清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

教基法 勉強の成果 出してみる―教育基本法改正法案衆議院可決記念(?)

1、はじめに
教育基本法改正案が衆議院で可決された。早いうちに参議院でも可決されるだろう。しかし、本当に今教育基本法を改正すべきなのか。他にやることはないのか。以下、右記のサイト(「現行教育基本法と「教育基本法改正案」の比較0604版(http://seijotcp.hp.infoseek.co.jp/edu0604.html))や文末の文献を検討した成果を出しつつ、私が勉強した成果を披露したい。

2、直感的見解(そもそも私が持っていた見解)
自由民主党教育基本法を変えたがっているが、それが本当に教育をよくするのか、よくわからない。現行教育基本法(前述のサイトの左の部分参照)を何回も読んだが、特に変えたほうがいい条文は見当たらなかった。

3、「教育基本法改正案」(以下、改正案と表記)の検討(前述のサイトの右の部分参照)
(1)最初見たときは「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」(改正案第2条第5号) ということは書かないほうがいいのではないか、「普通教育を受けさせる義務」(改正案第5条第1項)の年数が消えているのはどうか(改革をするとは聞いていないし、これは全国一律でないと困る)、という感想は持ったが、それ以外は特に問題があるとは思わなかった。しかし、調べると結構問題の多い改正案だということを理解した。以下、逐条的に検討する。

(2)逐条的検討
前文 「公共の精神を尊び」「伝統を継承し」という表現が目に付く。

第1条 第3条 第4条 第9条 第11条 第12条 第14条 第18条 特に問題なし。

第2条 条文見出しの「方針(進んでいく方向の意。広辞苑第4版参照)」が「目標(目的を達成するために設けた、目当て。広辞苑第4版参照)」になっている。表現が厳しくなっている。 第5号の「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに」は気になる。真理は「伝統と文化を尊重」するばかりでは到達できない、外国人にも「わが国と郷土を愛」してもらうのか、という疑問がある。そのほか、そもそも、教育の目標を教育基本法に書き込む必要があるのか(広田照幸さん、高橋哲哉さんの本の問題意識が参考になる)。教育者に自由にやらせればいいじゃないか。

第5条 第1項のなぜ義務教育の「9年間」を消したのか?実際の政策が行われるわけでもないのに。第2項は当然だが、特に書く必要もない。第3項は国の役割を厳格に規定すべし。第4項は私立も無償にすることを検討すべきだった。第3項、第4項については、穂坂邦夫さんや古山明男さんの本が参考になった。

第6条 第1項について、古山明夫の本を読んで考えたところ、この条文では、ホームスクール(親が作る学校)ができないので、学校の多様性が確保できず、その結果不登校の人の教育を受ける権利の侵害になりかねないのでよくない。第2項について、「教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずる」ことは書く必要はない。抵抗は一切ダメなのか?

第7条 第1項、「これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与する」というのは余計。無用の用ということもあるではないか。

第8条 私立学校の無償化を目指さなければならないという趣旨の文章を入れたほうがよいのではないか(ここも古山明男さんの本を見て考えた)。

第10条 第1項は別に条文に入れる必要はない。「国および地方公共団体」の免責をもくろんでいるのか?第2項は「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重」しなければならないと書けばよい。「保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策」は勝手にやればよい。ただし不参加の自由も認めるべきだ。

第13条 しつこいが、こんなことは書かずに、国や地方公共団体の役割を明記せよ。

第15条 「宗教に関する一般的な教養」が入っているが、どんな狙いがあるのだろう。

第16条 第1項「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」という表現は危険だ。法律で何とでもできるので、政治の介入につながりかねない。第2条は、国は最低限の条件整備のほかは、教育に介入してはならない旨を明記すべし。第3項は「地方公共団体」もそうだが、学校を含めるようにしたほうがよい。

第17条 第1項「政府は(中略)教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め」るのがいいかは問題。政府は教育に介入すべしとでも言うのか?第2項「地方公共団体は、前項の計画を参酌し」も問題。要は国に従えということか。

全体としては、国の管理を強化する方向の改正ととれるが、それでうまくいくのか疑問である(式典での混乱、履修漏れを想起)。もう少し、国や地方公共団体の役割に縛りをかけて、学校、教員、保護者の工夫を導き出せる改正をしたほうがよかったのではないか。

4、以上、教育基本法改正反対の立場に似た文章となった。なお、教育基本法改正賛成の立場の本は正直言って読んでいないが、そもそも改正が必要なのかという問題意識なので、アンフェアという批判は甘受します。

5、この文章を書くにあたり、以下の本が大いに参考になりました。教育基本法改正に疑問を持った皆さん、何が問題かわからない皆さん、ぜひご一読を。
高橋哲哉『教育と国家』講談社現代新書
広田照幸愛国心のゆくえ―教育基本法改正という問題』世織書房
 同  『教育に何ができないか―教育神話の解体と再生の試み』春秋社
 同  『教育不信と教育依存の時代』紀伊国屋書店
古山明男『変えよう!日本の教育システム―教育に競争はいらない』平凡社
穂坂邦夫『教育基本法廃止論』弘文堂