清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

要人に 声を届けちゃ いけないの?

某日、BS-TBSで2020年7月18日10時から放送された「ドキュメントJ ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に」を観た。2020年7月31日時点でYouTubeで観られるので、以下リンクを貼っておく。

www.youtube.com

 

いろいろな感想はあろうが、この番組を観るのに大事なことは、演説を聞く人の権利のみを考慮してはいけないということである。首相(内閣総理大臣)や有力政治家に自らの声を届けるというのは容易ではなく(手紙であれば読んでもらったかわからない)、演説の時のヤジやプラカードというのは貴重な場だからである。

 

それにしても北海道警察の対応はひどい。集団で演説を邪魔したのではなく、個々で「安倍やめろ」と言っただけなのに、警察に、それも大勢の警察官に連れていかれる。声を上げた女性は人として失礼な対応をされている(子ども扱い)。

 

声を上げた人のみが大勢の警察官に取り囲まれて排除されたというだけなら(演説の邪魔をしたてめぇが悪いんだろ!)という感想がまだ通用するかもしれないが(本当は間違い。後述①)、「年金100年安心プランどうなった」という、首相に対する誹謗中傷ではないただの質問のプラカードを掲げただけでも大勢の警察官に囲まれて排除された。「安倍首相を支持します」というプラカードを掲げた人で排除された人は誰もいない(後述②)。

 

先ほど「北海道警察の対応はひどい」と書いたが、埼玉県警察も負けてはいない。ある男性が「柴山(当時文部科学大臣。筆者補足)やめろ」と言ったところ大勢で取り囲み、その男性のベルトを壊した。

 

このような警察の対応について問題があるというのが、制作した北海道放送の見解と見てよい。

 

もちろん、放送社なのだから、感情的に(安倍は許せねぇ!)だとか(一般市民の側に立てば法はどうでもいい!)と言っているわけではない。

 

まず、ヤジを飛ばすことについて(後述①のところ)。番組によると、1948年の最高裁判例において「聴衆がこれを聴きとることが不可能又は困難ならしめる所為は演説の妨害」としている。日本大学教授(政治学)の岩井奉信(ともあき)さんによると、組織的にやっているわけではない等の理由で今回のは演説の妨害ではないとする。筆者が聴いた限りでも1948年の最高裁判例に示されているような事実はなかった。なお、これらについて、Charlotte Elizabeth Dianaさんの『Note』「選挙演説のヤジの違法性」がよくまとまっているので、リンクを貼っておく。

note.com

 

次は後述②の部分。プラカードがいけないならば、「安倍首相を支持します」もいけないことになる。しかし、「年金100年安心プランどうなった」だけ排除では、「警察の中立性の確保」(動画の36分58秒)からは程遠い。

 

もちろん、○HCテレビジョンとは違って、北海道放送は、普通というか、マシな放送局なので、警察側の言い分も取材している。今回のヤジやプラカードの排除の措置の法的根拠は、以下の警察官職務執行法第4条、第5条なのだという。

 (避難等の措置)
第四条 警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発、狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等危険な事態がある場合においては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、若しくは避難させ、又はその場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。
(第2項略)
(犯罪の予防及び制止)
第五条 警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があつて、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。

 

しかし、「犯罪がまさに行われようと」(警察官職務執行法第5条)した瞬間は発見できなかったし(番組の限りで)、「人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある」「工作物の損壊」、ならびに「極端な雑踏等」(警察官職務執行法第4条)という状況も発見できなかった(番組の限りで)。

 

なお、北海道警察は、ヤジ等の排除につき、「警察官からの聞き取りやインターネット上の動画などで事実を認定した」と言っているようだが、「排除された当事者から話を聞いていない」という(この段落のここまでのカギカッコ内は番組より引用)。番組を観る限りではそもそも公職選挙法第225条第2号の「選挙の自由を妨害したとき」に該当する事実は発見できなかったうえに、捜査機関が被疑者の言い分を聞いていないのでは公平ではないだろう。

 

これが現在の安倍政権になってからか、以前からなのかはわからないが(Charlotte Elizabeth Dianaさんの『Note』「選挙演説のヤジの違法性」では「安倍首相の街頭演説中のヤジを朝日新聞が擁護⇒民主党時代はプラカードだけで排除 - 事実を整える」という記事を紹介している)、筆者の見る限りでは由々しきことである。

 

なお、番組では、「生活図工事件」等を取り上げ、過去の歴史とのリンクも試みている。

 

現在の日本を考えるうえで有益なドキュメンタリーだったので、上記YouTubeへ是非アクセスを。

 

*ウェブサイトは2020年7月31日現在の内容。