後述のデイリー新潮の記事によると*1、事の発端は、日本共産党埼玉県議会議員団(@jcp_sai)が、2023年6月6日15時50分にしたツイートだという。
埼玉県営公園で女性の水着撮影会が行われます。未成年も出演するという情報については調査中です。城下のり子・伊藤はつみ・山﨑すなお県議は、本日、都市公園法第1条に反するとして、貸し出しを禁止するよう県に申し入れました。https://t.co/mbFYa9uHOz https://t.co/OtojtOm9N5
— 日本共産党埼玉県議会議員団 (@jcp_sai) 2023年6月6日
日本共産党埼玉県議会議員団HP「県営公園での過激な『水着撮影会』の貸出中止を埼玉県に求める」(2023年6月8日)
に詳しい情報があるので読んでみると、
6月24,25日に県営施設であるしらこばと水上公園において「水着撮影会」が行われます。(略)過去のイベントの動画をみると水着姿の女性がわいせつなポーズやわいせつなしぐさで映っており、明らかに「性の商品化」を目的とした興業です。県の担当者によると2018年からしばしばこのようなイベントが県営公園で行われてきたそうです。未成年も出演しているという情報もあります。都市公園法第1条には「この法律は、都市公園の設置及び管理に関する基準等を定めて、都市公園の健全な発達を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」とあります。今回の興業が都市公園の目的にふさわしいものとは到底考えられません。
(中略)
このような点から、
一、「水着撮影会」へのしらこばと水上公園貸し出しは中止すること。
一、県営施設を使用した「水着撮影会」が、これまで何回行われたのか。未成年が出演していなかったのか。女性の人権を侵すような取り組みがなかったか、調査すること。
一、県施設の貸し出し基準について、都市公園法や男女共同参画基本法に基づくものに改定すること。
などを申し入れています。
とのこと。
(ふ~ん)としか思わないが、これが騒動に。試みに、Twitterの検索窓で「水着 共産党」で検索した結果のURLを貼る。
https://twitter.com/search?q=%E6%B0%B4%E7%9D%80%E3%80%80%E5%85%B1%E7%94%A3%E5%85%9A&src=typed_query
筆者が(ふ~ん)としか思わなかったことがこれだけ注目されたのは、共産党が絡んでいるから、と思うのは穿ち過ぎか。仮に自由民主党の議員団が、青少年の健全育成を根拠に撮影会を批判したとしたらここまで燃え上がっていたのだろうか、という印象を受けた。
その中止された撮影会について、筆者が最初に目にした記事は、デイリー新潮「『開催2日前にいきなり電話で言われ…』共産党の申し入れで『水着撮影会』が中止に 騒動の裏側に迫る」(徳重龍徳。2023年6月9日)である。
はっきり言ってタイトルと内容が違うトンデモ記事だが、とりあえず最初にまとめたことに敬意を表して、以下、引用しつつ検討する。
これに続き*2埼玉県の公園を管理する公益財団法人「埼玉県公園緑地協会」は水着撮影会へのプールの貸し出しを禁止し、開催が差し迫っていた10日のフレッシュプール撮影会(川越水上公園)、11日のはまなる大プール撮影会(同)、10日に開催予定だったミスヤングアニマルオーディションセミファイナルプール撮影会(しらこばと水上公園)が相次いで中止を発表した。そして共産党が申し入れの対象とした近代麻雀水着祭も6月9日18時に中止を発表した。
とのこと。これは、日本共産党埼玉県議会議員団の主張に一理あるので、埼玉県公園緑地協会がそれを受け入れたということで、日本共産党埼玉県議会議員団は褒められることこそあれ、貶される筋合いはないうえ、ルールを変えた埼玉県公園緑地協会の責任だろう。
共産党が求めた中止理由について、法的な観点からも議論が起きている。弁護士の平裕介氏はTwitterで「『都市公園法第1条に反する』という理由で『貸し出しを禁止するよう県に申し入れ』をしたようだが、これは、同法1条の解釈・適用を間違った違法な申入れだと考えられる。不法行為の疑いもある権力者の暴走だろう」、同じく弁護士の戸舘圭之氏も「その論法でいけば下手すりゃメーデーとか赤旗祭りだってダメにされかねないですよ。。」と指摘した。
平祐介(@YusukeTaira)のツイートは、2023年6月8日23時24分。
日本共産党埼玉県議会議員団は、県営公園で開催予定であった水着撮影会の実施について「都市公園法第1条に反する」という理由で「貸し出しを禁止するよう県に申し入れ」をしたようだが、これは、同法1条の解釈・適用を間違った違法な申入れだと考えられる。不法行為の疑いもある権力者の暴走だろう
— 平 裕介 Yusuke TAIRA (@YusukeTaira) 2023年6月8日
連投では埼玉県公園緑地協会への批判ともとれるものもあるが、主旨は日本共産党埼玉県議会議員団への批判と見てよいだろう。
戸舘圭之(@todateyoshiyuki)のツイートは、2023年6月8日22時53分。
都市公園法1条を根拠に水着撮影会のための貸し出しを認めるなと言っていることの意味を本当に分かっているのでしょうか?
