清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

反対を しなきゃ議論は 深まらず

 自由民主党ヨイショのうわさが絶えない読売新聞が、社説でやらかしてくれました。題して、「代表質問 反対ばかりでは議論深まらぬ」(2023年1月16日)。

www.yomiuri.co.jp

 

 のっけからこうだもの。

 野党第1党が政府の方針に反対するだけでは、議論は深まらない。現実的な対案を示し、政策論争を挑むべきだ。*1

 

 違うって。批判というか、反対すべき時はするのが野党の仕事である。筆者が以前書いた「『批判するな 対案を出せ』 なぜ悪い?」をご一読。

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

 

 日本周辺の安全保障環境の悪化を踏まえ、防衛費を増額するのは妥当だ。防衛費は恒常的な経費であり、財源を確実に確保しようという首相の姿勢は評価できる。*2

 

 社説だからやむを得ないが、具体的に何だろう? そもそも安全保障環境が悪化しているとすれば、既に日本に何らかの損害が発生しているはずだが、寡聞にして聞かない。また、そもそも防衛費を増額するのが妥当かも問題である。防衛費は直接国民の生活を豊かにするわけではない。費やさないのであればそれに越したことはない。

 

 泉氏は増税に反対するなら、日本の安全を守るのに必要な防衛費の規模や装備体系を、具体的にどうすべきだと考えているのか。*3

 

 泉健太立憲民主党代表の主張はわからないが、現在でも守れているのにわざわざ防衛費目的で増税する必要はない。また、それは泉健太がやることではなく、政権与党が示すべきであるが、その理由が明らかでない*4のが問題なのである。

 

 防衛力強化の柱は「反撃能力」の保有だ。泉氏は、相手が攻撃に着手した時点で反撃できるという政府の見解について、「国際法違反の先制攻撃にならざるを得ず、反対の立場だ」と述べた。

 政府は、相手国がミサイルに燃料を注入した場合などを、攻撃の「着手」として、武力行使が可能という立場をとってきた。反撃能力の行使についても、こうした従来の見解を踏襲している。

 反撃能力の要件を過度に制約すれば、抑止効果は低減しよう。反撃能力の保有が先制攻撃につながるから反対だと言うのであれば、相手国からの攻撃にどう対処すべきか、考えを示すべきだ。*5

 

 社説を見ると、日本政府は、「相手国がミサイルに燃料を注入した場合」も「攻撃の『着手』」とするようである。しかし、これを正当化できるかは疑わしい。ミサイルに燃料を注入しているにすぎない場合が果たして「武力攻撃がまさに行われようとしている」*6かは微妙だと思う*7。加えて、反撃能力を備えるということは、武力行使した国の領域を攻撃することになるが、これを持っても持たなくてもと言っていいほど、状況は変わらないわけで、そもそも持つべきかが疑問だからである*8

 

 野党側は紋切り型の反対論、政府側も型通りの答弁ではなく、課題解決に有効な方策を示し合い、建設的な論戦を展開してほしい。*9

 

 紋切り型とは、「きまりきった型。かたどおりで新味のないこと」のことだが*10、もしそういうことがあるとすれば、政府の「型通りの答弁」*11の方が問題の可能性が高い。野党の反対等を受け付けていないからである。もちろん野党が必ずしも正しいわけではないが、「紋切り型」*12と批判しても始まらないのである。

 

 読売新聞が自由民主党をヨイショするのはわかりきったことだが、自由民主党政権の主張の吟味もせず、野党のみが間違いであるというのは、自由民主党政権の主張の根拠が薄弱であるから、説得力がない。

 

 

*1:読売新聞2023年1月26日社説「代表質問 反対ばかりでは議論深まらぬ」。

*2:同前。

*3:同前。

*4:私見。もちろん、現在の日本の安全保障環境が悪化しているというのであれば、コメント欄で受け付けるので、根拠とともに描いてほしい。

*5:「代表質問 反対ばかりでは議論深まらぬ」

*6:国際法[第5版]』(有斐閣Sシリーズ、2007)p.293。

*7:これだけではどこに向かって撃つかがわからないから。私見

*8:抽象論になってしまっているが、日本国になってから、反撃能力はなかったとして、その状況下でも、ただの1国も日本に対して武力行使をしていない。仮に反撃能力を備えていても、必要性(後述の要件②)が満たされる場合がほぼない(私見)からである。なお、芦部信喜憲法学Ⅰ 憲法総論』(有斐閣、1992)p.263 によると、自衛権の発動が正当化されるのは、「①外国から加えられる侵害が急迫不正であるという違法性の要件、②侵害を排除するためには一定の防衛行動をとる以外に他の手段も熟慮の余裕もないという必要性の要件、③自衛権の発動としてとられた防衛措置が加えられた侵害を排除するのに必要な限度で過剰なものではなく、つり合いがとれているという均衡性の要件、の三つが必要であるとされる」とのこと。

*9:「代表質問 反対ばかりでは議論深まらぬ」

*10:コトバンク「紋切り型」(

https://kotobank.jp/word/%E7%B4%8B%E5%88%87%E3%82%8A%E5%9E%8B-647144

)の、デジタル大辞泉の解説による。

*11:「代表質問 反対ばかりでは議論深まらぬ」

*12:同前