清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

「短絡的」 「安易」 さらなる苦境かな

 2022年7月8日に、安倍晋三・元内閣総理大臣が銃殺された。

 

 この件につき、根拠はいちいち示さないが、犯行と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を結びつけることについて、「短絡的」だとか「安易」だとかの評価があるように思う。

 

 しかし、NHK NEWS WEB(など)が報じたところによると、

 安倍元総理大臣が奈良市で演説中に銃で撃たれて死亡した事件で、逮捕された容疑者が事件を起こすことを示唆する手紙を直前に投函していた疑いがあることがわかりました。
手紙には宗教団体*1に対する恨みが書かれ、安倍元総理大臣については「本来の敵ではない」などと記されていて、警察は、容疑者が出したものか確認を進めるなど詳しく調べています

とのこと。NHK NEWS WEB「安倍元首相銃撃事件 事件起こすこと示唆の手紙 直前に投函か」(2022年7月17日19時14分)をご一読。

www3.nhk.or.jp

 

 筆者は、銃殺事件が起こった時、真っ先に思ったのは、左翼は、いわゆる「アベガー」の人の政治目的のテロだと思った。ただ、そう考えると、(とっくの昔に総理大臣をやめたのに、なぜ今?)という疑問がぬぐえなかった。

 

 次に、北方領土交渉に不満を持つ人の政治目的のテロだと思った。しかし、そうなると、現状で国後島択捉島色丹島歯舞群島*2、すべてが引き渡されていないわけで、現状維持である。生前の安倍晋三政権が2島先行返還論に沿って交渉しようとした事実が仮にあっても*3、実際は1島も返還されていないのだから、これを動機とするのは難しい。

 

 しかし、安倍晋三が、「友好団体」の集会にビデオメッセージを送り、被疑者が旧統一教会との関係を供述し、手紙まで見つかったとすれば、よほどのことがない限り、被疑者の動機は旧統一教会に対する恨みであるとしてよく、それは「短絡的」でも「安易」でもないと思うが、いかがであろうか。

*1:世界平和統一家族連合、以前の統一教会のこと。

*2:後2者は、日ソ(ソビエト社会主義共和国連邦を継受しているのが現在のロシア共和国である)共同宣言において「平和条約が締結された後に現実に引き渡されるもの」(日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言第9条)とされている。

*3:例えば、時事ドットコム「【地球コラム】日ロ交渉、「2島返還」戦略は破綻か」(2022年7月17日アクセス。

https://www.jiji.com/jc/v4?id=20190709world0001

)によると、「日本側は「4島返還」から「2島返還」に絞って交渉する方針に譲歩した」とある。

民主主義 否定しちゃった 読売が

 お気の毒なことに、安倍晋三・元内閣総理大臣が、2022年7月8日に銃殺された。

 

 読売新聞社は相当なショックを受けたらしく、批判と中傷の区別もつかず、安倍晋三、ならびに民主党立憲民主党について歴史修正するほど壊れてしまっているようだ。以下、3本の記事をご一読。

「批判と中傷 区別ができぬ 読売が」

https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/entry/2022/07/09/183059

「読売が 安倍につき 歴史修正」

https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/entry/2022/07/13/225042

「読売が 立民につき 歴史修正」

https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/entry/2022/07/14/233208

 

 そして今度は、民主主義を否定してしまった。それは、読売新聞2022年7月16日社説「安倍氏国葬に 内外の悼む声を踏まえた判断」である。

www.yomiuri.co.jp

 

 社説によると、

 国葬という最高の形式に、異論がある人もいよう。だが、不慮の死を遂げた元首相の追悼方法を巡って日本国内が論争となれば、国際社会にどう映るか。そんな事態を、遺族も望んではいまい

とのことだが、日本のことであり、人権問題でもないのだから、「国際社会」がどうあろうが、論争があったらあったでいいのではないだろうか。それにしても、遺族が国葬を望んでいるとすれば、虫のいい話にしか見えない。一般市民は、たいてい自分、または家族で葬式費用を工面するものである。

 

 これは筆者の偏見ではない。『「諸君!」「正論」の研究(略)』(岩波書店、2011)という好著のある上丸(じょうまる)洋一さんのツイートもそうである*1。2022年7月16日12時27分のツイート。

 

