清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

色丹を 開発せぬなら 巧いよな

DVDレコーダーに溜めていたドキュメンタリーを最近観たので紹介する。

 
2013年10月29日0時40分からNHK総合でやっていた、「地方発ドキュメンタリー ロージナ(ふるさと)~北方領土色丹島のロシア人」(以下、「番組」と表記)を観た。
 
いわゆる北方領土の中で国後島択捉島はそれなりに開発が進んでいるらしいのだが(番組では見られなかったので)、色丹島は開発が遅れており、人々の生活も苦しい。それゆえか、日本との連携を模索する人もいる。番組では色丹島に住んでいるロシア人を取材し、色丹島在住のロシア人の考えや、日本人とのビザなし交流の模様などをおさめている。
 
まず番組を見て真っ先に思ったのは、ロシアってしたたかだなぁ、ということである。日本に返還するかもしれない色丹島は後回しで、国後島択捉島を優先的に開発するのだから。もっとも、国後島択捉島の模様が番組にないので断言はできないが。
 
日ソ共同宣言の原文は見ていないが(この点につき批判甘受)、外務省HP「日ソ・日露間の平和条約締結交渉」(平成22年(2010年)2月。http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/hoppo_rekishi.html
)によると、「歯舞群島及び色丹島を除いては、領土問題につき日ソ間で意見が一致する見通しが立たず」、「日ソ共同宣言で合意された歯舞群島及び色丹島の引渡し」とある。それではなぜこの2島だけ「一致」(外務省HPより)したのか?そのときに生きていないのでわからないが、国後島択捉島南千島なので現在のロシアに引き渡すことがほぼ決まっていたのだという(この部分は番組ではなく、孫崎享『戦後史の正体』(創元社、2012)p169~172を参照)。こういうこともあってか、北方領土2島先行返還論もそれなりに有力だと、孫崎の本を読んで感じた次第。そして返すつもりの島より返さない島を優先して開発するロシアのしたたかさも。
 
番組の紹介に戻ると、1994年の北海道東方沖地震において、色丹島にはロシアからの支援がなかったという。このような状態だと「ロシアでも日本でも構わない」(番組内でのロシア人のコメント)と思うのも頷ける。愛国心を持ってほしかったら、可能なかぎり充実した行政サービスを提供すべきだろう。
 
言うまでもないことだが、色丹島のロシア人もいろいろな人がいる。日本との経済連携を模索する人、日本人と暮らすのは絶対にイヤだという人、領土問題が解決しないほうがロシアからの援助があっていいと思う人。現地のロシア人の複雑さもわかり、有益な番組だった。
 
*文中敬称略