清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

中国語中傷 不正ラバー 本当?

 東京オリンピック2020の卓球競技・混合ダブルスの初代チャンピオンは、日本の水谷隼さんと伊藤美誠さん。

 

 筆者は日本人なのでめでたいと思っているが(蛇足だが、そう思うのは人間の本能ではないかと根拠なく思っている)、それを祝せない人たちがいるようだ。

 

 今日取り上げる記事は、どちらもニッポン放送NEWS ONLINEである。そもそもは以下の①の記事が目を引き、その流れで②にたどり着いたからである。まず取り上げるのは①「卓球・水谷選手への中国からの誹謗中傷問題を考える 佐々木俊尚 」(2021年8月4日)である。

news.1242.com

 

 記事によると、

  卓球の水谷選手がそうですけれども、中国語でかなりの誹謗中傷を受けているということです(①。佐々木俊尚さんのコメント)

とのこと。

 

 実際そういうことはあるのかもしれないが(筆者未確認)、筆者が確認した限りで水谷さんに対する誹謗中傷であることを本人が明らかにしたものは、2021年7月31日16時37分のツイートくらいである。 

 

そのツイートには、"samidarenioborete"(「2019年7月からTwitterを利用しています」とのこと。水谷さんのツイートより)と名乗る人からのメッセージが示されている。その一部を引用する。

 

 ありえねぇーだろう?お前/嫌われてんだよ

 

 ネットで トレンド入りぐ/らい嫌われてんだよ

 

  最悪やん

 

 人間やめたれよ

 

「ありえねぇー」だとか「嫌われてんだよ」だとか、「最悪やん」だとか「人間やめたれよ」というのが、はたして中国人に打ち込めるのだろうか?日本語を操れるとしたら相当の腕前である。普通は「あり得ない」、「嫌われているんだよ」、「最悪だろう」、「人間やめろよ」くらいか。 水谷さんに対して誹謗中傷する唯一の日本人がsamidarenioboreteさんなのかもしれないが*1、中国人が誹謗中傷した証拠を筆者は発見できていないし、水谷さんも示していない。水谷さんが中国語で誹謗中傷された件は、現時点では(判断)保留案件にした方がよさそうである。

 

 その水谷さん、実は「“卓球帝国”中国を中心としていた『ラケットの不正ラバー使用』」(後述②)を告発したことがあるという。②「
卓球・水谷隼 金メダルの陰で戦い続けた『中国卓球の不正ラバー問題』」(2021年7月27日公開。同7月28日更新)をご一読。

news.1242.com

 

 ②によると、

 国際大会では以前から、卓球ラケットのラバー部分に「グルー」や「ブースター」と呼ばれる接着剤を使用して打球の反発力を強める不正が公然化。この接着剤が人体に悪影響があるとして、2008年に国際卓球連盟が全面禁止を命じても、実質的に野放し状態であることを水谷選手は問題提起

(略)

 この「不正ラバー問題」が改善できない最大の要因は、卓球帝国・中国を中心に世界トップ選手たちが使用をやめないから、とされています(略)

 この水谷選手の“決死の告発”でも不正利用の実態は変わらず、水谷選手も痺れを切らして国際大会に復帰したのが2013年2月。その後も不正ラバー問題は、何も変わらないどころか、悪化している状況にあるといいます(②)

 

 これは(国際卓球連盟は何をやっているのだろう?)と思う人もあろうし、(そもそも「不正ラバー問題」ってあるの?と思う人もあろう。2012年から現在まで放っておかれているとすれば、どちらにしても(なんだかなぁ)と思うしかない。

 

 筆者はどちらの件も水谷さんの主張を本当だと信じたいが、現時点ではどちらも水谷さんの主張を根拠づけるものがない。というわけでどちらも判断保留で、時の経過を待つしかないだろう。

 

 

*1:①によると、「日本人の方はすべて応援メッセージです」という水谷さんのツイートの写真がある。

ここまでハズしたことを書ける 豊浦潤一

 日本における発行部数ナンバーワンの新聞である読売新聞のソウル支局長の豊浦潤一さんがここまでハズしたことを書けるという話。

 

