清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

朝日も読売も 韓国になると 間違い

左とされる朝日新聞も、右とされる読売新聞も、韓国の話になると間違いだらけの話を垂れ流して読者を害しているという話。

 

1.朝日新聞

(1)「(耕論)韓国司法なぜ覆す 小此木政夫さん、内田雅敏さん、山田哲也さん」(朝日新聞デジタル2021年1月29日。有料会員記事も本エントリーに何ら影響がない)。

www.asahi.com

 

まさか、解釈を「覆す」としているわけじゃないよね?行政の判断に従わないことは、司法として普通にあることである。

 

「対日合意より正義を優先 小此木政夫さん」とあるが、その両立を図っているに過ぎない。慰安婦が原告であれば、日本でも判例・通説ではない絶対免除主義ではなく(当ブログの

 

kiyotaka-since1974.hatenablog.com、読んでね)、制限免除主義を前提として丁寧に論じるべきだが、筆者の知る限り日本の報道でそうしたのは皆無である。(1)がそうかどうかは有料会員にならないとわからない。

 

(2)GLOBE+「揺れる世界 日本の針路 いつまで続く『最悪の日韓関係』 片山善博さんに聞く、打開のヒント」(2021年1月24日)

globe.asahi.com

 

「司法が無鉄砲に国際ルールを念頭に置かず、国民感情におもねった判決を出した」(2)って?まさかぁ。片山さんの方が「無鉄砲に国際ルールを念頭に置」いていないの。前述の通り制限免除主義が通説なのだからせいぜい「この場合には該当しない」くらい書かないとダメである。

 

「韓国にも、こうした職員組合のような甘えが染みついているのではないか。『泣きついたら、日本が何とかしてくれるだろう』という甘えが消えていないように思われる」(2) って全然違う。そもそも日本に泣きついているわけではないからである(独立した裁判所が判決を出したに過ぎない)。

 

「2015年12月の日韓慰安婦合意で『最終的かつ不可逆な解決』としたのに、蒸し返された」(2)もいかにも物を調べないで書いたかわかるね。合意後拷問禁止委員会、人種差別撤廃委員会(ともに条約上の根拠がある)、少なくとも2度の見直し勧告がなされていることにつき、

 

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

 をご一読。

 

「対抗措置を取る」(2)というコメントもなんで出てくるのだろうか?片山さんに、「この日本人め!」と言って暴行でも加えようか?(実際にはしない)新日鐵住金(現日本製鉄)が被告の事件の判決はそういうことが問われている。

 

kiyotaka-since1974.hatenablog.comをご一読。

 

「日本もかつて植民地を持っていた国としての自覚と気位ぐらいは持つべきだろう。それは、韓国などに対するおもねりや譲歩とはまた別次元のものだと思う」(2)も論理がない。植民地支配の有無と譲歩等は何ら関係ない。韓国において日本の植民地支配は不法なものだというだけの話であるが(日本においてこれが妥当かという議論の意味はない。韓国はそういう国だと理解すればよい)、その視点を意図的に無視している。

 

2.読売新聞編

インターネットにおいては、①「韓国国会「元産経支局長の公判介入」と裁判官弾劾案を可決」(2021年2月5日0時19分)として公開されている。

www.yomiuri.co.jp

 

同様のタイトルの記事が、②読売新聞2021年2月5日統合版12版7面にあり、それによると、「現政権と裁判官トップの密接な見解も暴露されたこと(インターネット版にある「林氏は自身への弾劾論が上がっていた昨年5月、健康悪化を理由に金氏に辞表を提出したところ、『辞表を受理すると弾劾ができない』との理由で辞表を突き返された。この発言は、林氏が公開した会話の録音データで明らかになった。」のこと)で、三権分立が揺らぐ事態となっている」とあるが、全くの筋違いである。

 

筆者が持っている『法律学小事典[第3版]』(有斐閣、1999)で「三権分立」を調べると、「権力分立主義」にたどり着く。その説明を引用する。

1.意義 国家作用を立法・司法・行政(又は執行)の三権に分け、各々を担当する機関を分離独立させ、相互に牽制(けんせい)させて、人民の政治的自由を保障しようとする自由主義的な統治組織原理。

 ‐『法律学小事典[第3版]』p303より) 

 

