清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

加害者参加 しないの怒る 当然だ

 本エントリーで紹介するのは、時事ドットコム「原告側、韓国政府をけん制 元徴用工、解決へ早くも暗雲」(2022年6月30日16時30分)である。以下、引用しつつ検討する。

www.jiji.com

 

 まず、そもそものタイトルから問題である。なぜ「暗雲」という文字を用いるのか。時事ドットコムにある原告の主張を以下に引用する。

(前略)

原告側は30日、被告企業が参加しない基金を通じて補償する案などが解決策として検討されていることについて「加害者に免罪符を与えるものだ」と反発し、解決を急ぐ尹錫悦政権をけん制した。

(中略)

原告側関係者は「なぜ加害者からの正当な賠償ではなく、全く関係ない人からの寄付を受けなければいけないのか」と述べ、基金案を受け入れる場合は被告企業の出資が必要だと強調。日本企業の資産に被害の及ぶ「現金化」が迫る中、「司法の正義に基づかない解決策は、(日韓)関係を改善させるのではなく、状況をさらに悪化させる」と主張した。

至極当然の主張である。

 

 ところで、唐突なようだが、犯罪被害者等基本法*1の前文、ならびに第1条をを引用する。

もとより、犯罪等による被害について第一義的責任を負うのは、加害者である。しかしながら、犯罪等を抑止し、安全で安心して暮らせる社会の実現を図る責務を有する我々もまた、犯罪被害者等の声に耳を傾けなければならない(以上前文の一部引用)

 

(目的)
第一条 この法律は、犯罪被害者等のための施策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、犯罪被害者等のための施策の基本となる事項を定めること等により、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする。

「犯罪等による被害について第一義的責任を負うのは、加害者である」と明記されている一方で、「国、地方公共団体及び国民の責務」を明らかにしている。

 

 一方、時事ドットコムの記事を引用する。

 日本政府は1965年の日韓請求権協定により解決済みとの立場で、被告企業の基金への資金拠出を認める可能性は乏しい。このため、韓国企業などに加え、訴訟と無関係の日本の企業や国民が自発的に基金に寄付する案が浮上している。

もちろん、犯罪と不法行為(徴用工判決)という違いがあるのは理解する*2。しかし、日本の犯罪被害者には国の責務を認めている一方で、日本政府は、自ら、ならびに被告企業が参加しない基金を模索している。これは矛盾しているようにしか見えない。

 

 そもそも徴用工制度*3は、大日本帝国が作ったものである。そして、その現場で起こったことを原因とした精神的苦痛についての賠償の話である。日本政府や被告企業が参加しないのであれば、普通の人であれば納得しない。

 

 いわゆる徴用工判決についての対応は、日本政府が一方的に間違っているので速やかに基金案を取り消して判決を尊重する旨の声明を発表すべきだし、敗訴した企業は速やかに賠償すべきである。また、時事ドットコムも、被害者に寄り添った内容に記事を改めた方がよい。

*1:条文はe-gov法令検索より。アドレスは、

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC1000000161

*2:ただし、犯罪の大部分が不法行為であることは否めないだろう。刑事で責任を取れば民事で責任を取らなくていいことにはならない。

*3:国民徴用令のみに限らないことは、外村大(とのむらまさる)『朝鮮人強制連行』(岩波新書、2012)を読めばわかる。