筆者がインターネットに接すると、一般社団法人Colabo*1の話題が過熱している印象がある。
その火付け役が、暇空茜(Twitterアカウントは@himasoraakane)*2ということで、デイリー新潮が特集している。題して、「『Colabo問題』追及で7000万円の支援金を集めた男性が独占告白『これはネット界におけるウクライナVSロシアの戦争です』」(2023年1月6日)。
注目すべきは、デイリー新潮の上記記事の3ページである。以下、引用する。
そんな暇空氏がフェミニスト界隈と対決姿勢を強めるきっかけとなったのが、「宇崎ちゃん騒動」だった。19年に日本赤十字社が献血ポスターとして採用した漫画「宇崎ちゃんは遊びたい!」のイラストに対し、女性差別問題について活発に発信することで知られる太田啓子弁護士が「環境型セクハラ」などと批判を展開。それに対し、漫画オタクたちが中心となって「表現の自由の侵害だ」と反発した騒動だ。批判を恐れた一部の献血ルームではポスターを撤去する事態になった。太田氏は暇空氏を訴えた弁護団の一員でもある。
「僕は漫画が大好きなんで、この作品を燃やす行為にすごくムカつきました。性的な表現だと批判すること自体は、個人の自由だと思う。けれど、漫画家が一生懸命作り出した作品に泥をかぶせ、排除しようとするのは行き過ぎです。漫画文化の未来を閉ざそうとする攻撃を許すわけにはいかないと思った。そして、今年5月に立ち上げたYouTubeチャンネルでまずこの問題を取り上げ、作品潰しに動いていた人物のウソを暴くなど調査を始めました」
その活動をあらかた終えた後、次なるターゲットとしたのが仁藤氏だった。仁藤氏は、同じくイラストが問題視された「温泉むすめ」批判の急先鋒だった。「温泉むすめ」とは日本各地の温泉地を美少女キャラクター化し、アニメーションや漫画、ゲームなどのメディアミックスが展開したプロジェクトで、観光庁も後援している。仁藤氏はそのイラストや紹介文に対して、「性差別で性搾取」などとTwitterで批判していた。
「僕は温泉むすめのファンではありません。ただ、宇崎ちゃん騒動と同様に、仁藤さんは作品に対して一方的に自分たちの倫理観によって、悪と決めつけ断罪して攻撃してきた。仁藤さんの批判によって、温泉むすめの運営会社は『スポーツ文化ツーリズムアワード2021』の表彰を辞退までさせられたのです。あのやり方は魔女狩りのレベルです。あれを見て、じゃあ、あなた方がやっている事業は後ろ暗いところはないんだろうな、徹底的に調べあげてやると覚悟を決めた。それでColaboの運営や会計についての調査を開始したのです」*3
もちろん、太田啓子が「『環境型セクハラ』」と言ったとすれば*4問題である。たいていセクハラことセクシャル・ハラスメントというのは、職場や学校といったある種の関係性のあるところで問題になるからである*5。隠喩といえるかもしれないが。
しかし、暇空茜の動機はいただけない。献血ルームも温泉むすめの運営会社も批判が一理あると思っただけのことだろう。どちらも批判を無視することができたのにもかかわらずそれに応えたわけだから*6。太田であれ仁藤夢乃であれ、漫画を描くこと自体を禁止しているわけではないし、その力もない。
実際の監査結果は、おそらくこちらと思われる。
https://www.kansa.metro.tokyo.lg.jp/PDF/08jumin/4jumin/4jumin5.pdf
請求人のほぼ完敗である。
4(3)ア(履行)*7「後述のとおり一部疑義があるものの、法人Aが本件契約に定められた委託内容を履行していないといった特段の事情は認められない。」、
ウ 請求人の主張について
(ア)(宿泊支援費)「本件活動報告書に基づいて宿泊数を過大に請求しているとする請求人の主張は妥当でない」、
(イ)(車両関連費)「車両関連費に係る本件経費は(表3)のとおりであり、新たなタイヤやドライブレコーダーの購入、月6万円の駐車場の賃借については本件経費に計上されてなく、一方、月極駐車場代やタイヤ交換費用(冬用タイヤへのいわゆる履き替え)、また本件実施状況報告書に記載されていないが車両に積載する備品類の購入等が計上されていることは確認ができることから、請求人の主張は妥当でない」、
(ウ)(旅客交通費)「本件実施状況報告書ではガソリン代、移動交通費の内訳の記載はないものの、実際に要したガソリン代や移動交通費を本件経費として計上していることが確認されることから、試算に基づく請求人の主張は妥当でない」
(エ)(通信運搬費)「通信運搬費に係る本件経費は(表3)のとおりであり、携帯電話代を本件経費に計上していることが確認はできる。なお、本件事業所要額内訳の合計額は誤記である」
(オ)(会議費)「会議代などを本件経費に計上していることは確認できるため、本件活動報告書を根拠とする請求人の主張は妥当でない」
(カ)(各種保険)「各種保険に係る本件経費は(表3)のとおりであり、法定福利費などを本件経費に計上していることは確認できるため、本件活動報告書を根拠として過大申告とする請求人の主張は妥当でない」
(キ)(医療費)「本件活動報告書で支援があったとする医療費とは別の実際の医療受診費用等を経費に計上していることが確認できるため、医療費が不正に請求されたものであるとする請求人の主張は妥
当でない。」
(ク)(人件費)「税理士、社労士報酬を本件委託料に含めるべきではないとする請求人の主張の一部には理由がある」
(ケ)(実施状況報告書の信憑性に関する主張)「法人Aの自主事業も含む本件活動報告書と本件委託に係る都に提出した実施状況報告書との差異を述べるにとどまり、本件実施状況報告書に不正があることの合理的な疎明はなされておらず、請求人の主張は妥当でない」
0.5勝8.5敗くらいか。なお、4エ「監査対象局からの説明聴取及び提出のあった領収書等の関係帳簿の調査、関係人調査によって検証した」ところには「不適切な点」や「妥当性が疑われるもの」といった記述があることも付記しておく。
Colaboに問題はあるかもしれないが、暇空茜のやっていることは応援できないな。「最高裁まで争い6億円をゲット」*8した成功体験が忘れられないのも動機の一つなのだろう。献血ルームや温泉アピールに女性性をアピールするキャラクターを用いることは何ら問題ないとフェミニストを説得しないと、現状は変わらない。
*1:サイドのアドレスは
https://colabo-official.net/ 。なお、本稿はColaboの宣伝ではないので注釈でサイトのアドレスを記した。
*2:本稿も、個人も団体も敬称略。
*3:「『Colabo問題』追及で7000万円の支援金を集めた男性が独占告白『これはネット界におけるウクライナVSロシアの戦争です』」3ページ目。
*4:ブログアップ時点で未確認だから。
*6:ブログアップ時点で、太田や仁藤の犯罪が認定されたという事実がないので。
*7:以下においても一部を引用するにとどめる。
*8:「『Colabo問題』追及で7000万円の支援金を集めた男性が独占告白『これはネット界におけるウクライナVSロシアの戦争です』」2ページ目。