岡口基一裁判官が、弾劾裁判(憲法第78条)により罷免された話について。
弾劾裁判自体は三権分立によるチェックアンドバランスを働かせる制度なのでそれ自体に問題はないが、実際に行われた弾劾裁判に疑問があるということである。以下、園田昌也."岡口弁護団「勝ったと思った」から一転…読み上げに2時間超、「罷免判決」に書かれていたこと<弾劾裁判詳報>".弁護士ドットコムニュース,2024-04-03.
,(参照2024-04-04).に基づいて検討する。
判決文を紹介した投稿について。
判決は、岡口元裁判官がリンクを貼った裁判所ウェブサイトの「事案の概要」欄(削除済み)に同種の文言が書かれていた可能性が高いことなどから、「フォロワーの性的好奇心に訴えかけ、興味本位で判決を読ませようとする意図があった」旨の裁判官訴追委員会側の主張を退けている。
とのこと。岡口の当該ツイートはもう見られないが*1、"被害者が 主張をすれば 正義かな".清高の ニュースの感想 令和版,2018-03-20.
kiyotaka-since1974.hatenablog.com
によると、筆者は「「ある裁判官は『遺族への誹謗(ひぼう)中傷の意図まで認めることは難しく、表現の自由の観点からも慎重に判断せざるを得なかったのだろう』」という、ある裁判官の評価のほうが妥当だと思う」と書いている。当時のことは覚えておらず、岡口のポストも確認していないが、現在でも通用すると思っている。
同事件の遺族が「洗脳」されているとする投稿についても、弁護側の主張を採用し、発達障害の影響などから、「洗脳」という言葉をそれほどネガティブな意味で使っていたわけではなく、遺族の感情を傷つけることを予期したものではなかったなどと認定。「遺族の行動に疑問を呈した投稿であったとまでは、認めることはできない」としている。
については、岡口基一.弾劾裁判及び分限裁判の記録 岡口基一:「洗脳発言」報道について.はてなブログ.2-19-11-18.
,(参照2024-04-04)が岡口の言い分だが、岡口の言い分が本当だとすれば*2、それほど問題とは思わなかった。
続いて判決は、争点(2)の「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」かを検討。刑事事件投稿と犬事件ぞれぞれの行為群について、(a)非行に当たるか、(b)「著しい」非行に当たるかという二段階で審査している。
について。裁判官弾劾法第2項によると、
弾劾により裁判官を罷免するのは、左の場合とする。
一 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき。
二 その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき
とのこと。第1号は不問として、園田昌也."岡口弁護団「勝ったと思った」から一転…読み上げに2時間超、「罷免判決」に書かれていたこと<弾劾裁判詳報>".では第2号を検討している。
まず「著しく」についてだが、園田昌也."岡口弁護団「勝ったと思った」から一転…読み上げに2時間超、「罷免判決」に書かれていたこと<弾劾裁判詳報>".によると、「刑事事件投稿の行為群について、「少数者の基本的人権を保障する『憲法の番人』の役割からはかけ離れたもの」だとして、国民の信託に反すると認定した」とあるが、正直よく分からない。
次に「非行」だが、書かれた本人が傷ついたから「非行」というのもよく分からない。読売新聞.2024-04-04,統合版,p.24.に「え?あなた?この犬を捨てたんでしょう?」とあるのが「悪質性は低い」*3とあるが、筆者がそれを読んだところ、「(略)この犬を捨てたんでしょう?」の方を悪質性を高いと認定することも可能だと思った。もちろん犬を捨てるのは絶対にいけないが、それに事情がないのか、という疑問を持ち得るからである。つまり、裁判員*4の主観の域を出ていないようにしか見えない。
判決では、このほか弁護側から出た諸々の主張についても、判断を下している
以下に、4つ「▼」があるが、1番目と2番目に賛成せず、3番目と4番目の判断を保留する。特に2番目の「刑事事件に発展していない」ことは重要なはずである。
判決を受けて弁護団は(以下略)。
そのうえで、「悪意があるから罷免ならまだ良かった。悪意がなくても、相手の感情を害すれば罷免という前例ができてしまったので、裁判官がSNSなどで発信することについての萎縮効果は大きくなるだろう」とコメントした。
とのことだが、これはその通りだと思う。
弁護士ドットコムの記事の限りでは、岡口の罷免はおかしいと思わざるを得ない。犯罪被害者の権利が保障されることが大事だとは理解しているが、筆者のブログの過去の記事を読む限りでは、岡口のポストがどう問題だったのか、岡口のポストが現在非公開であることを差し引いても、さっぱりわからない。