自由民主党ヨイショと思われている読売新聞が、またやらかしてくれました。題して、「国家公務員離れ 政治の劣化が招く『官』の負担」(2023年2月16日5時)。
以下、引用しつつ検討する。
野党は、首相や閣僚のスキャンダルの追及や、発言の揚げ足取りに終始しがちだ。答弁を準備する官僚は、枝葉の部分にまで気を配らねばならず、負担は大きい。*1
それは、おそらく世界中のどこでもそうなわけで、野党に問題はない。時事ドットコム「イタリア元首相 ベルルスコーニ氏 写真特集」の下記アドレスをまずはアクセスしてください。
https://www.jiji.com/jc/d4?p=ber452-jlp05013224&d=d4_topics
上記アドレスの記事によると、「2009年10月にベルルスコーニ氏が『知的というより可愛い女性』と評したイタリアの女性政治家、ロージー・ビンディー氏」とあるが、ビンディはイタリアの民主党・PD に所属しており、ベルルスコーニ大統領(当時)と対立した立場でスキャンダルを追及しているのである*2。
また、季刊現代の理論「特集●混迷の時代が問うもの 『トランプ弾劾』へ急展開 『ウクライナ疑惑』と『シリア撤収』で」(金子敦郎。2023年2月18日アクセス。
http://gendainoriron.jp/vol.21/feature/kaneko.php )によると「まず『ウクライナ疑惑』と呼ばれるトランプ・スキャンダルの浮上。民主党は9月24日トランプが米国大統領に相応しくないとして解任につながる弾劾調査に取り掛かった」とあるから、野党が与党のスキャンダルを追及するのは普通のことである。
それでは読売新聞社説に戻る。
政治主導をはき違え、野党が「ヒアリング」と称した会合で、官僚を高圧的な態度で問い詰めるケースも少なくない。「官僚いじめ」のような場面が報道された結果、国家公務員の仕事に魅力を感じなくなった人も多いはずだ。*3
とあるが、事情をわきまえないで内閣や官僚を庇うなよ、としか言えない。例えば朝日新聞デジタル「野党ヒアリング、やめたらアカン 辻元氏が語る野党共闘と『逆宣伝』」(細見卓司/室矢英樹。2021年12月5日 8時00分。
https://www.asahi.com/articles/ASPD35TCFPD2UCLV019.html
)によると、「(辻本清美・現参議院議員が。筆者補足)官僚を追及する場となってきた『野党合同ヒアリング』について「国会の開会要求をしても(政権が)開かない。"やめる"なんて言ったらあかん。あったほうがいい』と述べた」とある。また、平川エリ『読む国会』「野党合同ヒアリングとは何か ― 国会の代わりではないその存在意義とは」(2023年2月18日アクセス。
https://sirduke.hatenablog.com/entry/goudou-hearing )によると、「与党でも野党でもヒアリング自体はよく行われている」一方で、「野党合同ヒアリングが紛糾する」理由が「野党が要求する資料や調査がいっこうに進まない」ことであり、それが問題とされる。筆者が恣意的に選んだ2つの記事からは、野党合同ヒアリングが問題なのではなく、国会召集を決定しない内閣*4や、資料提出や調査に協力しない官僚が悪いという見方ができる。読売新聞社説の見解は一面的で駄目である。
質問通告の問題や国家公務員数の問題といった、読ませるところもあるが、自由民主党良し、それに反対する奴が憎しという、社説執筆者のホンネが出てしまったようだ。このようなアンフェアな社説が載ることを、筆者は「劣化」と呼びたい。というわけで、劣化したのは政治ではなく、読売新聞のようである。