慰安婦問題における「日韓両外相共同記者発表」(いわゆる「慰安婦合意」。平成27年(2015年)12月28日。外務省HPより)
が発表されてから5年。というわけで、最近、それを題材とした社説が一部新聞社から出されているので、検討する。
①産経新聞2020年12月28日社説「「慰安婦合意」5年 韓国は約束破りを改めよ」
②毎日新聞2020年12月28日社説「慰安婦合意から5年 生かせなかった外交成果」
③読売新聞2020年12月29日社説「慰安婦合意5年 「不可逆的解決」が骨抜きとは」
(50音順。なお、朝日、東京、日本経済、各新聞の社説は発見できなかった)
「検討する」と書いておきながらナンだけど、ざっと見たところ、上記3新聞が無視している情報がある。以下に示す。ソースは日本経済新聞。
④「慰安婦合意の見直し勧告 国連委、日韓両政府に」(2017年5月13日1時52分)
⑤「慰安婦問題、持続的解決を 国連委」(2018年8月31日11時55分)
まず④によると、
国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会は(2017年8月。筆者補足)12日、韓国に対する審査報告書を発表し、従軍慰安婦問題を巡る2015年の日韓合意について「被害者への補償や名誉回復、再発防止策が十分とはいえない」と指摘、両国政府に合意見直しを勧告した。
とのこと。
次に⑤によると、
国連人種差別撤廃委員会は(2018年8月。筆者注)30日、今月中旬に実施した対日審査の報告書を公表した。旧日本軍の従軍慰安婦問題で、被害者中心の取り組みにより持続的な解決を図るよう日本政府に勧告した。
(略)
慰安婦問題への勧告では日本側に「元慰安婦らの人権を侵害した責任を認める」ことも求めた。
(略)
審査では日本政府代表が慰安婦問題について、15年の合意を「最終的解決」とし、合意履行を進めると説明した。しかし、複数の委員が「日韓合意には被害者目線に欠くとの指摘もあり、問題解決にならないのではないか」と疑問を投げ掛けていた。
勧告に法的拘束力はなく、日本政府にとって従う義務はないが、韓国の文在寅政権は日韓合意で問題は解決しないとして誠意ある対応を要求しており、日韓の新たな懸念材料となる恐れもある。
(以下略)
とのこと。
産経、毎日、読売各紙社説は何ら言及していないが、なぜ言及しないのだろう? 「日韓両外相共同記者発表」(「慰安婦合意」)は批判にさらされており、日本政府が誠実に対応していないとも言えるのだ。そのような客観的状況を無視して韓国を一方的に責めても的を射ていない。
というわけで、慰安婦や韓国が関わる問題について、日本の新聞を信用してはいけないというのが、残念ながら教訓のようだ。せいぜい日本経済新聞電子版に掲載された勧告くらい批判してみろよ。