清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

朴裕河の 説は意外と トンデモだ(リベラルと 言えば分かった 気になるか?(2))

「リベラルと 言えば分かった 気になるか?」

 

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

でも取り上げた、日本文学者の朴裕河(パク・ユハ)さんの話。

 

 今度は、東京新聞でも、朴さんの会見の模様を報じた記事が載っている。①「日韓の歴史問題、裁判で解決は正しいのか?元慰安婦らに告訴された韓国の教授『法によらない謝罪と記憶を』」(2022年9月12日12時)である。

www.tokyo-np.co.jp

 

 上記東京新聞の記事を、引用しつつ検討する。

 日韓の歴史問題を裁判で解決しようとすることは、果たして正しいのか―。そう疑問を呈してきた世宗(セジョン)大の朴裕河(パクユハ)教授(65)*1が8月末に定年を迎え、会見を開いた。彼女自身、慰安婦問題をテーマにした著書を巡って韓国で提訴され、法廷闘争が続いている。元徴用工訴訟などで葛藤が続く日韓の両国民に向けて「法に依存しなくても、謝罪と反省と記憶は可能だ」と呼び掛けた。(ソウルで、木下大資)(①)

 

 大丈夫か?権利侵害があるとされれば裁判で解決しようとすることは正しいに決まっているけど。

 

 慰安婦は日本の植民地支配下で女性が苦痛を受けた問題であり、「日本の謝罪と補償が必要」というのが朴教授の立場だ。ただ、日本による法的賠償を目指す団体が慰安婦問題を「戦争犯罪」や「不法行為」と見なすために実態以上に「強制連行」を強調したり、「朝鮮は日本と交戦状態にあった」などの論理がつくられたりした弊害を指摘してきた。韓国では、一般化した認識に沿わない慰安婦らの存在は無視されがちとみる。(①)

 

 私レベルではピンとこない見解だなぁ。むしろ「実態以上に『強制連行』を強調」しているのは、慰安婦の強制連行を否定している側だろう。『デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金』のホームページ内の「慰安婦にされた女性たち‐韓国」https://www.awf.or.jp/1/korea.html によると、

 日中戦争の過程で中国に進出した日本軍が設けた慰安所に、日本人の女性に続いて朝鮮人の女性が慰安婦として送り込まれました。戦争が太平洋・東南アジア地域に拡大すると、朝鮮人の女性はそこにも多く送り込まれました。

 朝鮮からは、まず「醜業婦」であった者が動員されたと思われます。ついで、貧しい家の娘たちが、いろいろな方法で連れて行かれたと考えられます。就業詐欺もこの段階から始まっていることは、 知られています。甘言、強圧など、本人の意思に反する方法がとられたケースについても証言があります

とのこと。オランダ人の強制連行のような話より広いのである。「慰安婦にされた女性たち‐オランダ」

https://www.awf.or.jp/1/netherlands.html をご一読。筆者の印象では、慰安婦の強制連行を否定する側が、オランダのようなことは朝鮮半島ではなかった、と言っているにすぎないのだが。

 

 問題への共通理解が不足したまま15年の日韓慰安婦合意が結ばれたため、韓国内で猛反発が起きたが、合意は「日本の謝罪と補償の試みだった」と朴教授は評価する。たとえ訴訟を通じて日本から賠償を受けられたとしても、「相手が納得しない賠償が記憶の継承につながるはずがない」と疑問を投げかけた。(①)

 

 これは朴さんより、記事を書いた木下大資さんの勉強不足だろう。「韓国内で猛反発が起きた」(①)だけではなく、日本が再三2015年日韓合意を見直すように勧告を受けているのが現実である。ウィキペディア慰安婦問題日韓合意」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%85%B0%E5%AE%89%E5%A9%A6%E5%95%8F%E9%A1%8C%E6%97%A5%E9%9F%93%E5%90%88%E6%84%8F

くらい読んでから書けよ、ということ。女性差別撤廃委員会、自由権規約委員会、拷問禁止委員会(韓国に対する最終見解)、人種差別撤廃委員会、以上4委員会から見直しが勧告されているのが現実なので、それを抜きにして合意に問題ないかのように書くのではフェイクニュースにすぎない。

 

 会見では元徴用工問題にも言及した。戦時中に朝鮮半島から大勢の人が動員され日本のために働かされた徴用は、現在被告となっている企業でなく、国家が主導したものだとして「重要なことは日本人が徴用の本質を理解し、記憶すること」と指摘。「日本側を含めた当事者で協議体をつくり、時間をかけて対話することが必要だ」と提案した。(①)

 

