毎週水曜日発売の『NHKウィークリーステラ』、今年度で休刊。残りわずかとなったが、注目すべき記述があったので紹介する。
『NHKウィークリーステラ』2022年2月11日号pp.26-27に、「2ページで100分de名著」というコーナーがあるが、その「第2講義 趣味とは"闘争"」が興味深かった。なお、その他の内容も興味深いので、pp.26-27、ならびに『ディスタンクシオン』(全2冊。ピエール・プルデュー、藤原書店、2020)をご一読あれ。
「第2講義 趣味とは"闘争”」(『NHKウィークリーステラ』2022年2月11日号p.27)のところに何と書いてあったか。以下、引用する。
「趣味は、生き方そのものが肯定されるか否定されるかの闘争である……」*1
プルデューは、人の行為には"闘争"がともなうと言いました。趣味も同様で、例えば音楽で「これがいい」と判断するとき、必ず他者に勝ちたい、差をつけたいという衝動が起こります。趣味を通じて自分のハビトゥスが上位に来るよう、価値観の押し付け合いをするのです。
闘争が行われる場が"界"。そこでの上限関係は優劣ではなく社会的な評価です。
引用の「ハビトゥス」は「社会的な学習によって刻み込まれた「傾向性」のこと」、*3なので、以下に筆者が書くことに比べてもっと大きな概念である。適当かは自信がないが、クラシック音楽が好きかロックが好きなのかが該当しそうである。
筆者が先ほどの引用でさらに注目したのは「趣味も同様で、例えば音楽で『これがいい』と判断するとき、必ず他者に勝ちたい、差をつけたいという衝動が起こります」のところ。当ブログの読者であれば、筆者が音楽を扱う時に(こいつ、誰?)と思うような、それほど有名ではない(と筆者が自負している)人を紹介していることに気が付くであろう。それが筆者なりの「必ず他者に勝ちたい、差をつけたいという衝動」だと思うのである。すなわち、(私は一般の読者より当該ジャンルに詳しく、したがってマイナーなアーティストも知っているんだぞ。すげぇだろ)ということである。もっともそれが「社会的評価」になることは少ないが。
むしろ以下の方が普通なのではないか。すなわち、有名なアーティストを知ることが「必ず他者に勝ちたい、差をつけたいという衝動」になっている方が。その有名アーティストを知らない他者がいたら(こんなの知らないの?ぷっ!)くらいに思って勝った気でいるような。
読者の皆様が上記の筆者の見解について思い当たるフシがあり、それでものの見方が広がったのであれば、筆者としては幸いである。