ニッポン放送に、「ゴッドアフタヌーンアッコの いいかげんに1000回」という番組がある*1。聴いてもいないのに、また、それだけでも申し訳ないのに、タイトルまでパクって*2、本当に申し訳ありません。だって、後述する『週刊新潮』の高山正之さんの連載、「変見自在」が、2022年9月1日号で、本当に1000回なのですから。
聴いてもいない(申し訳ない)ラジオ番組まで出してしまったが、本題。『週刊新潮』の高山正之さんの連載、「変見自在」#1000(第1000回。p.138。以下、ページ数を略す)は、事実に基づかずに時事評論をしているようなので、引用しつつ問題視してみたい。
といっても、「新聞を支配する」というタイトルとあまり関係ない。すなわち、高山さんの文章の主旨は「産経新聞と朝日新聞と毛沢東東支那*3の関係はジャンケンのグーチョキパーに似」ており、朝日新聞が産経新聞より強いのは電通が絡んでいるという話である。
その後、電通が2002年のサッカーワールドカップKOREA/JAPAN*4を仕切って日韓共催にしたのだが、そのことについて以下のような記述をしている。
かくてW杯は共催になったが、韓国にはやはり無理だった。彼らは審判を買収し、対イタリア戦ではマルディーニの頭を蹴っても無罪にし*5、トッティにはレッドカードを出させて韓国が勝ち進むという悪夢のW杯を演出した。
もし審判を買収したのであれば、大韓サッカー協会*6に何らかの制裁があると思われるが、寡聞にして聞いたことがない。
実際はどうなのか。『Number Web』「セリエAダイレクト・レポート 〈W杯史に残る誤審劇〉韓国vsイタリアから20年…「レフェリー人生最高の試合の1つ」忌み嫌われた審判モレノが認めない“2つのミス”」*7(弓削高志・著。2022年6月18日11時)
によると、バイロン・モレノさんがモレノが「日韓W杯の『韓国対イタリア戦』を裁いたレフェリー」なのだという。ウィキペディア「バイロン・モレノ」
を読んでみると、
2002年9月13日、FIFAはイタリアサッカー連盟 (FIGC) から調査要請を受けていた2002 FIFAワールドカップ韓国対イタリア戦での誤審とさらに前述のエクアドルリーグセリエA(1部リーグ)のLDUキト対バルセロナSC戦で長いロスタイムをとった件についてモレノの調査に乗り出した。
2003年1月、FIFAは調査の結果、2002 FIFAワールドカップでの同審判の規律違反はなかったと発表した。
とのこと。買収されていたという旨の文章は、ない。
前述の「セリエAダイレクト・レポート」には#2という続きがあり*8、その2ページ目によると、
2015年、FBIによる「FIFAゲート」捜査で大量の逮捕者が出たとき、日韓大会での試合操作疑惑も再燃した。
捜査資料を入手したイタリアのメディアは、調書の内容から、韓国対イタリア戦の第4審判だったモロッコ人審判ムハンマド・ゲザスが、当時のFIFA会長ヨゼフ・ブラッターと副会長鄭夢準の命を受けたアフリカサッカー連盟会長イッサ・ハヤトウの送り込んだ“現場のお目付け役”で、主審モレノと2人の線審に韓国有利の判定を下せと圧力をかけていた疑いがあると報道した
とあるが、買収の根拠を発見できなかった。「モレノが嘘をついている可能性は否定できない」(#2 p.2)としても、買収なり圧力なりの証拠を何ら示していない。弓削高志さんというライターは事実認定の基本も知らないようで、もし圧力があったというなら独自でもいいから説得力のある証拠を提示してほしい。
あとは読者の調査にも任せるが、筆者の調査の限り、現時点では、バイロン・モレノさんが買収されただとか、圧力を受けただとかの決定的な証拠はないとせざるを得ない。もちろん、今後決定的な証拠が出る可能性はあるが。
人様に根拠を求めておいて矛盾することを承知で書くが、2002年ワールドカップの韓国vsイタリア戦の話は、明らかな誤審という面もあるだろうが*9、(ヨーロッパ人が、アジア人の韓国ごときに負けるなんてありえない!)という、ヨーロッパ人におけるアジア人差別が背景にあるというのは気のせいか。読者としては、現時点では買収や圧力がないという理解をし、あると思ったら自分で調べて証拠を提示するしかないと思った方がよい。
高山さんの文章に戻るが、挙句の果てには以下のことを書いている。
しかし実際はあの後ホワイト国を利用した犯罪がばれた。「やればできる」を勘違いしているのは確かだ。
この部分の意味がよくわからない。もしかして、以下に紹介するブログの話じゃないでしょうね?それは、あいこ ⚾️ HJ(@areareararerere)さんのブログ『ネトウヨの寝耳にウォーター』「『ホワイト国除外』の件、韓国に完全論破されてしまう」(2021年7月11日6時)
にある「4.不適切な事案?」である。韓国政府が摘発したものを「犯罪がばれた」(高山正之「変見自在 #1000 新聞を支配する」)としているわけじゃないよね?
高山正之さんについては、以前、「妄想で 本出している ビジネス社」
https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/entry/2021/12/31/214228
でも取り上げたが、ハングルを読む気もないと自白しているのに韓国について記事にしているのは滑稽である。しかし、事実とは言えないことを事実のように書いて、かつての関東大震災の時のように朝鮮人を虐殺するような事態に発展しないとは言えないので、今回の高山さんの記事や、弓削高志さんが書いた「セリエAダイレクト・レポート」のような記事は、日本のためにも警戒しなければならない。
*1:番組HPのアドレスは、
*2:コトバンク(デジタル大辞泉)「ぱくる」の2、または3の意味で用いる。
*3:「支那」は、日本人が使うと差別語と筆者は認定するが、引用なのでそのまま用いた。当ブログ「ジャズとシナ 実は似ている 言葉かな」をご一読。
https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/entry/2022/07/29/224211
*4:一部FIFAホームページの表記を採用した。右記アドレスから。
https://www.fifa.com/fifaplus/en/tournaments/mens/worldcup
*5:一発レッドカードにしなかったということ。
*6:当時の名称は調べていないが、現在の名称と思われるものを表記。東アジアサッカー協会HPの表記に従う。
*7:筆者の目視では第385回である。
*8:アドレスは、
https://number.bunshun.jp/articles/-/853617
*9:映像をチェックしていないので。明らかな誤審を前提とし、映像をチェックしなくても、本エントリーの趣旨に影響はないと判断した。