YOMIURI ONLINE「西岡議長、本紙に寄稿「首相は即刻退陣を」」（2011年5月19日03時04分。なお、題名紹介のため、「本紙」としました。http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110518-OYT1T01292.htm）
によると、「西岡参院議長は１８日、東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所事故への菅首相の対応を厳しく批判し、一刻も早く退陣するよう求める論文を読売新聞社に寄稿した」という。あとで本文を検討するが、「断腸の思い」、「身命を賭して」と書いていないで、自分が「断腸」して「身命を賭し」たほうがいい内容だと思った。佐高信さんの本で見たが、石橋湛山さんは、山形有朋さんについて、死ぬのも社会貢献だと言ったとか。私は西岡さんに言ってみたい。それくらいひどい内容だった。以下、読売新聞2011年5月19日朝刊13版6面(仙台では)に基づいて検討する。
「地方自治体の長、議員の皆さんも、菅首相に対する不信と不安を持っておられる」のは当たり前。そもそも、現政権は、衆議院では議席過半数だけど、得票は過半数でない、つまり過半数が支持していない状況なのである（「菅政権 過半数のね 支持がない 」（http://blogs.yahoo.co.jp/kiyotaka_since1974/51880992.html）
参照)。また、地方自治体は、長であれ議員であれ(誤読の可能性あり)、民主党の支持者が少ないことぐらい、常識だろう。
「中国漁船衝突問題の時も、首相としての責任を放棄された」というが、これは検察の仕事で、首相はしゃしゃり出てはいけないんじゃないか? 中国人の犯罪が疑われる場合、いちいち首相が出なければいけないの?
「首相はなぜ、3月11日以降、直ちに『緊急事態法』をまとめ、立法化を図らなかったのか」?簡単。図っても、時間がかかるから(参議院で民主党と国民新党で過半数の議席がないのは、西岡さんご存知でしょう）。
「多くの会議を作り、指揮命令系統をあえて混乱させてきました。これは、首相の責任を曖昧にして、決断を延ばすための手法です」→そんなことをしたら次の選挙、落ちます。つまり、合理的説明になっていません。会議の数が問題ではなく、菅さんのやりいいようにするのが肝要のはずである(危急時ではリーダーシップが平時より求められることに反対する人はいないだろう)。
「首相が、10万人もの自衛隊員に出動を命じるのに、安全保障会議を開かなかったことです」というが、そんなにダメなことなのか? 佐々淳行ホームページ「危機管理小論 2010～11年 東北関東大震災について（2011.3.29）」（http://www.sassaoffice.com/cn16/pg137.html）
によると、「災害対策基本法第２８条の２「緊急災害対策本部の設置」は、同法制定後初めてのことであり、阪神大震災時の村山内閣よりは一歩前進」とのこと。つまり、悪いところばかり見ている風にしか見えない。
「首相が初動段階で、米軍の協力の申し出を断ったことが大きな判断の誤り」って。それじゃ、「協力の申し出」は絶対に断るな、とでも? 「協力の申し出」に対する判断は、とっさのものであり、非難すること自体が問題だろう。
「今の時点で、緊急になすべきことは、『8月上旬』などと言わず」って、調整やら議席構成やらでできないんだろ。会議の時にも書いたが、菅さんのやりやすいようにやらせてやれよ。もちろん、「法律を無視している」ことがあれば問題だが、それについては判断を控える。
「正確で真実の情報を知らせるべきでした」って、一刻を争う中で、100％「正確で真実の情報」などでまい。「東電も首相も、知っていたのではないかという疑い」については、東電については動機があるが、菅さんの動機を説明できていないのでは、駄々をこねているだけだ。
「予算の裏付けはありません」というが、現状では、予算だけあっても法律を通すことができない。だから、自由民主党に連立を打診したのだ。
「政権の座に居続けようとするための手法」とも書いているが、いいんじゃないの? 一般論としては、「首相の座を去る」ことのほうが無責任じゃないの? 報道の限りでは、致命的ミスを犯したようには見えないが。
まぁ、こんな手記を書いているほど、参議院議長は暇なのだろう。繰り返すが、「断腸の思い」、「身命を賭して」ということを、言い出しっぺの西岡さんが実行してもらいたい。腸を断ち、命を絶つことこそが、西岡さんの場合に限って、社会貢献である。できない? なら言うなよ、西岡さん。
*2011年5月21日追記
時事通信（http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011051900330）
や、MSN産経ニュース（http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110519/stt11051911070001-n1.htm）
によると、読売新聞にしか寄稿していない模様。発行部数1だからという理由も考えられようが、取材対象からの独立を考えない、渡邉恒雄さんがトップのこの新聞（魚住昭『渡邉恒雄 メディアと権力』（講談社文庫、2003年）をご一読ください）。もしかして、西岡さんに寄稿するようにそそのかした? そうなら、スーパースキャンダルですぞ。
**文中一部敬称略