 言葉を誤用し、歴史修正し、民主主義まで否定する。読売新聞の壊れっぷりが深刻である。偉大ではあるが、1人の政治家が銃殺されたくらいで。

*1:というか、上丸さんのツイートを読んで、客観性がありそうだと思ったので、本エントリーを作った。

自公がね いいとしか言わぬ メディアかな

 2022年7月12日に放送された、NHK総合クローズアップ現代」をたまたま観た。その模様は下記リンクから。

www.nhk.or.jp

 

 会社が苦境であるがゆえに、労働組合が推す政党ではなく、自由民主党に入れようというのはそれなりに理解する。

 

 しかし、自由民主党は、日本経団連が唯一と言っても支持する政党である。例えば、「主要政党の政策評価 2021」

http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/088.pdf を見ると、与党の政策を「高く評価できる」とし、最後は「期待する」で締められている。そして、自由民主党の政策について多くのスペースを割いている。それはいいが、そうなると、労働組合の言い分はたぶん聞かれないであろう。誰であれ、経営者というものは、費用にすぎない労働者の賃金など上げたくないのである。日本労働組合総連合(連合)の芳野友子会長が自由民主党接触すること自体は悪くないが*1、おそらく限界があると予想する。

 

 それはさておき、注目すべきは、以下のところ。

有権者が野党に新たな役割を期待するようになっていることを示す、最新の調査もあります。京都府立大学の秦正樹准教授が、去年の衆議院選挙の際、4,100人を対象に行った調査です。

 

新しい野党があるとすれば、どんな野党に投票したいかと聞いています。このグラフは、右に行くほど望ましい、左に行くほど望ましくないことを示しています。与党への姿勢を聞いたところ、原則対抗という姿勢よりも、連立政権を組んだり、是々非々路線というのを望む傾向が見られました。(ここまでが、桑子真帆キャスターのアナウンス)

 

政治行動論が専門 京都府立大学 秦正樹准教授
「分析を間違えているんじゃないかと思いました。何度も何度もデータを確かめて。10年前は、批判する野党がすごく好まれていたはずなんですね。有権者は『それがあるべき姿だ』と言っていたわけです。それが10年後の今、むしろ左の人の方が常に怒っていて、『何をそんなに怒っているんだ』と、『前向きじゃない』と。『怒りは何の得も生まない』というけれども、そういうイメージが相当あるんだろう。
その反射的な反応として1つあるのは、日本維新の会、国民民主党がやっているような与党に対して反対するところは反対するけれども、(部分的には)賛成する。いわゆる是々非々路線というものが、今までなかった路線の1つとして存在する」

 

実際は、どの野党も「『与党に対して反対するところは反対するけれども、(部分的には)賛成する。いわゆる是々非々路線』」であることは、国会の法律案の賛否を調べればわかるだろう*2おそらく、伝える側が、きちんと伝えてないからだと思う。これも筆者の調査能力のなさを許してほしいのだが、試みに「立憲民主党 与党案 賛成」をツイッターで検索した結果を示すので、各自で調べてほしい。

https://twitter.com/search?q=%E7%AB%8B%E6%86%B2%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%85%9A%E3%80%80%E4%B8%8E%E5%85%9A%E6%A1%88%E3%80%80%E8%B3%9B%E6%88%90&src=typed_query

 

「『10年前は、批判する野党がすごく好まれていたはずなんですね』」というのは実は示唆的で、10年前の野党は、自由民主党であり、公明党である*3

 

 何が言いたいかというと、伝える側が、自由民主党公明党、ならびにそれを支持する人に有利なことしか伝えていないのではないか、ということである。現在のあきらめや(イメージとしての)是々非々路線支持と、10年前の「『批判する野党がすごく好まれていた』」の根本は同じではないだろうか。

 

 メディアが事実を伝えることを重視すれば、現在よりは与党(自由民主党公明党)の支持率が下がると筆者は根拠もなく予想するが、読者としては、メディアの報道を鵜呑みにするのではなく、とりわけ(現在の)野党の政治家のツイートでも探して、野党の主張を理解することもした方がいいかもしれない。

*1:労働組合が政党ベッタリではいけないことを筆者に教えてくれたのは、木下武男『労働組合とは何か』(岩波新書、2021)である。

*2:と書いたが、筆者が現時点ですべてを調べたわけでもない。読者も調べてほしい。ただ、内閣提出法案すべてに反対している政党があるというのであれば、教えてほしい。

*3:ウィキペディア「野田内閣(第1次改造)」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E7%94%B0%E5%86%85%E9%96%A3_(%E7%AC%AC1%E6%AC%A1%E6%94%B9%E9%80%A0)

