清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

刑事事件の 匿名につき 考えた

別によらなくてもいいが(失礼)、弁護士ドットコム「「被害者匿名」の起訴状をどこまで認めるべきか? 弁護士に聞いた議論のポイント」(2013年09月25日 20時50分。http://www.bengo4.com/topics/799/

)によると、「性犯罪関連の事件を中心に「被害者名を匿名にした起訴状」の是非が話題となっている」という。
 
当ブログでも「被害者の 匿名に短所 あるんじゃない?」(http://blogs.yahoo.co.jp/kiyotaka_since1974/54255531.html
)でも取り上げたが、最近のホットイシューのようだ。ついでにするのも失礼だが(とりわけ犯罪被害者に対して)、刑事被疑者の匿名報道も合わせて検討する。
 
まずは刑事被疑者についての匿名報道についての私見浅野健一『犯罪報道の犯罪』(講談社文庫(1987)で読んだ)の影響を受けているからか、被疑者匿名は相応の根拠があると思っている。起訴されない事件も多いし(最新版(平成26年版)も出ていて恐縮だが、『ポケット六法』(有斐閣平成24年版、1931ページによると、平成21年の起訴率は37.5%である。犯罪により違うが、処理人員の半数以上が起訴もされない。この段階で、報道により犯人視されるリスクがあまりにも大きいと思うからである。一方、被告人になれば裁判になるのだから裁判は公開される建前で(憲法第37条第1項)匿名にする理由がなくなる。したがって、刑事被疑者に限り匿名報道は合理性がありそうである(発表を匿名にしろ、とまでは主張していない)。なお、刑事被疑者は実名報道すべきという見解も見たことがあり、犯人視しなければいいとのことで、それも一理あると現在は思っている(以前は否定的に思っていた)。
 
冒頭で紹介した弁護士ドットコム「「被害者匿名」の起訴状をどこまで認めるべきか? 弁護士に聞いた議論のポイント」では、「「性犯罪や最近クローズアップされることの多くなったストーカー事件の場合、起訴状に記載された被害者が、後になって被告人から報復措置として悲惨な被害を受ける可能性があります。/起訴状の匿名化はそのような悲劇を防ぐため」という、田沢剛(たけし)弁護士の見解が載っている。
 
それに加えて、弁護士にありがちなイメージのある、加害者の人権が絶対大事で被害者のそれなどどうでもいい、というような説明ではなく、きちんとした記事であるが、それはそれとして、報復はよくないが、それは被害者を匿名にするのではなく、更生をどうするかの問題のはずである。したがって、被害者の匿名については賛成しかねる。
 
実はこのエントリーを書こうと思ったのは、読売新聞東京本社版2013年10月21日朝刊13版34面に、起訴状の被害者名を匿名にする「具体的」なケースは、「被告のつきまといがあった場合や、名前がインターネットなどに流出することで名誉が著しく傷つけられる著名人の場合などが想定されている。行きずりの犯行で、再び被害を受けるおそれが小さいと見られる場合は実名の記載が求められる」であると書いてあったことである。しかし、読売新聞の説明では、せいぜい「被告のつきまといがあった場合」かつ「行きずり」の場合ぐらいしか匿名のメリットがないのではないか?知人間だったり、著名人だったりのときには意味がないのではないか?このように、匿名にすべき範囲は読者の感覚以上に小さいはずだし、被告人(被害者も被告人も我々と同じ市民!)の防御のことも考慮すると、匿名にすべきという見解には賛成しにくいのである。
 
*文中敬称略