読者の皆様ご存知のとおり、朝日新聞は、慰安婦問題における、いわゆる吉田証言、すなわち、済州島で朝鮮人を慰安婦にするために強制連行した、という吉田清治(以下も本エントリー敬称略)の証言を「虚偽だと判断し、記事を取り消し」(朝日新聞デジタル(本エントリーにおける番号①「「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断」(2014年8月5日5時。http://www.asahi.com/articles/ASG7L71S2G7LUTIL05N.html)
た。
その一方で、朝日新聞(デジタル)は「慰安婦問題の本質 直視を」(2014年8月5日5時。以下②。http://www.asahi.com/articles/ASG7X6753G7XUTIL053.html)
だの、「慰安婦問題 核心は変わらず」(2014年8月28日3時。以下③。http://www.asahi.com/articles/ASG8W4CPWG8WUTIL01N.html)
だの、一見開き直りのような記事も載せている。
しかし、ざっと読んだ限りでは、②、③、何も問題ない。当ブログ「慰安婦の 証拠は結構 あったよう」(http://blogs.yahoo.co.jp/kiyotaka_since1974/53571968.html)
、ならびに『日本軍「慰安婦」問題 すべての疑問に答えます』(合同出版、2013。http://www.godo-shuppan.co.jp/products/detail.php?product_id=403)
とも、アジア女性基金のサイト(www.awf.or.jp)
の内容とも矛盾しない。つまり、朝日新聞が虚偽と認めた吉田証言など、とっくの昔に誰も信用していないのである。
ところが、ワック出版『月刊 WiLL』2014年10月号(内容はhttp://web-wac.co.jp/magazine/will/
)をはじめ、大騒ぎである。
しかし、この大騒ぎ、ホロコースト否定論の理屈と似ている。
マイクル・シャーマー『なぜ人はニセ科学を信じるのかⅡ』(ハヤカワ文庫NF、2003。http://www.books.or.jp/ResultDetail.aspx?IdString=5304541&scode=&searchtype=0&title=%83j%83Z%89%c8%8aw&writer=&syuppansya=%91%81%90%ec&showcount=20&startindex=0
も参照(Books.or.jpの検索にあるので絶版ではない))p186によると、「ホロコースト否定論の方法論」(同書p185)の1つが、「対抗する主張の主たる学者たちが犯した失策を利用し、相手の結論が少しばかりまちがっていたからという理由で、その結論は『まったく』のまちがいだとほのめかす。否定論者は、人間石鹸にまつわる噂が、実は作り話だと判明したことにふれ、歴史学者たちがアウシュビッツでの死者数を四〇〇万から一〇〇万に減らしたことを理由に、『信じられないほど規模が小さくなったホロコースト』について話す」とある。
今回の朝日新聞における吉田証言を誤報と認めたことにつき、それを批判する側は、吉田証言(済州島での朝鮮人強制連行。引用した『なぜ人はニセ科学を信じるのかⅡ』の「人間石鹸」に似ている)だけを問題とすることによって、慰安婦問題自体がなかったかのように主張しているように思えるが、吉田証言以外の慰安婦問題が否定されているわけではない。ついでに加えると、『なぜ人はニセ科学を信じるのかⅡ』p187を見ると、「たとえ供述の中にそういったもの(「強要されたものであり、ニセの、不正なもの」(p187)。清高補足)があると否定論者(ホロコーストの。清高補足)に証明できたとしても、それですべての供述も同じだということにはならない」とあるが、ひとつの証言が不正だから他の証言も不正とはならないのは、今回の吉田証言、慰安婦の件も同じである。