清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

検察権縮小 日本でもあった

 韓国に移住するつもりのない*1、おそらく大多数の日本在住者には興味のない話だが、お付き合いを。

 

 以後読売新聞オンラインの記事を利用するのは、読売新聞の記事がまとまっていることと、価値判断をしているからであることをお断りしておいて、時系列順に。

 

①「文在寅氏に透けて見える『保身の思惑』…韓国検察の捜査権、大幅縮小の法案採決を強行」(2022年4月30日10時57分)

www.yomiuri.co.jp

 

②「政権交代目前の韓国、検察捜査権の大幅縮小の改正法成立…政治報復かわす強行採決との見方」(2020年4月30日19時25分)

www.yomiuri.co.jp

 

 そもそもの「検察改革関連法」(①)の趣旨は、①によると、

 与党が提出した検察庁法と刑事訴訟法の改正案は、検察が直接捜査できる犯罪を腐敗(汚職)、経済に制限するのが柱。与党は、捜査権の一部をまず警察に移し、最終的に新設する「重大犯罪捜査庁(仮称)」に全て移す計画だ

とのこと。なお、②によると、

(略)検察が直接捜査を開始できる犯罪を腐敗(汚職)と経済事犯に制限することを柱にした改正検察庁法案が可決・成立した。検察の捜査権は大幅に縮小され、警察に移ることになる。

(中略)

 改正法では公職者、選挙、防衛事業、大型惨事(重大事故)の捜査権が廃止される。ただ、選挙の捜査権は、6月に統一地方選があるため年末まで認められる

とのこと。

 

 日本には、特別捜査部(いわゆる「特捜部」)がある検察庁もあるが、一次的な捜査権は警察にある場合が多い。それからすると、韓国で起こっていることは、仮に疑惑があったとしても、検察の権力が強大だから改正したというだけとも言える。一時期刑事訴訟法の代表的な教科書とされた、田宮裕(ひろし)『刑事訴訟法〔新版〕』(有斐閣、1996)p.43によると、

(略)捜査官として、原則的には警察が主、検察官が従というのが現行法の構図であるが、大正刑訴法までは、両者の地位はまったく逆転していた。捜査の主宰者は検察官であり、司法警察職員*2はその補助者であった*3

とのこと。

 

 しかし、日本のメディアは、直接関係ない韓国のことにも、なぜか否定的な評価をしてしまう。筆者の知る限りどのメディアもそうだが、読売新聞の記事には、以下のようなくだりがある。

 文氏側には保身の思惑も透ける(①)

 文在寅ムンジェイン 政権の左派「共に民主党」(168議席)が「政治報復」捜査をかわすため、強行採決したとの見方が支配的だ。文政権には複数の不正疑惑がある(②)

(日本の歴史もわきまえず、よく書くなぁ)というのが筆者の感想。現地の声の紹介とはいえ、韓国に対する侮蔑意識があるように感じてしまった。

 

 なお、「刑事司法制度の急転換で犯罪捜査能力が低下するとの懸念も強い」(①)という懸念を筆者は否定しない。ただ、日本も似たようなプロセスを経たはずなのに、韓国に限って否定的にしか評価しないのはいかがなものだろうかと思い、本記事をアップする次第である。

 

*1:筆者も含む。

*2:おおむね警察官のことである、というのが、刑事訴訟法学の常識。

*3:その理由は、pp.44-45に書いてある。おおむね「当事者主義訴訟を採用した」(p.44)からだが、「検察官制度は過度の権力集中であ」(同)ったというのが「アメリカ的な考え方」(同)なのだそうだ。敗戦時にアメリカの制度を大幅に採用した日本の歴史の一端が垣間見える話である。