、ならびに首相官邸HPのアーカイブズ「平成24年4月5日 参議院予算委員会・本会議 衆議院本会議」

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/4410784/www.kantei.go.jp/jp/noda/actions/201204/05shu_san_hon.html 

を参照。ただし、2012年4月の話ではあるが、7月時点でも野田内閣(第2次改造)である

読売が 立民につき 歴史修正(読売が 安倍につき 歴史修正(2))

 「読売が 安倍につき 歴史修正」の、実質的な続編である。すなわち、今回も、安倍晋三に絡んだ件で、読売新聞が歴史修正しようとしている様をあぶりだしてみよう。なお、今回は、立憲民主党についての歴史修正である。

 

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

 

1.苅部直「『私たち』の連帯 構えは堅固か」(読売新聞2022年7月13日統合版12版27面)

 たしかに、

 事件の当日に、その原因を自民党政権の過ちに求め、自業自得と揶揄するような発言が、野党の政治家から飛び出たのは残念だった。ライバルどうしが対立をこえた結束を示すべき日に、党利しか考えないまま放言し、「私たち」の間に分断を作り出すものとしか思えない。

は正しい。朝日新聞デジタル小沢一郎氏『自民党の長期政権が招いた事件』 安倍元首相銃撃で持論」(2022年7月8日21時30分)のことであろう。

www.asahi.com

しかし、「読売が 安倍につき 歴史修正」で取り上げた、「安倍元首相 銃撃」*1にある「昭和史の知見を踏まえ」*2というのと、小沢さんの見解は、似ている。すなわち、小沢さんは、こう言っている。上記朝日新聞デジタルより。

(前略)「日本の戦前の歴史も、世界の歴史でも、社会が不安定になると、このような血なまぐさい事件が必ず起きる。端的に言えば、自民党の長期政権が招いた事件だと言わざるを得ない」

 

 演説後に記者団に発言の真意を尋ねられた小沢氏は「社会が安定して良い政治が行われていれば、こんな過激な事件は起きない(以下略)」

それを立憲民主党に対してのみ批判の矛先を向けるとは何事か。苅部直さんは信用できないとみていいだろう。

 

 そんな因果関係を憶測できるなら、野党勢力が「アベ政治を許さない」などと叫び、政策よりも首相個人を攻撃し続けたことが、全能の権力者であるかのような幻想を生み、犯行の背景をなしたという想像もなりたつはずではないか。

野党勢力とやらの攻撃に関わらず、読売新聞もそう分析している。「批判と中傷 区別ができぬ 読売が」

https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/entry/2022/07/09/183059 で取り上げた平沢勝栄さんの見解、ならびに「読売が 安倍につき 歴史修正」で取り上げた「聴衆に近づきたい政治家・急な予定変更…警護にジレンマ[スキャナー]」の、以下の表現が根拠である。

 安倍晋三・元首相のような大物

(中略)

 だが、事件を受け、政府・自民党内では、安倍氏が歴代最長政権を築きその政治主張に反感を持つ人が多かったことを踏まえ、「警護体制は極めて不十分だった」(政府高官)との認識が広がっている。

 -政治部 栗山紘尚「『聴衆の近くに』ジレンマ」(スキャナーの一部分)

 

 つまり、苅部直程度の想像は、とっくに「政府高官」や自由民主党を支持すると思われている*3読売新聞の記者がやっているのである。

 

2.「読売が 安倍につき 歴史修正」において、高等教育の無償化に着手したのを安倍晋三と認定したことにつき、事実(野田佳彦内閣総理大臣の時の民主党国民新党連立政権の時に経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(国際人権規約A規約)第13条第2条(c)の留保を撤回したのが「着手」である)を指摘しておいたが、高等教育無償海外にも、立憲民主党に対して中傷することによって歴史修正を試みている。その舞台は、読売新聞2022年7月14日社説「低迷する野党 説得力のある政策が不可欠だ」である。

www.yomiuri.co.jp

 

  立民は「生活安全保障」をキャッチフレーズに掲げ、時限的な消費税減税や年金の追加給付などを訴えたが、財源の裏付けは曖昧だった。現実味の乏しさを有権者に見透かされたと言えよう。

