筆者は、大変申し訳ないが、BS日テレ「深層ニュース」（以下「番組」とも表記。HPは、 http://www.bs4.jp/shinsou/
）を普段は見ない。ところが、2016年11月8日に放送された「深層ニュース」を観た。それは、鳩山友紀夫〈誤植ではない。番組によると、戸籍上はまだだが改名したとのこと。なお、以下も敬称略〉が出るからである。日本テレビ〈番組の制作著作〉は読売新聞を中心とした読売グループの放送局で、番組も「ＢＳ日テレ、日テレ、読売新聞の3社がタッグを組んだ本格報道番組」（「深層ニュース」HPより）と銘打っている。民主党（当時。現民進党）をdisるのが社是のような読売グループが鳩山を呼んだのに素直にそそられて、番組を観た。
番組（第797回。#797 )の内容は「鳩山元首相が緊急出演 私が中国を擁護する訳 日露の今後も大胆予測」（http://www.bs4.jp/shinsou/onair/796-800.html#n797
参照）。ただ、時間がなくて、「日露の今後も大胆予測」とは行かなかった。全体を見た限りでは、鳩山や、もう一人のゲスト、山崎達雄（前財務省財務官）が話を遅らせた感じはなかったので、番組側の時間配分のミスであろう。
というわけで、内容はもっぱら「私が中国を擁護する訳」の方になった。もっとも、全体を見た限りでは、必ずしもそうではないと思ったけど。
まず、鳩山がAIIB諮問委員に就任した理由を訊かれたところ「日本人が入った方がいいと思」い、中に入って可視化すべきとのことであった。
前述したが、番組が良かったのは、鳩山独演会ではなく、AIIBの交渉に関わった、山崎達雄が出たことである。山崎によると「今あるアジア開発銀行（ADB）を使えばよい」だとか、「（中国（中華人民共和国のこと。清高補足）の）作りたいが先にありき」だとか。ただ、筆者が以前NHKの番組で観たイメージでは（「ニッポンが 一番嫌って いるみたい」（http://blogs.yahoo.co.jp/kiyotaka_since1974/55398605.html
）参照）、既存のADBは銀行、AIIBは消費者金融だな、と思ったので、山崎説とは違うと思った。なお、鳩山の「ADBは迅速性を欠いていると中国が思っている」は、筆者のイメージに合致する。
次に、日中関係に話は進む。鳩山は「まだ雪解けではない。尖閣問題が一因」と、民主党政権を批判している。元所属先の悪口を言ってはいけないとするのか、学者らしく（決断の専門家らしい。『君たちが知っておくべきこと: 未来のエリートとの対話』（佐藤優、新潮社、2016）に書いてある話）真実に率直と評価すべきかは難しい。
その後司会者が「中国の挑発行為について」と質問したところ、鳩山は「日本が挑発」とのこと。野田政権下の尖閣国有化を指している。で、現在の挑発行為については「政府間でやりあって報告している」と証言している。これが真実かは読者諸賢の判断に任せるが、鳩山が証言したということでいいと思う。やや話が前後するが、菅政権のときに逮捕したことが尾を引いているとのこと。何年の何号かは失念したが、岩波書店『世界』で見た話。
更に話は中国の南シナ海に対する姿勢に進む。鳩山は「領土問題で一番大事なのは当事者間で話し合うこと」だから「合意は大きい」と評価。以前当ブログでは「尖閣は 死守で２島は ぜひ返還?」（http://blogs.yahoo.co.jp/kiyotaka_since1974/53797528.html
）をエントリーしたが、それも領土問題は話し合いで決めるという内容なので（「「関係国間の条約」」など）、そんなにおかしいとは思わなかった。鳩山は学者だから（？）知識に対するリスペクトがあるが、鳩山に反対する人はその知識を受け入れたくないんだな、と思った。
鳩山は自分が所属した政党の政権は率直に批判する一方で、現在の政権にはエールを。日本が「ガス田に協力しようとしているのはよい」と評価している。いろいろな意見があろうが、素直に現在の日本を心配している、と捉えればいいと思った。
そして日米関係に話が進む。鳩山は「米軍基地を無くす方向へ持っていくべき」という見解は変わっていない。「鳩山のせいで」という人もあるが、それは一応民主主義のルールに則って政権を取ったのだから、それだけではなく、（あったとすれば）官僚等のサボタージュも考慮に入れて分析すべきだろう（『行政ってなんだろう』（新藤宗幸、岩波ジュニア新書、2008）をご一読）。つまり、鳩山説も相応に尊重すべきである。
視聴者の質問メールも紹介。AIIB参加が国益に沿うのかというのが内容。鳩山、山崎両氏の見解は参考になったが、そもそも「国益」って何？好き嫌いだとは思えないんだけど。で、鳩山がAIIB諮問委員になって、日本国はどれくらい損したの？
最後に全体の印象をまとめると、鳩山、山崎両氏の、穏やかで、かつ当事者らしい話が聞けて有益な番組だった。