読売新聞の記事の「文在寅(ムンジェイン)政権と対立して懲戒処分を受けた尹錫悦(ユンソクヨル)検事総長の復職を認めた決定」 や「林氏は自身への弾劾論が上がっていた昨年5月、健康悪化を理由に金氏に辞表を提出したところ、『辞表を受理すると弾劾ができない』との理由で辞表を突き返された。この発言は、林氏が公開した会話の録音データで明らかになった。『辞表を受理したら国会から何を言われるか分からない』との発言もあったとされる」(①)からは、「三権分立が揺らぐ事態となっている」(②)といった事実はない(だからか、①には書いていない。なお、①にある「政権との癒着を示す言動」もない)。

 

筆者は韓国の免官手続きを知らないが、日本の場合、「心身の故障のために職務を執ることができない」(憲法第78条)場合、裁判官分限法

裁判官分限法 | e-Gov法令検索 第1条第1項により「その官の任命を行う権限を有するものにおいてこれを免ずることができる」とされる。それからすると何らおかしくないのだが(「免じなければならない」ではないから)、韓国では違うというのだろうか?もしそうだとしても建石剛記者は何ら説明していないから駄目である。

 

なお、「弾劾案によると、林氏は15年、朴前政権の意向を受け、公判担当の裁判長に、『無罪判決を出すとしても、支局長の記事は虚偽だと明示しろ』と圧力をかけた。可決により、林氏は憲法裁判所で弾劾審判を受ける」というのが間違いないならば、弾劾裁判をするのは何ら問題がない(韓国の弾劾裁判の実際は知らないが、日本の裁判官弾劾法(

裁判官弾劾法 | e-Gov法令検索

)第2条第1号に該当しうると思う(日本国憲法第76条第3項には「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」とあるが、それにも関わらず裁判に介入したら「職務上の義務に著しく違反」(裁判官弾劾法第2条第1号)に該当するだろう。大韓民国第六共和国憲法第103条(『[新版]世界憲法集』(岩波文庫、2007)p363)も同様の規定だから同様の解釈が可能な可能性が高い))。

 

建石剛記者は、韓国のやることはすべて間違っていると思いたいようだが、ただの研究不足で自ら書いた記事が間違っていたということである。

 

3.以上検討した結果は、現時点では、朝日新聞や読売新聞という日本でも有名な新聞でさえ、韓国に関する報道は信用してはいけないということである。法や法制度に対する知識がないがゆえに間違ったことを書くのだから、もっと研究してから書け!

 

(2021年2月6日補足)

『[新版]世界憲法集』(岩波文庫、2007)に、大韓民国第六共和国憲法(現行韓国憲法。以下「韓国憲法」と表記)があるが、法官(裁判官)について。大法院長は、国会の同意を得て、大統領が任命する(韓国憲法第104条第1項)。大法官は、大法院長の提請により、国会の同意を得て、大統領が任命する(同第2項)。それ以外の法官は、大法官会議の同意を得て、大法院長が任命する(同第3項)。本エントリーでは「筆者は韓国の免官手続きを知らないが、日本の場合、『心身の故障のために職務を執ることができない』(憲法第78条)場合、裁判官分限法(略) 第1条第1項により『その官の任命を行う権限を有するものにおいてこれを免ずることができる』」と書いた。日本であれば任命権者は内閣だが(日本国憲法第79条第1項、第80条第1項)、本エントリーで言及した釜山(プサン)高裁の林成根(イムソングン)裁判官の場合、任命権者は大法院長だから(韓国憲法第104条第3項)、日本同様の制度であれば、退職させることができるのはおそらく大法院長だから(同第106条第2項)、「林氏は自身への弾劾論が上がっていた昨年5月、健康悪化を理由に金氏(金命洙(キムミョンス)大法院長のこと。筆者注)に辞表を提出したところ、『辞表を受理すると弾劾ができない』との理由で辞表を突き返された。この発言は、林氏が公開した会話の録音データで明らかになった。『辞表を受理したら国会から何を言われるか分からない』との発言もあったとされる」(①)の部分は、記事や韓国憲法の限りでは何ら問題はない。なお、①には「文政権側に立つ」ともあるが、韓国は大統領制であり、なおかつ弾劾訴追は大統領ではなく国会の権限だから(韓国憲法第65条第1項)、「文政権側に立つ」かどうかは関係がない。