朴槿恵・大韓民国(以下、「韓国」と表記)元大統領の自虐に惨たんたる*1気分にさせられたという話。
読売新聞オンラインに「朴槿恵氏が慰安婦合意を回顧、獄中で文在寅政権の対応聞き『言葉では言い表せない惨たんたる気分に』」(上杉洋司。2023年10月5日6時45分)
と題した記事があるので、以下、引用しつつ検討する。
日韓両政府が慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した慰安婦合意に対しては、韓国国内から左派を中心に強い批判が上がった。(中略)/回顧録によると、朴氏は挺対協に交渉経過を知らせて理解を求めるよう指示していたが、当時代表だった 尹美香(ユンミヒャン)氏(現在は無所属国会議員)は元慰安婦に合意内容を一切伝えていなかった
とのこと。
日本の場合、例えば朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に拉致された被害者家族と内閣総理大臣(首相)は面会するし*2、ハンセン氏病の被害者とも面会する*3。しかし、朴槿恵は、「『韓国 挺身隊問題対策協議会(挺対協=当時)』」*4の代表にしか会っていなかった、すなわち、元慰安婦に会っていなかったことになる。現在の韓国大統領・尹錫悦(ユンソンニョル)だって在日韓国人被爆者をソウルに招いたというのに*5。
後任で左派*6の 文在寅(ムンジェイン) 政権は、慰安婦合意に当事者の意向が反映されていないとして、事実上、白紙化した。
朴氏は文政権の対応を獄中で聞き、「言葉では言い表せない惨たんたる気分に包まれた」という。
慰安婦合意について、「一度合意したならば、必ず守らなければならない。国家間の合意は国際社会が見守っているからだ」と述べた。
とあるが、これもおかしい。
まず、慰安婦と会っていないという朴槿恵の自白を真実として、それならば、「慰安婦合意に当事者の意向が反映されていない」*7のは朴槿恵が悪いとしか言えない。
次に「慰安婦合意について」*8以下についてであるが、2017年5月12日に、韓国政府も「国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会」*9から「2015年の日韓合意」の見直しを勧告されている。日本経済新聞「慰安婦合意の見直し勧告 国連委、日韓両政府に」(2017年5月13日1時52分)
をご一読あれ*10。つまり、朴槿恵の見解は間違っている。国際社会は合意見直しを求めて(合意の遵守ではなく)見守っていたのである。
14年*11にドイツを訪問した際には、メルケル首相(当時)に「日本が第2次世界大戦中、韓国の女性を『性奴隷』にしたが、厚かましくも知らないふりをしている」と伝えたという。「問題の深刻さ」を印象づけるため、あえて「性奴隷」という言葉を選んだとも述べた
とのことだが、朴槿恵のオリジナルではない。例えば、1998年3月に財団法人女性のためのアジア平和国民基金が発行した、「女性に対する暴力―戦時における軍の"性奴隷"*12制度問題に関して、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査に基づく報告書―」*13において既に使われている。朴槿恵のアピールの意味は不明である。
慰安婦支援団体の代表に会うことで済ませ、国際連合の人権条約を根拠とする委員会の勧告を無視して、自慢とも取れる回顧をした朴槿恵に、筆者は「『惨たんたる気分』」*14を覚えるのである。
https://kotobank.jp/word/%E6%83%A8%E6%86%BA-514225
)の二.1の意味。
*2:「拉致被害者 首相 面会」でググった(Googleで検索した)結果は、
*4:読売新聞オンライン「朴槿恵氏が慰安婦合意を回顧、獄中で文在寅政権の対応聞き『言葉では言い表せない惨たんたる気分に』」の表現。
*5:この件を含め、「韓国大統領 被害者 面会」でググった結果は、
*6:読売語にすぎない。肯定的な表現と思われる「保守」の対義語のようだが、その対義語は「革新」のはずである。
*7:*4に同じ。
*8:*4に同じ。
*9:「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」(外務省HPに条文全文がある。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/gomon/zenbun.html
)第17条第1項を根拠として設置されている。なお、この条約は、日本も韓国も締約している。
*10:「国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会」、「2015年の日韓合意」は、日本経済新聞「慰安婦合意の見直し勧告 国連委、日韓両政府に」の表現。
*11:2014年のこと。
*12:筆者が強調した。
*13:
https://www.awf.or.jp/pdf/0031.pdf
*14:記事タイトルもそうだが、*4から拝借した。