— 弁護士戸舘圭之【袴田事件弁護団】 (@todateyoshiyuki) 2023年6月8日
その論法でいけば下手すりゃメーデーとか赤旗祭りだってダメにされかねないですよ。。
戸舘も「赤旗祭り」を挙げているから、日本共産党に過剰反応しているとみてよかろう。憲法学の表現の自由の「自己統治」も知らない弁護士さんには頼みたくないわな。すなわち、この論法なら、水着撮影会より、メーデーや赤旗祭り*3の方が保護されるべきとなるからである。
2ページ目に移って。
ネット上で問題視もされている都市公園法の解釈については「主催者が公開している過去の開催動画を検討させていただき、非常にわいせつなポーズやわいせつなしぐさが多数含まれていた、と判断せざるをえない。加えて未成年が参加しているという情報の2つ。都市公園法第1条の『公園の健全な発達』『公共の福祉』にもとるのではという判断をした」という。
この部分が、日本共産党埼玉県議会議員団事務局の見解である。なお、筆者未調査だが、太田啓子弁護士(@katepanda2)によると、「3人の中学生が出演予定でした」とのこと。2023年6月9日5時26分のツイート。
これ、主催者のホームページからわかりますが、6/24,25に、少なくとも3人の中学生が出演予定でした。このうち少なくとも2人の中学生は4月に水着で撮影会の被写体となってました。
— 弁護士 太田啓子 「これからの男の子たちへ」(大月書店) (@katepanda2) 2023年6月8日
それに県営公園が会場を貸していたとは衝撃です https://t.co/HEzxb5Nfjy
なお、法務省HP「こどもの人権を守りましょう」(2023年6月11日アクセス。
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00107.html )によると、「インターネット上における児童ポルノの氾濫等、児童を性的に商売の道具にする商業的性的搾取の問題が世界的に深刻になっています」とのこと。また、コトバンク「児童ポルノ」(デジタル大辞泉の説明)
によると、「児童が関わる性的な行為等を視覚的に描写した画像」とのこと。水着がこれに該当するかは微妙だと思う。参考までに『法務省だより あかれんが vol.47』「児童ポルノ禁止法が改正されました!」(2014年。
https://www.moj.go.jp/KANBOU/KOHOSHI/no47/1.html )によると、「処罰の対象となる『児童ポルノ』であるかどうかが問題になりますが,質問にあるような写真であれば,通常,『殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているもの』とはいえず,また,『性欲を興奮させ又は刺激するもの』ともいえないと考えられます」とあるが、「質問にあるような写真」とは、「例えば,自分の子供の海水浴の際の水着姿の写真や,水着の写真が載っている小中学校時代の卒業アルバム」のことである。
それでは、デイリー新潮の記事に戻る。
プール撮影会の中止により、多数のグラビアアイドルから仕事を奪うなとの批判が上がっていることに対しては「こういうイベントすべてがなくなるべきだとは言っていない。あくまで県営公園であることを問題視している」と主張。撮影会の中止については、あくまで県および埼玉県公園緑地協会の判断であると強調した。
この部分は大事である。県営公園であることが問題である根拠も示しているし、埼玉県公園緑地協会の判断であることは何も揺らがないからである。違うというなら、日本共産党埼玉県議会議員団の主張がすべて通った証拠を出してくれ。
埼玉県公園緑地協会の担当者に話を聞くと、(1)の過激な衣装やポーズを禁止するルールは今年1月に決まり、(2)の未成年の出演にいたっては、それまでの利用規約に禁止する項目がなく、県民からのメールを受け、6月頭に急遽決まったものだという。
近代麻雀水着祭が①[原文ママ]に抵触すると思われる画像はネット上で見つかる一方で、近代麻雀水着祭は6月頭には開催されていない。つまり近代麻雀水着祭が過去に未成年を出演させていたとしても、その時点ではルールを破ってはおらず、そこを問題視するのは後出しじゃんけん、ゴールポストを動かしていることになる。
別に近代麻雀水着祭がルールを守っていたかの問題じゃないでしょ、(2)は。この利用規約を埼玉県公園緑地協会が決められるのであれば、文句を言えないと思う。
ここからは3ページ目。
とばっちりで中止に追い込まれた主催者はたまったものではない。
(中略)
なお損失の補填について、埼玉県公園緑地協会は「イベントの大小、準備の期間によって損害は変わるので主催者のヒアリング、顧問弁護士と相談し適切な対応はしていく」と取材に答えている。
そう。これは、主催者と埼玉県公園緑地協会の問題であり、埼玉県公園緑地協会がルールを変えたのは、日本共産党埼玉県議会議員団の主張に理があったからにすぎず、日本共産党埼玉県議会議員団が威力等を用いて埼玉県公園緑地協会の業務を妨害したわけではないので、日本共産党埼玉県議会議員団を問題視するのは筋違いである。
グラドルやアイドル、レイヤーなどが集い、出演が彼女たちの一つの目標となっていたプールでの大規模水着撮影会だが、その命は風前のともしびといえる。ルールを守っている団体すら開催を許可しないのであれば、はたしてそれは“健全”といえるのだろうか。
という文章で締めるが、これはポーズや未成年の問題をクリアしてからの話で、先走っている。
以上検討した結果、徳重龍徳の文章がおかしいことが明らかになったが、それに加えて、「共産党」の文字で思考停止してしまい、「共産党」だから拒絶するという、共産党フォビアの人の声が大きく、撮影会の問題*4が隠れてしまっているのが残念である。
*1:「『開催2日前にいきなり電話で言われ…』共産党の申し入れで『水着撮影会』が中止に 騒動の裏側に迫る」1ページ。
*2:日本共産党埼玉県議会議員団がホームページに発表したことに続き、くらいの意味だろう。
https://www.jcp.or.jp/web_download/bira/2014_1/pdf_5/41thmaturi-col.pdf
から。「考えよう!世界と日本のいま」がどう問題なのか説明してもらわないと。なお、他の部分は、一般常識として何の問題もないと読者でもわかると思う。
*4:もちろん、ルール変更が妥当かどうかも含めてだが、ポーズや未成年参加問題の方が肝心だと筆者は思っている。