日本の政治のレベルの低さに辟易させられるが、一応立憲民主党は、法人税所得税について言及している。立憲民主党HP「『一億総中流社会』の復活」をご一読。

https://cdp-japan.jp/visions/change7things/02

 

 一方、自由民主党の目玉政策である、防衛費GDP2%の財源はどうか。財源は「経済成長を実現」のようだが*4、身内の石破茂・元防衛大臣にも「財源をきちんと議論しておかないと、次の時代に対して無責任だ」と言われる始末である。時事ドットコム「防衛費増、財源とセットで 自民・石破元防衛相インタビュー【22参院選】」(2022年6月21日7時)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062000766&g=pol をご一読。

 

 この件については、相対的に、安倍晋三・元内閣総理大臣が誠実で、国債を財源とすべきであるとした。東京新聞「防衛費倍増、財源示さず 選挙後に改憲論議加速か<参院選2022>」(2022年7月11日6時)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/188791 をご一読。

 

 ともあれ、読売新聞社説にある「財源の裏付けは曖昧だった。現実味の乏しさを有権者に見透かされたと言えよう」は、自由民主党の公約にも言えるのに、立憲民主党のみ財源の裏付けを求めるというのでは、アンフェアである。

 

3. それにしても、読売新聞だけに限らないが、最近は、自由民主党などの与党には問わないのに、立憲民主党などの一部野党にのみ過剰に求めていないだろうか。そういう姿勢が与党を甘やかし、政治から緊張感を失わせるのである。分析するなら、妥当な基準で、なるべく1つの基準でやってほしいものである。

 

*1:読売新聞2022年7月12日統合版12版19面のタイトル。

*2:「安倍元首相 銃撃」からの引用。

*3:記事の内容から筆者が判断した。

*4:自由民主党令和4年参議院議員選挙公約」より。

https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/202206_manifest.pdf

勝共と 自民党って 似てるよな

 まず、国際勝共連合HP「写真で見る国際勝共連合の歩み」をご覧いただこう。

www.ifvoc.org

 

 最初の写真の説明は、

国際勝共連合創設時に揮毫される創設者の文鮮明総裁(1968年)

とある。

 

 文鮮明*1って誰?というのは少々白々しいか。現在の世界平和統一家庭連合(かつての世界基督教統一神霊協会(略称は統一教会))の創始者、かつ、国際勝共連合の結成者である。コトバンク文鮮明*2参照。

kotobank.jp

 

 文鮮明が結成者である「国際勝共連合」のホームページ

https://www.ifvoc.org/ を見てみると、

私たちが同性婚合法化に「断固反対」する理由

 

選択的夫婦別姓制度 やっぱり危ない!5つの理由

という文字が躍っている。

 

 これらを見て思ったのは、自由民主党の見解に一致しているということである。東京新聞「選択的夫婦別姓制度、自民以外の7党は『○』 市民有志が主要政党に政策アンケート」(2022年6月20日21時38分)をご覧あれ。

www.tokyo-np.co.jp

なお、筆者が読んだ限りではタイトルと内容が一致しないが、ハフィントンポスト日本版「『同性婚』や『選択的夫婦別姓』に党として賛成しないのはなぜ?河野太郎広報本部長インタビュー【U30×自由民主党】」(2022年6月14日7時)もご一読。

www.huffingtonpost.jp

 

 東京新聞の記事からアクセスできる「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト-参議院選挙2022-」

https://choiceisyours2021.jp/ の10.「性的マイノリティ」「同性婚の法制化を実現しますか?」という質問における自由民主党の回答は、

憲法24条は、婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立すると 定められており、現行憲法の下では、同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない」というのが政府の立場であり、わが党も同様に考えています(以下略)

である。

 

 一方、国際勝共連合HP「私たちが同性婚合法化に断固反対する理由」によると、以下のとおりである。

しかし日本国憲法では、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」すると定められています(24条)。

ですから国は、同性婚を法律上の婚姻として認めることはありません。戸籍上に「婚姻」と記載したり、税制上の配偶者控除を適用したりすることはできないということです。これを変えるには憲法を変えなければなりません。

 

 ちなみに、「同性婚の法制化を実現しますか?」の質問に反対なのは、自由民主党のみである。

 