 読売新聞2021年8月1日統合版13版5面「ワールドビュー 日韓打開 いまこそ『有言実行』」を以下引用しつつ検討する。

 

 文政権は、最大の懸案である元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟や元慰安婦訴訟の解決策は脇に置いたまま、日本政府による対韓輸出管理厳格化の解除を引き出せると期待していた*1

あれ、やっぱり徴用工等の訴訟の結果が気に入らないから輸出管理を厳格したわけね?いわゆる日本の輸出管理強化の根拠が怪しいことについては、

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

で検討した。一方、現在の大韓民国である第六共和国において、大統領が判決に介入する余地はないから(『《新版世界各国史》2.朝鮮史』(武田幸雄・編、山川出版社、2000)の第8章をご一読)、日本の方が無理筋である。

 

 このままあてもなく日本の譲歩を待つ「持久戦」を続け、時間切れになれば未解決の責任を「かたくなな態度の日本」に押しつけるつもりではないか*2

とあるが、客観的に日本がかたくなであるのは、豊浦さん自身が「韓国大統領府の幹部は『来年5月の任期切れまで日本と対話の努力をしていきたい』と前向きなイメージの発出に懸命だ」*3と書いてあることからも明らかである。韓国が対話をしようとしているのに日本が拒んでいるだけである。

 

 韓国を取り巻く国際情勢が、日韓交渉を後押しする可能性もある*4

 とあるが、それは日本も同じ。だから不適切な発言をした駐韓総括公使を事実上更迭せざるを得ないのである。毎日新聞デジタル「駐韓総括公使に帰国発令 不適切発言で事実上の更迭へ 外務省」2021年8月1日 15時53分(最終更新 同日 20時52分)をご一読。

mainichi.jp

 

 読売新聞は自由民主党政権の御用新聞と言われる。豊浦さんも自由民主党政権の御用を自覚してか、事実を直視せず願望が先立ったので大ハズレの文章を書いてしまったようだ。

*1:読売新聞2021年8月1日統合版13版5面「ワールドビュー 日韓打開 いまこそ『有言実行』」

*2:*1に同じ。

*3:*1に同じ。

*4:*1に同じ。 

福島県産 回避でメダルの 柔道か

 東京オリンピック2020、日本柔道が快調であった。

 

 それはいいのだが、今日の読売新聞統合版1面「『金』最多9個 歴史刻む」を読んで気になったので、検討する。

 

 (前後略)練習環境は制限され、試合で実戦感覚を養うこともできない。国内外で条件は同じだったが、日本は「地の利」に目をつけた。選手村に入村せず、使い慣れた東京都内の「味の素ナショナルトレーニングセンター」を拠点として調整。*1

 

 これ自体の是非は何とも言えない。開催国の選手が必ず選手村に入るかが明らかではないので。

 

 ただ、この記述通りだと、柔道日本代表は福島県産の食材を食べているかが明らかではない。福島県産の食材で優劣が決まるわけがないが、福島県産の食材を食べているか不明の日本代表の人がいるのに、他国が福島県産の食材を警戒すると非難するというのはつじつまが合わない。今回のオリンピックにおいて、日本恥ずかしいぞ!伝説がまた増えてしまった。

 

なお、本エントリーについては

韓国疲れ?, いや, 韓国批判疲れ の検索結果 - 清高の ニュースの感想 令和版

もご参照ください。

 

*1:読売新聞統合版1面「『金』最多9個 歴史刻む」

韓国疲れ? いや 韓国批判疲れ(4)

  一部妥当と思われるものもあるが(後述。ただし筆者は裏を取っていない)、日本語における韓国批判*1が止まらない。

 

 今日最初に検討するのは、デイリー新潮「五輪で顕在化した韓国の非常識 放射能フリー弁当、アンチ竹島アピール、旭日旗アレルギー」(羽田真代。2021年7月27日。リンクは1ページ目)である。

www.dailyshincho.jp

 

 韓国の選手団は選手村入りするとすぐに「臣にはまだ五千万の国民の応援と支持が残っている」とハングルで書かれた横断幕をベランダ側に掲出した。これは、文禄・慶長の役において朝鮮水軍を率いて日本軍と戦った李舜臣(イ・スンシン)の言葉を借りてきたものだ。スポーツに戦争を持ち込むごとき不謹慎な振る舞い*2

