機だった、という話。メルトダウンが予想される中（アメリカは予想し、半径80㎞の範囲に避難勧告を出した。ただ、「テレメンタリー」では、後に日本の判断が妥当だったとアメリカが認めたということは触れていない。YOMIURI ONLINE「米の８０キロ避難勧告は「仮定に基づく判断」」（2011年4月9日0時37分。http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110409-OYT1T00073.htm
）参照。ただ、その当時のアメリカの判断を非難する趣旨ではない）、日本の事故対策は、霧状の水をかけるという稚拙（「テレメンタリー」の内容から判断）なものだった。アメリカは支援を申し出、情報を求めたが、日本政府は支援の申し出を断ってしまう（「テレメンタリー」を観て、清高が「断ってしまう」と表現）。アメリカは日本が情報を出さないとして不信感を募らせる（そこで前述の、日本政府の発表とは異なる、半径80キロメートルの範囲に避難勧告を出した）。そこで、アメリカ軍は、自衛隊に英雄的犠牲を求め、日本政府は自衛隊に、ヘリコプターからの放水をすることを決断する。しかし、自衛隊には、原発事故に対応するノウハウはなく、被曝によるいのちの危険に晒された。そして、その放水は、本来は地上からの放水の後にヘリコプターでやる予定だったが、当時の菅直人内閣が、米に対するアリバイ作りやパフォーマンスのために（放水後すぐにバラク・オバマ大統領に電話をかけた）やったのではないか、と「テレメンタリー」は疑問を呈する。その証拠に、ヘリコプターからの放水作業は、その後、ただの1度も行われていない。
「テレメンタリー」としては、菅直人内閣の稚拙な対応で、自衛隊員は命の危険に晒され、いわゆる日米同盟はピンチにさらされ、何の役にも立ってない対応で資源を無駄にした、と言いたかったのだろうが、肝心なところを無視し、なおかつアンフェアで、ダメなドキュメンタリーとなってしまった。
（以下は「アンフェア」なところ、のつもり）ただ、だからと言って、緊急時に、アメリカの支援を受けるべきだったかどうかは、難しい。民間企業が原発を動かしているわけだし、国内にも専門家がいる。まずはそれらを使うのは、誰の政権でも当然だろう。
ケビン・メアさんは「日本は傲慢だ」（「テレメンタリー」より）と言っていたが、私に言わせると、そんな気持ちでは、相手は支援を受け取ってもらえないだろう。アメリカも焦燥感はあったのだろうが、支援を受け取ってもらえるような工夫が欲しかった。ただ、アメリカの支援でも解決したかは「テレメンタリー」でも分からないので、菅内閣の対応がまずかった、と軽々に断言できず、この点でも「テレメンタリー」は、ダメ作品であった。
菅政権の当時の閣僚も、日本の主権（この場合、対外的に独立である、という意味）が侵害されることを慮り、自衛隊員や住民の命を蔑ろにした、と、観た人の中には評価する人もあろう。もちろん、人の命や生活は大事である。しかし、だから日本がイニシアチブを握らないという姿勢を見せれば、内外に混乱をもたらすことぐらいは容易に想像できる（選挙も難しかった(「選挙をね する状況じゃ ないんだよ」（http://blogs.yahoo.co.jp/kiyotaka_since1974/52105962.html
）をご一読）。だから、菅政権の対応た絶対にまずい、と言うのは躊躇する。
結局、福島第一原発事故にどう対応すればよりダメージを防げたのか、アメリカのノウハウは何か、を「テレメンタリー」は示さなかったので、アメリカ善、菅直人政権悪、という、極めてバカげた視点しか出せず、観るだけ時間の無駄だった。当時の政権中枢にも話を訊いたのに、自衛隊のヘリコプター放水にも及ばない（放水は判断保留、「テレメンタリー」はダメ）内容のドキュメンタリーしかできないテレビ朝日って、何なんだろう?
