清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

産経記者 不当な起訴は なさそうだ

1.①産経ニュース「本紙前ソウル支局長を在宅起訴 ソウル中央地検 韓国大統領の名誉毀損告発で」(2014年10月8 日20時34分。http://www.sankei.com/world/news/141008/wor1410080042-n1.html

)によると、「産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(48)が書いた朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領に関するコラムをめぐる問題で、ソウル中央地検は8日、「情報通信網を通して虚偽の事実を際立たせた」などとして、加藤前支局長を「情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律」(情報通信網法)における名誉毀損(きそん)で在宅起訴した」という。
 
起訴状は、②産経ニュース「起訴状全文」(2014年10月9日5時7分。http://www.sankei.com/affairs/news/141009/afr1410090010-n1.html
)にあるが、それには、「被告は14年4月16日に発生したセウォル号事故に関連し、朴槿恵大統領の当日の日程が論じられた14年7月18日付の朝鮮日報「大統領を取り巻く噂」というコラムに「大統領府秘書室長の国会答弁を契機に、セウォル号事故発生当日、朴槿恵大統領が某所で秘線とともにいたという噂が作られた」などの文章が掲載されたことを見つけるや、その噂の真偽可否に対して当事者および関係者らを対象に、事実関係を確認しようとの努力などをしないまま、上記コラムを一部抜粋、引用し、出所不明の消息筋に頼り、あたかもセウォル号事故当日、被害者、朴槿恵大統領が被害者、チョン・ユンフェと一緒にいたとか、チョン・ユンフェもしくはチェ・テミンと緊密な男女関係だという根拠なき噂が事実であるかのように報道する記事を掲載しようと考えた」、
 
「上記、朝鮮日報コラムの内容中、「金(大統領府秘書)室長が『私は分からない』といったのは大統領を守るためだっただろう。しかし、これは、隠すべき大統領のスケジュールがあったものと解釈されている。世間では『大統領は当日、あるところで“秘線”とともにいた』というウワサが作られた」などという噂と関連した部分を中心に引用し、「証券街の関係筋によれば、それは朴大統領と男性の関係に関するものだ。相手は、大統領の母体、セヌリ党の元側近で当時は妻帯者だったという。だが、この証券筋は、それ以上具体的なことになると口が重くなる。さらに『ウワサはすでに韓国のインターネットなどからは消え、読むことができない』ともいう。一種の都市伝説化しているのだ」「証券筋が言うところでは、朴大統領の“秘線”はチョン氏を念頭に置いたものとみられている。だが、『朴氏との緊密な関係がウワサになったのは、チョン氏ではなく、その岳父のチェ牧師の方だ』と明かす政界筋もいて、話は単純ではない」との内容の記事を作成した」、
 
「事実はセウォル号事故発生当日、被害者、朴槿恵大統領は青瓦台の敷地内におり、被害者、チョン・ユンフェは青瓦台を出入りした事実がないうえに、外部で自身の知人と会い昼食をともにした後、帰宅したため、被害者らが一緒にいたとの事実はなく、被害者、朴槿恵大統領と被害者、チョン・ユンフェやチェ・テミンと緊密な男女関係がなかったにもかかわらず、被告は前記したように、当事者および政府関係者らを相手に事実関係確認のための最小限の処置もなく、「証券界の関係者」あるいは「政界の消息筋」などを引用し、あたかも朴槿恵大統領がセウォル号事故発生当日、チョン・ユンフェとともにおり、チョン・ユンフェもしくはチェ・テミンと緊密な男女関係であるかのように虚偽の事実を概括した」
 
、とある。
 
③産経ニュース(旧MSN産経ニュース)「【追跡~ソウル発】朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」(2014年8月3日12時。http://www.sankei.com/world/news/140803/wor1408030034-n1.html
】が起訴の原因となった記事だが、その記事は朝鮮日報のコラムの紹介もある。その要旨が④毎日新聞「産経前支局長在宅起訴:朝鮮日報コラム(要旨)」(2014年10月8日23時53分。http://mainichi.jp/select/news/20141009k0000m030103000c.html
)にある。筆者は韓国語ができないので毎日新聞の要約が正しいかはわからないが、とりあえず挙げておく。④によると、「うわさ話に登場していたチョン・ユンヒ氏が離婚していたことまで判明し、事態はさらにドラマチックになった。チョン氏は財産分与や慰謝料の請求をしないという条件で、妻に対し婚姻期間中の出来事について「秘密の維持」を求めた。故・崔太敏(チェ・テミン)牧師の娘婿であるチョン氏は政治家、朴槿恵の7年間の秘書室長だった。チョン氏は最近、インタビューで「政府が公式に、私の利権への介入や(朴大統領の弟)朴志晩(パク・チマン)氏に対する尾行疑惑、裏での活動などすべてを調査すればいい」と大声で怒鳴った」とある。
 