 次に、08.「ジェンダー平等」「望まない改姓や不本意事実婚をゼロにするために、選択的夫婦別姓制度の導入が議論されています。カップルの双方が戸籍上のせいを維持したまま、婚姻関係を結ぶことができる、選択的夫婦別姓制度を導入しますか?(略)」の自由民主党の回答は「-」である。その理由を引用してみよう。

〈その他〉

令和3年最高裁大法廷の判決を踏まえつつ、氏を改めることによる不利益に関する国民の声や時代の変化を受け止め、その不利益をさらに解消し、国民一人一人の活躍を推進します。

 

 一方、国際勝共連合HP「『選択的夫婦別姓 制度』やっぱり危ない!5つの理由」

https://www.ifvoc.org/problem_fufubessei/ の方が、自由民主党の見解より過激であるが、この論点も、自由民主党以外の参加全党が賛成である。

 

 なぜ似ているのだろう?自由民主党は、国際勝共連合と何か関係があるのではないか?と思うのは自然だと思う。

 

 安倍晋三が銃殺されたことにつき、犯人を許すことができないのは言うまでもない。しかし、自由民主党のみが異彩を放った見解であり*3、それが国際勝共連合と似ているのであれば、何らかの説明を求めてもおかしくないのではないだろうか。

 

 というわけで、安倍晋三のためにも、また、これ以上のテロ行為が生じないためにも、自由民主党国際勝共連合の関係に踏み込むことが報道機関に求められると筆者は考える。

 

*ウェブサイトは、すべて2022年7月14日アクセス。

*1:故人につき敬称略。

*2:日本語読みである。

*3:他にもあるかもしれないが、本エントリーで検討した2つの論点に限っての話であることをお断りしておく。

読売が 安倍につき 歴史修正

 読売新聞が、安倍晋三について歴史修正しているという話。こういう不正確な情報を受け取れば、自由民主党がよくて批判する野党がダメだと解釈する人がいても不思議はないという出来であった*1。以下、引用しつつ検討する。

 

1.読売新聞2022年7月12日統合版12版10面「安倍元首相 教育改革に尽力」

 

(前略)安倍氏の主導で「教育の憲法とも言われる教育基本法を1947年の制定以来、初めて改正。教育目標に「我が国と郷土を愛する態度を養う」との表現で「愛国心」を新たに盛り込んだ。

 これ、本当にいいのか?児童・生徒の思想・良心(憲法第19条参照)に踏み込む内容だけど。それのみならず、現在の教育基本法第16条第1項の「教育は、不当な支配に服することなく、この法律および他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」というのも改悪である。文部科学省HP「昭和22年教育基本法制定時の条文」(2022年7月12日アクセス。

https://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/a001.htm )の第10条第1項「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」を変えたものだが、法律が「不当な支配」になることくらい想像できるだろうに。まぁ、批判と中傷を区別できないほどの日本語能力の記者しかいない読売新聞だから仕方ないか*2

 

 改革の一つが「道徳」の教科化だ。2011年に大津市で起きた男子中学生のいじめ時間が発端となり、小学校で18年度、中学校で19年度から「特別の教科」となった。実際、教科書には、いじめを題材とした記述が盛り込まれた。

 「道徳には教科化がなじまない」との意見もあったが、「他者をいたわる心や規範意識は国が責任をもって教える必要がある」との安倍氏の強い信念で実現させた。

 もちろん、「『道徳には教科化がなじまない』との意見」が正当なのは、愛国心を盛り込んだ教育基本法「改正」の場合と同じ理由だが、筆者の知る限り、「『他者をいたわる心や規範意識』」を持てばいじめがなくなるということは聞いたことがない。実際は、先生が目を光らせることであったり、ストレスを緩和・コントロールする方がいじめが防げる可能性があるはずである*3

 

(幼児教育・保育の無償化に続き)大学など高等教育の無償化にも着手した。

 それは安倍政権よりも、民主党政権の話である。外務省HP「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)第13条2(b)及び(c)の規定に係る留保の撤回(国連への通告)について」(平成24年*49月)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/tuukoku_120911.html が根拠。つまり、当時も自由民主党の影響が避けられなかったとはいえ、民主党政権の誕生が大きい*5参議院HPにある、「社会権規約の中等・高等教育無償化条項に係る留保撤回
― 条約に付した留保を撤回する際の検討事項と課題 ― 」(中内康夫。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2013pdf/20130201044.pdf