 新日鐵住金(現在の日本製鉄)が被告の事件については、「日本製鉄よ なぜ和解しないんだ?」

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

で検討したので、今回は、日本弁護士連合会HPにある「三菱重工事件釜山高等法院判決 仮訳」

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/sengohosho/saibanrei_05.pdf から引用してみる。なお、韓国は日本同様三審制なので、上記判決を覆したという話を見聞しない*2ので、本エントリーで最大限活用する。

 

3 本案に関する判断
ア 損害賠償責任の発生
1) 旧三菱の不法行為責任の成立
(中略)
イ) 前記の認定事実及び弁論の全趣旨によれば、①旧三菱は中日戦争と太平洋戦争など不法な侵略戦争の遂行過程で軍需事業体などに必要な人力を確保するための日本政府の強制的な人力動員政策に積極的に便乗して会社担当者を韓半島に派遣し、日本軍人及び警察と共に原告らを広島に強制連行し、旧三菱の機械製作所と造船所などに労務者として配置して労働に従事させ、②原告らに月2回の休日を除き毎朝8時から夕方6時頃まで鉄板切断、銅管曲げ、配管作業などの厳しい労働に従事させ、宿舎周辺に鉄条網を設置し勤務時間はもちろん休日にも憲兵・警察などによる厳重な監視をするだけでなく、家族との書信交換も事前検閲によって制限し、食事の量や質は著しく不十分で宿舎も劣悪で、給与もまともに支払わないなど、原告らの自由を著しく抑圧しつつ生命や身体に危害を受ける可能性が高い劣悪な環境で危険かつ苛酷な労働に強制的に従事させ、③1945年8月6日に広島に原子爆弾が投下され、原告らが勤務していた機械製作所と造船所が破壊されて作業が中断されたにもかかわらず、原告らに適当な避難場所や食糧を提供するなどの救護措置をとることもなく放置し、更に原告らの安全な帰国のための如何なる措置もとらなかったことを認めることができるが、上記のような旧三菱の原告らに対する強制連行及び強制労働強要行為は当時の日本政府の韓半島に対する不法な植民支配及び侵略戦争の遂行に積極的に加担した反人道的な不法行為に該当し、原子爆弾投下後に原告らを救護せずに放置した行為は事実上の雇用関係にある原告らに対し使用者としての安全配慮義務を放棄した不法行為に該当するものであり、このような不法行為によって原告らが甚だしい精神的苦痛を受けたことは経験則上明白である。

 

 したがって旧三菱は上記のような不法行為による原告らの精神的苦痛に対しこれを賠償する責任がある。

 

 このように、日本政府と別に責任を問いうるので、国家が主導したから免責されるとしないのが不当とは言えず、朴説は不成立である。

 

 訴訟で勝敗を決めることは、日韓の歴史和解になじまない。植民地支配の実態を正確に理解した上で、日本側も主体的に解決に取り組むべきだ―。朴教授はこのように考える。
 

 ただ韓国で、歴史問題は進歩派と保守派の陣営対立と分かち難く結び付いている。会見の終盤、質問に手を挙げた研究者を名乗る市民が「なぜあのような本を書いたのか」と朴教授を糾弾し始めた。議論はかみ合わず、左右対立を超えた対話の難しさを感じさせた。(①)

 

 まず、「訴訟で勝敗を決めることは、日韓の歴史和解になじまない」(①)のであれば、日本政府は被告企業側が「にっかんせーきゅーけんきょーてーでかいけつずみだぁぁぁぁ!!!」と主張するのではなく、責任を認めたうえで和解を模索すべきだったとしかならず、「訴訟で勝敗を決めること」にし、さらにそれにケチをつけているのが日本政府・被告企業側であることを朴さんが認識すべきである。

 

 続けて、記事を書いた木下大資さんは、なんでも左右対立にしたいという考えの持ち主のようである。しかし実際は、日本政府側が適切な解決を拒んでいるに過ぎない。先述のアジア女性基金も、基金方式で解決しようとするから正式に責任を認めたわけではないとして2015年の日韓合意を招き、それすら否定的に評価されるという悪い流れになっているのである。徴用工問題も同様の流れになっているのは、先述の当ブログ「日本製鉄よ なぜ和解しないんだ?」で説明したとおりである。

 

 朴裕河さんのトンデモ説と、なんでも左右対立にしたいという木下大資さんの記事など意味がなく、当ブログの検討の方が問題認識、ならびに解決に有益だというのは言い過ぎだろうか。

 

 

*1:読み方をカッコ内で示し、また、数字を半角に改めた。

*2:日本経済新聞電子版「元徴用工・挺身隊訴訟、三菱重工に賠償命令 韓国最高裁」(2018年11月29日10時14分(最終更新12時38分)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38314370Z21C18A1000000/ の事件と同じかは未確認。