 となると、例えば「日本国民が応援しています」も「スポーツに戦争を持ち込むごとき不謹慎な振る舞い」*3になるな。あ、わかっているんですよ、なぜオリンピック憲章第50条第2項違反となるかが。筆者もわからない。記事に解説もない。IOCを非難できない弱虫認定しておこう。

 

  韓国選手団は、日本の食材は放射能で汚染されている可能性があるとし、独自に給食センターを設置、“放射能フリー弁当”を自国の選手らに供給し始めた。/(略)日本で調達する食材は放射性物質の検査を行っているというが、検査の仕方は極めて杜撰で、パフォーマンスが先走っている印象だ*4

は全然わからない。どう「杜撰」*5なのかを示してもらわないと。後述するが、福島県産食材をアピールする方がよほど問題だろうに。

 

 デイリー新潮の記事でまっとうと思われるのは、

  MBCは、ウクライナ選手団の入場行進の際の説明でチェルノブイリ原発事故の画像を、ハイチ入場では暴動の画像をそれぞれ使っていた

のところくらいか。CNN.co.jp「韓国のテレビ局が謝罪、五輪開会式の中継で『言い訳できない過失』」 (2021年7月26日20時50分)をご一読。

www.cnn.co.jp

 

 選手のスポーツマンシップへの疑義も呈されることになった。

 22日に行われたサッカーの韓国対ニュージーランド戦終了後、ニュージーランド代表のFWクリス・ウッド選手が、韓国代表のMF李東景(イ・ドンギョン)選手の元に歩み寄って健闘を称えあうべく右手を差し伸べ握手を求めたが、李選手はNZの選手と目を合わせることすらせず、差し出された右手を軽くはたいて立ち去ってしまった*6

 について。羽田真代さんはソウル在住のようだが(2ページ目のプロフィール参照)、だからか視野が狭くなってしまったようだ。筆者は2021年7月24日に、柔道男子60キロ級の試合を一部見ていた*7。韓国の金源鎮選手は準々決勝で負けたが(3位決定戦で負けてメダルを獲得できなかったが、その試合は観ていない)、極めて紳士的な対応であった。一方、同じ準々決勝で高藤直寿選手に敗れたジョージアのルフミ・チフビミアニ選手は悔しさを露わにしていた。国不問で人間性の問題に過ぎないのに、ソウル在住とはいえ韓国のみをクローズアップするのはどういう意図なのだろうか?

 

 国連貿易開発会議(UNCTAD)が、韓国を「開発途上国」から「先進国」に変更する案を議決したのは今月2日のことだ。韓国内では正真正銘の“一流国家”になったと喜ぶ声はかまびすしいほどだった。五輪を巡って繰り返された振る舞いが先進国にふさわしいものだったかどうか、胸に手を置いて考えるべきではないだろうか*8

 とほざくが、本エントリーで検討したデイリー新潮のような記事が跋扈する日本に該当するだろうな。

 

 次(といっても最後になるが)に検討するのは、産経新聞電子版「立民・玄葉氏、福島忌避の韓国に怒り『侮辱だ』」(2021年7月28日16時57分)である。なお、玄葉光一郎さんは福島3区選出議員であることも明記されている。

www.sankei.com

 

  立憲民主党玄葉光一郎元外相(衆院福島3区)は28日の衆院内閣委員会の閉会中審査で、東京五輪で韓国が福島県産の食材を避けるために独自の給食センターを設けたり、メダリストに贈られるブーケに放射能の懸念があると一部メディアが報道したことについて「ここまでくると侮辱だ。本当に丹精こめて、思いをもって作っている。食材も(安全性を証明する)GAP認証をしている」と強い怒りを表明し、国際オリンピック委員会IOC)に対する抗議を含め、政府に対応を求めた*9

 について。福島県選出議員であることは理解するが、最高のパフォーマンスを発揮するために食材を選ぶことを否定できないだろう。

 

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

で書いたが、日本だって2018年の平昌オリンピックの時に選手村の食事とは別に日本食を提供する施設を作ったのである。

 