)もご一読。

 

2.同12版17面「『女性活躍 重要さ発信』」

 これらの内容を間違いであるというつもりはない。しかし、選択的夫婦別姓に反対したのも安倍晋三である。産経新聞「安倍首相のらりくらり… 夫婦別姓めぐり民主・岡田代表がネチネチ追及」(2016年2月29日12時20分)

https://www.sankei.com/article/20160229-5ZSVQTWBHVNENNICPUNQWA3X74/ をご一読。いいことばかりではなく、問題点も書くべきである*6

 

3.同12版19面「安倍元首相 銃撃」

(1)堀川惠子「暴力には言論で徹底的に対峙」

(前略)少しずつ明らかになる容疑者の情報に釈然としない思いを抱く。動機は恐ろしく身勝手。政治的意図はなく、一方的に個人的な恨みを募らせての凶行のようだ。

 堀川さんはノンフィクション作家だそうだが、新聞を読まない人のようである。

 

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

でも取り上げた読売新聞オンラインの記事を読んで出直しね。現在の世界平和統一家族連合、以前の世界基督教統一神霊協会統一教会)に苦しめられている人がどれだけいるかを知っていれば、絶対に書けない。

 

(今回の安倍晋三銃殺)事件の底流を歴史に探るのならば、むしろ原敬暗殺の背景に時代の相は重なって見える。各地で米騒動が勃発、物価急騰で貧富の差が拡大、行政の救貧事業は機能せず。格差社会の不穏に内務大臣は「階級調和」を求める訓令まで発布する。いつの世も格差是正や階級対立の調整を担うべきは政治だが、政治家は民に届く言葉を持たず利権や汚職にまみれていた大正デモクラシー末期のテロからわずか数年後、日本は昭和初期の連続テロ、そして戦争の時代へと踏み入れていく。

 別に貧富の差や階級対立の問題ではない。宗教団体から被害を被ったという話。つまり、分析が大ハズレ。

 

(前略)言論の劣化が著しい。社会的弱者へのヘイトが量産され、分断を煽る言説が幅を利かせる。発信力を増すネット社会では実名なら到底発せられぬような乱暴な言葉が飛び交う。言論の府たる国会も論戦は低調だ(以下略)

 だからと言って安倍晋三・元内閣総理大臣が殺されていい理由になってないけど。現時点で被疑者がインターネットに書き込みをしたという情報もない。

 

(2)筒井清忠「健全な民主主義社会 再発防ぐ」

 暗殺事件は左右の急進運動に共通して存在しており、社会的に不遇の立場にある非エリートによってそれが引き起こされているということである。

 「安倍晋三 『統一教会』と 関わる?」でも書いたが、「左右の急進運動」の影は、今のところ見えない。被疑者が「不遇」くらいしか当たっていない。

 

 長期政権を強いた強烈な政治的リーダーの「強さ」はその点、(暗殺の。筆者注)志向の対象になりやすく、また同時に潜在的に強い嫉妬心を肥大化させていて、その破壊による自我の拡大が強く望まれたとみられるのである。詳細な動機は今後明らかになって来るであろうが、それがどのようなものであるにせよ、暗殺の対象は安倍晋三元首相のような大きな存在でなければならなかったものと思われる。

 

 その点で安倍元首相はやはり徹底した警護の対象になるべきだったのであり、最近あまりこうした事件が起きなかったために油断があったことは否定できないであろう。

 

 自我の拡大を望むこうした事件の犯罪はマスメディア志向が強いので、大きく報道されることを意図して報道しており、騒げば騒ぐほど犯人や犯人と同じ志向を持った人々を喜ばせ誘発する傾向が増えることに留意すべきである。

実際は違うようである。テレビ朝日「独自『火炎瓶もって…』供述で判明した旧統一教会"襲撃計画"安倍元総理を狙った理由」(2022年7月12日23時30分)

news.tv-asahi.co.jp

によると、

「『本当は統一教会のトップを狙っていましたが、韓国にいて、コロナウイルスのために日本に来ませんでした。安倍元総理を狙って撃てば死ぬかもしれないことはわかっていましたが、どうしても統一教会が許せず、そこにつながっている安倍元総理を散弾銃で撃ったのです』」

(中略)

