。『青空どろぼう』の証拠は、
)。しかし、今回レビューする『死刑弁護人』
)。ただし、9時45分開始。
『死刑弁護人』は、光市母子殺害事件など、死刑になりそうな事件を多く担当している(映画によると(以下、記憶違いの可能性あり)、撮影当時、55件弁護(受任?)し(刑事民事合わせて)、そのうち7件が死刑事件とのこと(『ポケット六法平成24年版』(有斐閣)p1930によると、平成21年の「通常第一審における終局人員の終局区分」において、総数76,590件のうち、死刑での有罪は9件(0.1%未満))、安田好弘弁護士を取材したドキュメンタリーである。
安田さんは、兵庫県出身で、東京の大学に進学後、学生運動に携わったそうで、山谷に泊まって日雇い労働をした経験があるという。アルバイトをしながら司法試験を受け、30歳の時、7度目の受験で合格。弁護士となる。最初の受任事件は、山谷での事件だったという。その経験が、後の弁護活動に影響を及ぼしているようだ。すなわち、理不尽さに対する怒り(以前山谷では、暴力団が労働者をピンはね(Yahoo!辞書で意味をご確認。http://dic.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E3%83%94%E3%83%B3%E3%81%AF%E3%81%AD&fr=dic&stype=prefix )したのに、どういうわけか暴力団関係者ではなく労働者を摘発したらしい)。
映画は、まずは、和歌山で起こった毒カレー事件を取り上げている(時系列ではない)。被告人は、最高裁段階で安田さんに弁護を頼む。安田さんは、現場に赴き、証言の信用性に疑問を呈したが(上告理由ではないが(刑事訴訟法第405条、第406条)、職権の発動を促している(刑事訴訟法第411条))、具体的には、アクリルボードがあるので人を判別できないと主張したが、上告棄却で死刑が確定。映画の展開を飛ばして事件を続けると、警察に残っている白い紙コップと、裁判で認定されたヒ素付きの青い紙コップは矛盾する(証拠の捏造が疑われる)として、再審請求をしている。
これも実際の映画の展開とは違うが、冒頭で示した光市母子殺害事件も、手の向きから、殺意否定の弁護をする。
これらの安田さんの事実認定の正しさには触れないが、事実を徹底的に追究する安田さんの弁護方針の一端が垣間見える内容である。
その間に、安田さんが以前担当した、新宿西口バス放火事件と、名古屋女子大生誘拐事件が取り上げられる。前者は、被告人の責任能力に疑問を呈する弁護が一部認められ、被告人は無期懲役になる。しかし、後に自殺してしまう。後者は、死刑になり、恩赦を請求しようとするが、その一瞬を突かれて、死刑が執行される。これらの事件につき、安田さんは悔いを吐露する(前者は自殺したことについて(素人判断禁物だが、病気なのか、と思った)、後者は恩赦請求という生温い手段を用いたことに)。
この2つの事件は、戦後日本の問題点が絡んでいる事件のように感じた。前者は日雇い労働者の貧困、後者は部落差別(後者の事件の被告人は、被差別部落出身であるがゆえに被害者感情を持っていた)。週刊朝日 vs 橋下徹・大阪市長(以前、安田さんをはじめとした光市母子殺害事件弁護団の懲戒請求を煽った。なお、週刊朝日vs 橋下市長については、「石原と 佐野眞一らは 同じだな」(http://blogs.yahoo.co.jp/kiyotaka_since1974/53437446.html )参照)の件がタイムリーだから、私はこの2つの事件を詳しく調べれば面白い、と、製作者の意図無視で思ってしまった。
最後に取り上げられたのは、オウム真理教事件。なり手がいなかった教祖の弁護人に、国選として就任。あるかいの後半で、別の被告人が、教祖の指示に従ったと証言。反対尋問をしないと証言が証拠となってしまうと感じた弁護団は、反対尋問権を行使しようとする。しかし、教祖に止められる。それ以降、教祖は弁護団とコミュニケーションを取らず(取れず)、弁護団は意思疎通のため欠席までしたという。そのオウム真理教事件の弁護のさなか、安田さんが強制執行妨害で逮捕される。三井信託も認めた再建案なのに逮捕されたことで、オウム事件の弁護を妨害するための逮捕と解釈する。なお、その事件は、最高裁まで行き、罰金刑で確定。懲役(刑法第96条の2~6参照)ならば弁護士欠格になるが(弁護士法第7条第1号参照)、それは免れた。
それにしても、マスメディアにあれだけ叩かれて、マスメディアの一つである東海テレビの取材に応じたのは大したものだ。安田さんの下心を否定はしないが、映画製作者が話を聞き出したことは大したことだと思う。
ところで、題名は『死刑弁護人』だが、死刑の問題としていいかは疑問に思った。もちろん、安田さんは、人生経験、弁護経験を経て、死刑廃止の信念を持ち(もちろん、人は変わりうるとは思うし、刑罰は更生可能性をも考慮すべきだから(市民的および政治的権利に関する国際規約第10条第3項参照)、廃止論は間違っていない)、実際ビラを配ったが(何回かはわからないが、1回は配ったのだから、アクティブな活動家としてよい)、たまたま死刑事件を取り上げただけのことで、安田さんがいかに事実を大事にし、責任感を持って弁護しているかが、この映画の一番大事なところだと思った。題名は難しいが、死刑にこだわって観るのは得策ではない。真剣に仕事をしている一人の人を追いかけたドキュメンタリーとしてみるのがいいと思った。
*なお、Yahoo! 映画にも投稿しました。「死刑とね 結びつけるの 疑問かも」(http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id342314/rid12/p0/s0/c0/ )