 玄葉氏は、(略)韓国について「感情が優先するとか、科学的合理的な思考が不得手ではないかという声もある。今回、静観したら風評被害は拡大する。IOCに抗議し、厳重注意を求めるくらいはやったらいい」と求めた*10

 とある。本当だろうか。民族差別発言の可能性がある。「『感情が優先するとか、科学的合理的な思考が不得手ではないか』」*11と言ったとすれば、感情が優先だったり、科学的合理的な思考が不得手だということを肯定的に評価しているようには見えない。風評被害も何も、福島県産食材の輸入規制を継続しているのは韓国だけではない。

 

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

 をご一読。

 

 玄葉氏は「復興五輪」の理念が見えなくなっているとして、選手村で福島産の食材をアピールし、選手に発信してもらう取り組みの強化も求めた*12

とあるが、韓国選手団の横断幕よりも政治的プロパガンダの可能性がある(上記「福島産 出すの政治的 プロパガンダ?」をご一読)。先ほど「福島県産食材の輸入規制を継続しているのは韓国だけではない」と書いたが、輸入規制を解くための政治的プロパガンダと解釈できるからである。

 

 このように、今日も韓国に対して憎悪むき出しの記事を2本紹介した。最近関東大震災時の朝鮮人虐殺について本を読んでいるから余計そう感じるのだろうが、関東大震災時から日本人のメンタリティーが変わっていないようで、怖い。

*1:分析ではなく、否定的評価の意味。

*2:デイリー新潮「五輪で顕在化した韓国の非常識 放射能フリー弁当、アンチ竹島アピール、旭日旗アレルギー」

*3:*2に同じ

*4:*2に同じ

*5:*2に同じ 

*6:*2に同じ

*7:トーナメント表は読売新聞オンラインを参照した。

https://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/results/result/bra/JUDM60KG--------------------------/

*8:*2に同じ。

*9:産経新聞電子版「立民・玄葉氏、福島忌避の韓国に怒り『侮辱だ』」

*10:*9に同じ。

*11:*9に同じ

*12:*9に同じ

LGBT 認めたくない 保守派かな

 稲田朋美・元防衛大臣が独自色を強めているらしい。読売新聞オンライン「稲田氏が著書で独自色…自民保守派は反発、安倍氏も距離」(2021年7月25日8時24分)。

www.yomiuri.co.jp

 

 読売新聞の記事によると以下の通り。

 自民党稲田朋美・元防衛相=似顔=が独自色を強めている。今月、著書「強くて優しい国」(幻冬舎)を出版し、性的少数者LGBT)の支援や女性活躍の推進を盛り込んだ。(略)

 

 稲田氏は(略)最近では選択的夫婦別姓をめぐって旧姓を戸籍に併記する案を提唱したほか、LGBTに対する理解増進法案を国会提出しようとした。いずれも、保守派の反発が強いテーマだ。

 

 19日に出版した著書では(略)ひとり親家庭LGBTの支援も掲げ、「『保守』とは多様性を認め、寛容ということだ」と訴えた*1

 

 読売新聞の記事の限りでは、稲田さんの見解は概ねまっとうである*2。ただ、「旧姓を戸籍に併記する」とはいえ夫婦別姓を認める方向性だとか、「LGBTの支援」だとかは、個人の権利を尊重する、リベラルな政策である。「『保守』とは多様性を認め、寛容ということだ」(読売新聞の記事より)というのは間違いで*3、記事に加え、『月刊Hanada』(飛鳥新社)2021年9月号の見出し(読売新聞2021年7月26日統合版12版8面)でも保守派の反発がうかがわれる。というわけで『月刊Hanada』の見出しの一部を。

稲田朋美元防衛相が 左翼の餌食となった動かぬ証拠(山口敬之)

 

LGBT激突大闘論 稲田朋美vs小川榮太郎 LGBT問題で対立する二人が、初めて激突!本来の「保守主義」とはなにかをめぐり議論はヒートアップ!