「『元凶は韓総裁かと思っていました。だから韓国に行って殺ってやろうかとも思いましたが、出国などできないと思いやめました(以下略)』」*7

だって。元凶を殺すことが難しいからターゲットを変えたということであって、「大きな存在」*8だから安倍晋三をターゲットにしたわけではないのである。

 

 また、「騒げば騒ぐほど犯人や犯人と同じ志向を持った人々を喜ばせ誘発する傾向が増えることに留意すべきである」*9としても、問題ある団体を問題ある団体と報じてはいけないことにもなってしまい、不適当である。

 

 なお、「テロリストたちをマスメディアが礼賛した」*10ということも、今のところ、ない。

 

4.本当は2022年7月12日の新聞でやめておこうと思ったが、7月13日になっても修正を試みているようなので、以下、検討する。

 

(1)読売新聞オンライン(紙では、2022年7月13日統合版3面)「聴衆に近づきたい政治家・急な予定変更…警護にジレンマ[スキャナー]」

www.yomiuri.co.jp

において、安倍晋三が「大物」なのは認めるが、「政治主張に反感を持つ人」の話には今のところなっていない。

 

(2)2022年7月13日社説「安倍元首相銃撃 国際的な視点が欠けている」

www.yomiuri.co.jp

には、以下の記述がある。

(前後略)

 前回の参院選では、演説中の安倍氏にヤジを飛ばした男女が北海道警に排除された。これに対し、札幌地裁は警備が違法だったとして道に損害賠償を命じた。

 判決は、ヤジを飛ばした人の「表現の自由」を認めたが、演説を静かに聞きたい聴衆の権利はどうなるのか。判決が今回の安倍氏の警備に与えた影響は明確ではないが、規制の必要性を的確に判断することが重要だ

 もちろん、札幌地方裁判所の判決が現時点で確定しているわけではないので、北海道が損害賠償義務を負うかは未確定である。しかし、北海道放送『ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~』(2020年4月26日)

www.youtube.com

を見た限りでは、公職選挙法第225条(選挙の自由妨害罪)に該当する行為を発見できなかった。ヤジを飛ばすことを「威力」*11(第1号)とも「演説を妨害」(第2号)とも「威迫」*12ともするのは無理である。演説に賛成を表明するのも反対を表明するのも原則自由であり、問題のある行為を処罰しうるにすぎず、現時点では札幌のヤジは問題ないとせざるを得ない。従って、社説の問題意識は間違っている。

 

5.以上検討したが、事実を直視せず、都合のいいことばかり書く、読売新聞の体質があらわになった安倍晋三銃殺劇であった。

*1:蛇足だが、2022年7月12日19時30分からのNHK総合クローズアップ現代」にもそれを感じた。労働組合員がその労働組合が支持する政党に投票しないという話であったが、マスコミでもインターネットでも、与党が正しくて批判する野党が問題であるという情報を受けるのでそう判断してしまうのではないかという仮説を筆者は持った。番組でも、野党に求めるのは対決姿勢より是々非々であるという学者の調査を紹介していた。それが証拠だというつもりはないので、あくまで仮説。

*2:「批判と中傷 区別ができぬ 読売が」参照。

https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/entry/2022/07/09/183059

*3:現在手元にないが、筆者は『いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識 』(荻上チキ、PHP新書、2018)と、『大人のいじめ』(坂倉昇平、講談社現代新書、2021)からヒントを得た。

*4:2012年のこと。

*5:後述の「社会権規約の中等・高等教育無償化条項に係る留保撤回
― 条約に付した留保を撤回する際の検討事項と課題 ― 」によると、「2009 年9月に新政権が成立しており、本報告のいくつかの項目につき再検討を開始している」との注記が加えられていた」とある。「新政権」が鳩山由紀夫政権なのはいうまでもなく、その政権は、当時存在した民主党国民新党、現在も存在する社会民主党との連立政権である。

*6:この点については、烏賀陽弘道フェイクニュースの見分け方』(新潮新書、2017)が参考になる。

*7:カギカッコ内は、被疑者のコメント。

*8:筒井清忠「健全な民主主義社会 再発防ぐ」より。

*9:*8に同じ。

*10:*8に同じ。

*11:威力業務妨害罪(刑法第234条)の話になるが、「威力」とは、「犯人の威勢、人数、四囲の情勢から客観的に見て被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力」(最高裁昭和28年1月30日判決)のことである。

*12:参考までに、刑法第105条の2「威迫」とは、「言語、動作によって気勢を示し、不安・困惑の念を生じさせること」だそうである。西田典之『刑法各論』(弘文堂法律学講座双書、1999)p.439。

安倍晋三 「統一教会」と 関わる?

