まずは日本経済新聞2023年9月20日社説「国連は機能不全を脱し国際平和に貢献を」をご覧いただこう。
日本経済新聞の社説曰く、
国連は安全保障理事会の常任理事国として拒否権を持つロシアの専横で機能不全が続き、現状では国連憲章が掲げる「国際の平和と安全の維持」に役割を果たしているとは到底言えない。
(略)
安保理はこれまでウクライナ戦争に有効な対応策を示せてこなかった。その形骸化を改めて象徴したのが、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記がロシア極東での会談で話し合った軍事協力である。
とのことである。
上記はその通りだが、現実には、「アメリカの専横で機能不全」というのも起きている。NHK NEWS WEB「国連安保理 人道支援の戦闘一時停止など 米の拒否権で否決」(2023年10月19日13時36分)をご覧あれ。
国際連合安全保障理事会は、ハマスを非難し、戦闘の一時停止を決議することすらできなかったわけだ、アメリカの専横で。
ロシアの拒否権行使を非難するのは当たり前として、であれば、アメリカのそれも同様に非難するのは当たり前であろう。そういう意味では、日本経済新聞の社説より、朝日新聞や毎日新聞の社説の方が見識があるかもしれない*1。朝日新聞2022年4月20日社説「国連改革と日本 国際合意築く調整役に」
によると、
常任理事国のうち、1国でも拒否権を使えば採択されない。大国の横暴に歯止めをかける手立てを望むのは当然だろう。
今回の当事者はロシアだが、過去には米中英仏も拒否権を使ってきた
とあるし、毎日新聞2022年3月30日社説「ウクライナ侵攻 機能しない安保理 拒否権の制限に動く時だ」
によると、
今回浮かび上がったのは、5大国が紛争当事者になった場合には、安保理は無力だという現実だ。役割を果たせないまま人道危機が深まっている事態に、加盟国は不満を募らせている。
とある*2。アメリカを非難しない日本経済新聞2023年9月20日社説より素晴らしい社説であった。
なお、筆者は、国際連合安全保障理事会において拒否権の行使を制約するのは結構だと思うが、それより5大国が逃げ出さないことの方が大事だと考えている。従って、拒否権に関して現時点のようなありかたが動かなくても仕方がないと思っている。