今日の読売新聞朝刊4頁(記事の内容は右記の読売新聞のサイト参照。http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070425it13.htm)
によると、政府が、集団的自衛権に関する個別事例を研究する有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の設置を正式に発表したそうだ。
問題は2点。まず第1はその懇談会が、外務、防衛両省OBや学識経験者ら13人で構成されるところ。この学識経験者は本当に公平な立場の方か。靖国懇のときの芦部信喜さん(靖国神社参拝違憲論者。憲法学者。故人。『宗教・人権・憲法学』(有斐閣)p95以下参照)みたいな人はいるのだろうか。
第2は、こちらのほうが問題なのだが、上記のサイトに書かれてある4類型だけの検討なのだろうか。すなわち、隠されていることはないのだろうか。
どういうことかというと、そもそも集団的自衛権というのは、「ある国が武力攻撃を受けた場合、これと密接な関係にある国が、その武力攻撃を自国の平和と安全を脅かすものとみなして、被攻撃国を援助し共同して防衛に当たる権利」(『法律学小事典』第3版参照)である。これからすると、問題がないように思う。
ところが、自衛権(『法律学小事典』によれば、「急迫した危害を排除するために武力をもって必要な行為を行う国際法上の権利」で、国際連合憲章第51条によれば、「武力攻撃が発生した場合」に発動される)の定義が一定でないから問題があるのだ。すなわち、一説によると、武力攻撃がなくても自衛権を発動できるのだ。となると、たとえば、アメリカ合衆国(以下、アメリカと記述)に対する武力攻撃がなくても、日本の自衛隊がアメリカ軍とともに先制攻撃する可能性があるのだ(私見を述べると、アメリカのイラク攻撃は国際連合憲章第51条の要件を満たしていない違法なものだが、アメリカは国家固有の権利である自衛権によって防衛したと理解している)。
集団的自衛権そのものは、国際連合憲章にもあるので、認めてもいいと個人的には思うが、現在のアメリカとの「共同防衛行為」が先制攻撃になりかねない(先制攻撃を認めたら戦争などなくならない)という危険性があるので、現時点では集団的自衛権を認めるのは慎重でなければならないだろう。