一方、③には「証券街の関係筋によれば、それは朴大統領と男性の関係に関するものだ。相手は、大統領の母体、セヌリ党の元側近で当時は妻帯者だったという」、「コラム(朝鮮日報。清高補足)でも、ウワサが朴大統領をめぐる男女関係に関することだと、はっきりと書かれてはいない」、「おそらく、“大統領とオトコ”の話は、韓国社会のすみの方で、あちらこちらで持ちきりとなっていただろう」とある。
 
④に比べて、③の方が「朴槿恵大統領が被害者、チョン・ユンフェと一緒にいたとか、チョン・ユンフェもしくはチェ・テミンと緊密な男女関係だという根拠なき噂が事実であるかのように報道する記事を掲載しようと考えた」(②)に該当すると思われるので、産経新聞だけが起訴されるのが不当とは思わない。「事実関係を確認しようとの努力などをしない」(②)という事実がなく、③の記事が真実、又は確実な証拠・資料に照らして(最高裁昭和44年6月25日大法廷判決参照)書かれたものであってほしい。
 
 
2.仮に日本でこのようなことが起こったらどうか?③の記事は明らかに朴槿恵大統領(2014年10月10日「ら」を削除)の名誉を毀損する事実が書かれているが、真実か、真実と誤信したことにつき確実な証拠・資料に照らして相当の理由があれば、罰せられない可能性が高い(刑法第230条の2。最高裁昭和44年6月25日大法廷判決)。また、「公務と何ら関係のない事実」(最高裁昭和28年12月15日判決)でもないし(③によると、「旅客船沈没事故発生当日の4月16日、朴大統領が日中、7時間にわたって所在不明となっていた」ことについてだから)。さらに、③が④の紹介として、③だけの起訴を不当とも言えない(起訴便宜主義。刑事訴訟法第248条)。(以下、2014年10月10日追記)加えて、②によると、「被害者、チョン・ユンフェ」とあるから、チョン・ユンフェに対する名誉棄損罪は、朴大統領が公務員でも成り立つ可能性がある(「当時は妻帯者」(③)などから、チョン・ユンフェが不倫していたと読める)。
 
 
3.しかし、韓国はどうもそうではないらしい。
 
韓国の情報通信網の利用促進及び情報保護等に関する法律第70条(国会図書館HP・白井京「韓国におけるインターネットへの法的規制―サイバー暴力と有害サイト規制」(2014年10月9日アクセス。http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/239/023905.pdf
)。なお、はてなダイアリー「nilnil専用チラシの裏 2014年2月14日23時13分 韓国の「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」を訳してみた(その2)」(http://d.hatena.ne.jp/nilnil/20140214/1392300784
)の第70条もほぼ同じ)第1項は「人を誹謗する目的で情報通信網を通じて公然と事実をあらわし他人の名誉を毀損した者は、3年以下の懲役若しくは禁固又は2千万ウォン以下の罰金に処する」とあり、第2項では「人を誹謗する目的で情報通信網を通じて公然と虚偽の事実をあらわし他人の名誉を毀損した者は7年以下の懲役、10年以下の資格停止又は5千万ウォン以下の罰金に処する」とある。
 
情報通信網の利用促進及び情報保護等に関する法律の限りでは、日本と違い、公務員ゆえに真実性だけを証明すれば罰せられないわけではなさそうだ。情報通信網の利用促進及び情報保護等に関する法律第5条(はてなダイアリー「nilnil専用チラシの裏 2014年2月13日22時55分 韓国の「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」を訳してみた(その1)」(http://d.hatena.ne.jp/nilnil/20140213/1392299708
)参照)によると、「情報通信網利用促進及び情報保護等に関しては、他の法律で特別に規定される場合を除き、この法で定めるところによる」とある。大韓民国刑法(2014年10月9日アクセス。http://ja.wikisource.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95_(%E5%A4%A7%E9%9F%93%E6%B0%91%E5%9B%BD)
)参照)第310条によると、「第307条第1項の行為(「虚偽」(307条2項)でない「事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合。清高補足)が、真実の事実であり、専ら公共の利益に関するときは、罰しない」とあるが、大韓民国刑法が一般法で、情報通信網の利用促進及び情報保護等に関する法律が特別法だとすると(あくまで清高の解釈)、真実でも、公共の利益に関するときでも罰せられるふうに読めてしまう。これは懸念材料だが、今回の起訴は、「虚偽の事実」(②)についてであるから、訴因変更がなければ問題にはならない。
 
 
4.当ブログの結論としては、情報通信網の利用促進及び情報保護等に関する法律について、虚偽でない事実について若干の懸念はあるものの、③についての起訴が不当であるという理由が見当たらない、とする。1.で書いたことの繰り返しだが、記事が真実であり、罰せられないことを祈る。
 
*文中敬称略