 

 それにしても、保守派の人がそこまで反発すべきことなのだろうか?以下に紹介する山口真由さんもLGBTの権利に肯定的とはいえないが*4、『リベラルという病』(新潮新書、2017)を読むと、「コンサバの発想の基礎」(p217)は「大いなる自然に対する畏怖」(p216)なわけで、自然はLGBTを造り給うたわけだから、権利を認めることにそれほど否定的にならなくてもいいと思うのだが。

 

*1:アルファベットとローマ数字の全角を半角に改めた。

*2:記事には「旧姓を戸籍に併記する案」とあるが、夫婦別姓を認めればいいだけだと筆者は考える。

*3:「旧来の習慣、制度、組織、方法などを重んじ、それを保存しようとすること」(コトバンク「保守」(精選版 日本国語大辞典の解説)より。

https://kotobank.jp/word/%E4%BF%9D%E5%AE%88-629994 だから、そういうものが「多様性」だとか「寛容」だとかということはないから。

*4:筆者が『リベラルという病』を読んでの感想。

韓国人 「君が代」嫌なの 当然か

 東京オリンピック2021が開幕した。

 

 開会式でMISIAさんが「君が代」を歌ったのは皆さんご存じだろう(後述の記事の写真に載っている)。そのことについて(ただし、MISIAさんは関係ないことをあらかじめお断りしておく)WoW!Koreaが記事にしているので紹介する。題して「東京オリンピックで『君が代』が流れ…『一緒に歌うおばあちゃん、鳥肌』=韓国報道」(2021年7月24日8時22分)。

www.wowkorea.jp

 

 最近の日本では「鳥肌」をいい意味で使うことがあるが、記事のそれは本来の意味である。以下、引用してみよう。

 同時刻*1

ツイッターでは「今、東京オリンピックの開会式を見ているが、ある曲が出てきておばあちゃんが聞くなり後について歌い出し、どうしたのと聞いたら『君が代を歌わなかったら殴られた』『だから知っている』と…本当に鳥肌が立つ」というツイートがアップされて目を引いた。

 実際に、日本植民地時代に強制動員された勤労挺身隊のおばあちゃんたちと遺族が、三菱重工業を相手にした損害賠償請求訴訟の裁判記録には、1930年代後半、国民学校では君が代を教え韓国語を使うと罰を受けたという内容があったと伝えられた。

 

 三菱重工業が被告の事件は調べていないので保留するが、この記事に書かれているツイート(ただし存在未確認)のようなことがあっても不思議ではないし、日本人であれば申し訳ない気持ちにならないとダメだろう。

 

 「『君が代を歌わなかったら殴られた』」とのことだが、関東大震災時においては、「君が代」が歌えるかどうかが命のかかわる問題だったのである。以下、『関東大震災朝鮮人虐殺の記録 東京地区別1100の証言』(西崎雅夫、現代書館、2016)から引用してみよう。

 

 (浅草。筆者補足)公園には、日本刀を持った人達が警戒に当った。 時々皆の真ん中で「君が代」を歌う声が聞こえてくる。朝鮮人かどうかを見分けるのだそうだ。真夜中、なんともいわれない深刻な命がけの「君が代」であった*2

 

よそ者を見つけては近所の若者が朝鮮人かどうか調べていました。君が代を歌えと言われて、東北から来た人は訛ってうまく歌えず、朝鮮人と間違えられたとも聞きました*3

 

前方に停められている人たちには、「君が代を唄って見ろ」と怒鳴っている。唄の発音がおかしければ逮捕されるのだろう。私たちの言葉と顔つきが朝鮮人ではないと認められて通行を許された*4

 

 朝鮮半島の人(ルーツ含め)が「君が代」を聞くと鳥肌が立つのは当然だということを、日本人は理解すべきであろう。また、「君が代」に反対する人にも理由があることも。もっとも、だからと言ってすぐに国歌を変えるべきかは別の話だが。

 

*1:2021年7月23日午後。

*2:関東大震災朝鮮人虐殺の記録 東京地区別1100の証言』p277。宮本筆吉の証言。なお、本文にはオリジナルも示されているが、本稿では省略した。

*3:前掲書p305。松村君子の証言。

*4:前掲書p319。北園孝吉の証言。

現代に つながる「中国人 虐殺」

 いきなりで恐縮だが、最近読んだ『関東大震災 中国人大虐殺』(仁木ふみ子、岩波ブックレットNO.217、1991)が印象に残ったのでその話を。

 