 今日の読売新聞1面にはびっくりさせられた。ウェブでは、読売新聞オンライン「山上容疑者は宗教団体に恨み、トップを『殺害しようと考えたが…難しかった』」(2022年7月10日14時27分)。

 

www.yomiuri.co.jp

 

 上記記事によると、

 安倍元首相が銃撃され死亡した事件で、(被疑者*1)が奈良県警の調べに、特定の宗教団体の名前を挙げて「母親が信者で、多額の寄付をして破産し、絶対成敗しないといけないと恨んでいた。安倍氏が団体とつながりがあると思って狙った」と供述していることが捜査関係者への取材でわかった。

(中略)
 団体によると、(被疑者)の母親は信者として在籍しているという。

 

 団体は海外が発祥で、インターネット上には、この団体の代表らが設立した民間活動団体(NGO)の集会で安倍氏のビデオメッセージが流れる動画が投稿されている。(被疑者)は「メッセージを送っている動画を見て、つながりがあると思った」と説明し、「(安倍氏の)政治信条に対する恨みではない」とも話しているという。

 

 ところで、昨日、はてなブックマークにアクセスすると、「全国霊感商法対策弁護士連絡会 公開抗議文 衆議院議員 安倍晋三 先生へ 2021年9月17日」と題した文章がブックマークされていた。オリジナルのリンクを示す。

 

www.stopreikan.com

 

 上記抗議文によると、

4.ところが、本年9月12日、韓国の統一教会施設から全世界に配信された統一教会のフロント組織である天宙平和連合(UPF)主催の「神統一韓国のためのTHINKTANK2022希望前進大会」と称するWEB集会において、安倍晋三内閣総理大臣の基調演説が発信される事態が生じました。(中略)/安倍先生が、日本国内で多くの市民に深刻な被害をもたらし、家庭崩壊、人生破壊を生じさせてきた統一教会の現教祖である韓鶴子総裁(文鮮明前教祖の未亡人)を始めとしてUPFつまり統一教会の幹部・関係者に対し、「敬意を表します」と述べたことが、今後日本社会に深刻な悪影響をもたらすことを是非ご認識いただきたいと存じます。

 

5. (前後略)あわせて、今回のUPFのWEB集会の基調演説のビデオメッセージを提供された経緯について明確なご説明をいただきますようお願いします。

とのこと。

 

 抗議文の「統一教会」は「世界平和統一家庭連合」のことであるが、

原理運動とは - コトバンク

デジタル大辞泉の説明によると、「世界基督教統一神霊教会(統一教会)」「は現在、名称を『世界平和統一家庭連合』と変更している」とのこと。読売新聞の記事にある「団体は海外が発祥」に一致している。「インターネット上には、この団体の代表らが設立した民間活動団体(NGO)の集会で安倍氏のビデオメッセージが流れる動画が投稿されている」は微妙だが、例えばYouTubeに「[World Summit 2022]韓半島平和サミット_安倍晋三第98代日本受賞基調演説」(THINK TANK 2022.2022年3月3日)というのがあり、安倍晋三が基調演説の原稿を送り、代読されているのがわかるだろう。

 

www.youtube.com

(被疑者)がどの動画を見たかはわからないが、安倍晋三が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)となんらかのつながりがあると見るのは間違っていない。もちろん、だからと言って、殺していいことにはならないし、こういう理由で殺された安倍晋三がかわいそうである。

 

 と、ここまで書いたが、当然のごとく、以下のツイートのような警句も大事である。雨雲(@amagumo_metal )さんの、2022年7月9日10時39分のツイート。

 

 

 

 また、本エントリーで言及した団体に対する憎悪犯罪もしてはいけないことも付け加える。しかし、筆者の知る限り、本エントリーで挙げた団体が、(被疑者)の供述に合致している。違うというのであれば、コメント欄に書いてください。

*1:すでに名前は出ているが、ここでは、被疑者の名前が必要ではないので、「(被疑者)」と表記する。以下も同じ。