森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長が、女性蔑視と取れる発言をして辞任に追い込まれた話の、いわば外伝みたいなものをこれから書く。なお、森喜朗会長の女性蔑視と取れる発言の全文は、①朝日新聞デジタル「『女性がたくさん入っている会議は時間かかる』森喜朗氏」(2021年2月3日18時4分)
にある。なお、読売新聞2021年2月12日統合版13版23面の「森氏が、3日に行った発言の要旨は以下の通り。」以下とも矛盾しない。
まず先頭を切ったのは、EXIT。②東スポWeb「EXIT兼近 森会長辞任に「『偉そうなジジイ降ろしてやったぜ』って感じがして気持ち悪ぃ」」(2021年2月11日22時32分)
によると、
これ(番組視聴者のネット上の反応を受け。筆者注)を受けりんたろー。は「今、ネットで川淵さんのアラ捜しが始まってる」とし「見失っちゃいけないのは、本来の目的はネット上でつるし上げて抹殺することではなく、オリンピックを成功させる、偉大なイベントを成功させるのが目的なんだと。そのために最善で最短の策をとることが重要であって、そこの目的だけ間違えちゃいけないと思う」と警鐘を鳴らした。
兼近は「何よりも今回で気持ち悪ぃなって思うのが、自分が被害の及ばない所から石をひたすらぶつけて『降ろしてやったぞ』と。目的が引き下ろすというか『なんか偉そうなジジイを俺が降ろしてやったぜ』みたいな感じがすごい伝わってくる。ほんとに見失っちゃってんなっていう。ただただ攻撃することが目的になっちゃってる」と感想を述べた。
さらに「もちろん発言自体は許されるものじゃないかもしれないですけど、(以下略)」と訴えた。
とのこと。
「『オリンピックを成功させる、偉大なイベントを成功させるのが目的』」(②)なので、森喜朗さんが指名したとされる川淵三郎さんのアラを捜しているんでしょうに。過去の言動から似つかわしくない人に会長になってもらいたくないということのどこが悪いのか?
「『ただただ攻撃することが目的になっちゃってる』」(②)もひどい。じゃ、悪いことをしても咎めるなということか?森さんの発言を問題だと思っているから批判しているだけである。
続いては笑い飯の哲夫さん。③くっくり@六四天安門事件さん(@boyakuri2)のツイートを見てみよう。
哲夫
— くっくり@六四天安門事件 (@boyakuri2) 2021年2月12日
「先程TVでコメンテーターがずっと老害って言葉を。女性差別発言の問題が過熱した先には女らしさという言葉の言葉狩りがありそう。僕はお年寄りから素敵な躾を受け、男らしさ女らしさを教えてもらった。言葉狩りはやめてほしい。『老害』『女らしさ』どっちが差別表現なのか考えたい」#ミント
筆者は関西在住ではないので、毎日放送「ミント」を観ているわけではない(ただし、動画を調べていないことに対する批判は甘受)。しかし、類似ツイート
今日のMBS「ミント」で
— 筋肉と金属 (@muscleslave) 2021年2月12日
「森さんにはまず、ありがとうございました、お疲れ様でしたと言いたい」って言った笑い飯の哲夫さんには思わず拍手しそうになった。
「森喜朗は批判すべし」の空気が醸成されてる中、しかもMBSの番組でその意見を言えるメンタリティの強さ、見習いたいです。
があるのでくっくり@六四天安門事件さんのツイートの内容を事実とする。
「「『老害』『女らしさ』どっちが差別表現なのか」」(③)って?答えは2つ。1つは「「『女らしさ』」」(③)の方。もう1つはどちらも。「「『女らしさ』」」(②)が社会が押し付けるジェンダー規範であることは、ちょっとジェンダー論をかじればわかる程度のもの。「「『老害』」」(③)が微妙なのは、ある程度の年齢に達すると認知能力が衰えるというのを見たことがあり(筆者の記憶では『ドナルド・トランプの危険な兆候(略)』(バンディ・リー 編、岩波書店、2018)で見た)、それに対する反論ができていないからである。今後の社会によって「どちらも」が正しくなってほしいが。
最後は小籔千豊(こやぶかずとよ)さん。④東スポWeb「小籔千豊 森喜朗会長辞任に『変な切り取り方した報道の人も辞任せなあかん』」(2021年2月12日18時42分)
によると、
〝女性蔑視発言〟が発端となったが、小藪は「一部の発言を切り取って、印象を強めようという報道は別に今回だけでない」とした上で「僕も最初ネットかなんかで文字見たとき『あ、えらいこと言いはったな』と思ったんですけど、全文読んだら、たぶんみんな印象変わると思うんですよ」と分析。
さらに「別に今回だけじゃなくて、どっかの市長の発言も切り取ってバン!って出たら『えらいこと言うたんやな』と。でも全部のこと見たら『そらしゃあないわ』って人、多かったと思うんです。変な発言したから『おい責任とれ! 辞めろ!』っていう空気にするなら、変な切り取り方して、後任決まらへんような状態にした報道の仕方をした人も、辞任とかせなあかんのちゃうかなと」とメディアにも責任ありとした。
とのこと。
じゃ、①を見てみるか。
もちろん結論は「次は女性を選ぼうと、そういうわけであります」(①)である。しかし、そうであれば、
女性がたくさん入っている理事会は、理事会の会議は時間がかかります。(略)女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです。
結局(略)女性を必ずしも数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度、規制をしていかないとなかなか終わらないで困るといっておられた。(①)
という必要はない。上記のことを言えばジェンダー差別くらいの評価は当たり前。発言の長短と性別は全然関係ない。
EXIT(
)、笑い飯(哲夫さん。
)、小籔さん(
)と、本エントリーで取り上げたお三方は吉本興業の芸人。もちろん吉本興業の芸人以外でもトンデモ発言はあろう。しかし、昨今のテレビで人気の吉本興業の芸人がこんな馬鹿な発言をするのでは日本、ならびにお笑い界の未来も暗いだろう。
なお、タイトルの「アホ」と「馬鹿」について。筆者の関西人の知人から聞いたのだが、「アホ」は親しみを込めた表現なのに対し、「馬鹿」は本当に侮辱しているのだという。加えて先ほどの「馬鹿な発言」というのもタイトルの由来である。