 まだちょっと早いが、1923年9月1日は関東大震災関東大震災については

関東大震災とは - コトバンク をご一読。関東大震災において流言蜚語を原因として朝鮮人が虐殺されたことは日本人であれば(というより、世界中の人が。災害の教訓として)知っていなければならないが、中国人も社会主義者も、そして間違えられて日本人も殺されたのである。そのうち中国人に焦点を当てたのが前述『関東大震災 中国人大虐殺』である。

 

 中国人虐殺の詳細については『関東大震災 中国人大虐殺』に譲るとして、その本のp65からの「なぜ?を問い続けて」が印象的だったので、以下引用しつつ検討する。

 

 なぜこういう事件(中国人虐殺事件。筆者補足)が起こったのか。中国人虐殺事件は朝鮮人虐殺事件同様、その要因が戒厳令そのものに帰することは明らかである。*1

 戒厳令については

戒厳令とは - コトバンク を一読してもらうとして、東日本大震災においても出されなかったわけであるから、おそらく関東大震災時も出す必要がなかった。戒厳令が民族虐殺につながるというのは怖いことである。

 

 狂気の夜が明けて、もう殺すべき「敵」(朝鮮人のこと。筆者補足)はいなかった。索敵する血に飢えた軍隊の前に生贄に供されたのが中国人労働者たちであった。*2

 あり得ることで、恐ろしい。

 

  中国人労働者も日本人人夫も同じ底辺労働者である。問われるべきは「労働行政」のまずさであり、「支那人原文ママ]労働者取締」行政のまずさであった。/にもかかわらず、人夫たちは煽動されて、仲間であるべき中国人労働者の虐殺部隊になってしまった。「外国人労働者政策」が、中国人集団虐殺のもう一つの要因となったのである。 *3

 『共産党宣言』には「万国の労働者よ、団結せよ」とあるのは有名な話だが(

万国の労働者よ、団結せよ!とは - Weblio辞書 参照)、労働者というのはそういうもので、あるカテゴリーの人は高給で、あるカテゴリーの人は薄給というのではうまく行かないのだ。同一価値労働同一賃金を目指すのは当然である。

 

 「脱亜入欧」をめざす「日本の近代化」がもたらしたアジア人蔑視の精神の奇形は、多くの日本人を毒していた。*4

 これは今でもそうである。ホロコーストを事実としてそれをコントで揶揄として取り入れた人は解任されたが、中国人差別と取れる舞台を作った人は参加でき、また関東大震災時の朝鮮人虐殺を否定するかのような動きをした東京都知事がいまだに辞任していないことにつき、当ブログ「ユダヤ系に ビビっただけの 日本だ(小池都知事 まだのうのうと しているの?(2))」をご一読。

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

実は、これが言いたいがために『関東大震災 中国人大虐殺』を引用しつつエントリーしたという一面がある。

 

 (中国人虐殺事件。筆者補足) を追うことは、日本人及び日本社会のもつ致命的欠陥を凝視することになるのだが、「外国人労働問題」は、まさに現代の問題であり、「入管」行政、底辺労働、労働ブローカー、ピンハネは、今(1991年。筆者補足)もあのときと変わらない。いじめの構造も、異質のものと共存できない体質も、「脱亜入欧」の観念も、右にならう習性もまるっきり変わっていない。*5

 上記引用部分は、今(2021年7月25日現在)でも当てはまる。「『外国人労働問題』」ならびに「『入管』行政」はいちいち示さないが今も新聞をにぎわすことがある。「『脱亜入欧』の観念」は既述した。「右にならう習性」は、例えば「今はオリンピックなのだから反対せずに盛り上がろうぜ!」みたいな見解に従わされることをイメージした。オリンピックを楽しむか、批判するか、は、犯罪をしないかぎりは個々人の自由である。

*1:関東大震災 中国人大虐殺』p65 

*2:前述書p66 

*3:前述書p67

*4:前述書p67 

*5:前述書p70